イギリスで年間260億ポンド(約5兆3000億円)もの大増税が行われるようだ。このイギリスの流れを理解すると今後日本で何が起きるかがよく分かる。このままでは高市総理は日本版マーガレット・サッチャーではなく、リズ・トラスかレイチェル・リーヴスと記憶されることになるだろう。
イギリスはブレグジットの結果として大規模なインフレが起きている。ボリス・ジョンソン政権はこれを払拭しようとしたが失敗。後継者として保守党が選んだのは庶民に人気のリズ・トラス首相だった。しかし成長戦略なしのバラマキ路線は金融市場に攻撃され「トラスショック」を引き起こしている。結果的に首相選挙のライバルだったリシ・スナク氏が首相になったが経済を回復させることはできなかった。
リシ・スナク氏の元で行われた総選挙で保守党は大敗。しかし政権を取った労働党政権も経済を回復させることができなかった。そればかりかこの程大増税に追い込まれている。これは日本の民主党政権が「行政改革」を主張しながら結果的に消費税増税に追い込まれて政権を失ったのに似ている。現在「財務大臣を解任しろ!」との声が高まっている。その財務大臣の名前がレイチェル・リーヴスだ。
イギリスのレイチェル・リーヴス財務相は26日、秋季予算案を発表した。年間260億ポンド(約5兆3000億円)の増税が盛り込まれ、野党は約束を破ったとして強く批判。リーヴス氏の辞任を求めている。
英秋季予算案で260億ポンドの増税、野党は「約束破った」と財務相を批判(BBC)
このことはインフレが一度起きると「弥縫策的な」インフレ対応(日本では物価高対策と言われる)は持続可能でないことを示している。これが現在の高市政権の政策によく似ている。高市政権は眼の前にあるインフレに対応するために巨額の補正予算を詰んでいる。もともと財政規律も重んじるという触れ込みだったが、高市総理の経済ブレーンに押される形で「規模ありき」に変質していったそうだ。しかし、これは単なる後追いにしかならない。
一応は希望もある。そもそもイギリス経済は金融・サービスに過度に依存する構造になっている。イギリス経済が立ち直るためには生産性の向上が必要だが金融・サービスには生産性向上の余地はない。
一方、日本は変化を嫌い現状をできるだけ長引かせたいと考える傾向がある。このため生産性を向上させる余地がかなり残っていると言えるだろう。
この状況をChatGPTにフィードしたところ、次のような出力になった。
英国では、ブレグジットを起点としたインフレが有権者の不満の種となっていました。本来なら構造改革によって生産性を向上させるべきですが、金融依存型経済のため短期的には限界があります。その結果、分配に依存した政策は効果が限定的で、最終的に大規模な増税に追い込まれました。一方で日本は金融・サービス依存が英国ほど強くなく、長年先送りしてきた改革を進めれば、同様の悪循環に陥るリスクは比較的低いと評価できます。ただし人口減少や高齢化など、別の構造的制約もある点には注意が必要です。
注目すべきなのは日本は生産性向上の余地はあるが少子高齢化という別の側面(これは前段の議論にはなくChatGPTが組み入れたもの)があるという点。正直「痛いところを突かれたな」という印象。
いずれにせよ高市内閣の一番の不安材料は安倍総理時代の「あなた達は変わらなくてもいいんです、国に任せてさえくれれば自動的に暮らしは良くなりますよ」という暗黙のメッセージングだろう。生産性を向上させるためには一人ひとりが明確な意思決定を行うべきだが、高市総理はこれを怠っているように思える。
なお、労働力を急激に回復させるためには外国人を入れるのが最も手っ取り早い。実際に安倍政権下で政策が変更され外国人への置き換えが進んでいる。
「最近やたらと外国人が増えたなあ」という印象を持つの当たり前だ。1年間で35万人も増えている。
総務省は6日、住民基本台帳に基づく今年1月1日時点の国内の人口を発表した。日本人は1億2065万3227人で、前年から90万8574人(0・75%)減り、調査を開始した1968年以降で減少数、減少率ともに最大となった。国内に住む外国人は367万7463人で、調査を開始した2013年以降で最も多くなった。前年から35万4089人(10・65%)増え、増加数でも最多を記録した。
日本人が過去最大90万人減、1億2065万人…日本に住む外国人367万人で最多更新(読売新聞)
言うまでもないことだがこの急激な変化が参政党人気の追い風となっている。つまり不安定化はもう始まっているのだ。
