高市総理と類似点が多いとされるイタリアのジョルジャ・メローニ首相が、司法制度改革をめぐる国民投票で敗北したとBBCなどが伝えている。「国民のバランス感覚」という意味では、日本の憲法改正議論にも参考になる点が多い。
トランプ大統領が作り出した混乱が各国の「政治改革議論」に大きな影響を与えつつある。
今回の改革は、裁判官と検察官の分離を柱とするものだった。しかし内容が複雑で国民の理解が十分に広がらず、結果としてメローニ政権への信任投票の様相を帯びた。否決という結果を受け、「メローニ首相の影響力に陰りが出た」と分析されている。また、ドナルド・トランプの評判低下も、間接的に影響した可能性が指摘されている。
なぜ司法制度改革への理解が広がらなかったのかは断定できない。ただし一般論として、政治家が検察制度に手を加えようとする場合、それが自己保身ではないかと疑われやすい構造がある。
どの国にも、司法・立法・行政の間には独特の緊張関係が存在する。
韓国では民主化の過程で検察に強い権限が与えられ、政治の不正を正す役割への期待が高い。一方で、尹錫悦も不正疑惑に直面し、政権と司法の対立は極限まで先鋭化した。結果として尹大統領は極めて強硬な対応に踏み切り、これが弾劾へと発展した。現在は内乱罪に問われ「死刑か無期懲役か」という極めて重い刑罰が想定される状況にある。
イスラエルでは成文憲法が存在しないため、強い司法権がその代替機能を担ってきた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は司法改革を進めようとしているが、強い反発に直面している。また、現在の戦争状態が政権運営に大きな影響を与えているのは間違いない。
断定はできないものの、司法改革が頓挫した後の政治状況を見ると、「混乱が続く状態」そのものが政権の延命に資しているようにも見える。結果として、この構造がガザの混乱や、アメリカとイランをめぐる緊張の長期化と無関係とは言い切れない。
イタリアの司法制度は、ファシズム時代の反省に基づいて設計されている。ベニート・ムッソリーニは検察権力を政治的に利用したとされており、その反省から強い権力分立が意識されてきた。今回の改革についても、政治の影響力が強まるのではないかという懸念が背景にあったと考えられる。
日本の検察は行政の管轄下にあり、法務大臣が指揮権を持つ制度となっている。一方で、自民党は2009年の下野以降、憲法改正への志向を強めてきた。高市早苗の主張にも一貫した権力観が見られるとの指摘がある。
少子高齢化や地方の衰退が進む中、日本では「憲法改正によって状況が好転するのではないか」という期待も見られる。しかし安全保障環境の変化により、憲法9条の役割についての評価も揺らいでいる。
とりわけ今回の情勢をめぐっては、これまで改憲を主張してきた側からさえも、「現実には憲法9条があるからこそ、関与を回避できているのではないか」という見方が出始めている。つまり、憲法9条は単なる制約ではなく、「関与しない理由」として機能している側面が改めて意識されつつある。
結局のところ、国民は必ずしも一貫した原理で判断しているわけではなく、その時々の状況に応じて評価を変えているとも言える。ドナルド・トランプによって国際秩序が揺さぶられる中、日本の憲法をめぐる議論も変化の局面に入っているのかもしれない。イタリアの国民投票の結果は、その一端を示しているように感じられる。

コメントを残す