9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


高市早苗総理の台湾問題処理は私たちの何を不安にさせるのか

11〜16分

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高市早苗総理の軽率で戦略のない台湾有事発言が引き続き物議を醸している。これについて論理的な説明を試みたのだがほとんど興味を持つ人がいなかった。

Quoraの質問を見る限り人々はこれまで自分たちが慣れ親しんできた物語に回帰したがっている。原因の一つは「責任回避」的な国民感情にあり、その背景には社会合意の曖昧さがある。今回も例によってChatGPTで論点を整理した。

しかしここから「高市総理発言の何が我々を不安にさせているのか」がよく分かる。つまり我々の社会はもはや後戻りができない国際情勢の変化にさらされている。

日曜日のテレビはまるで別の国のニュースを見ているようだった。フジテレビはアメリカの存在を前提にして台湾有事問題を語っているがTBSは高市総理の戦略を欠く発言と「前のめりな姿勢」を懸念している。

まず中国側の反応を整理しておきたい。中国は敵国条項を持ち出し、日本が台湾に武力侵攻するならば国連安保理の承認なしに「対処する」と言っている。外務省はこれに対して敵国条項はすでに死文化しており中国もそれに賛成しているではないかと釈明するのが精一杯だった。

中国の王毅外相はタジキスタンで「日本の軍国主義の復活を許さない」と改めて表明した。日本は台湾問題という内政問題に干渉しレッドラインを越えたと言っている。REUTERSは「王氏は「関係各国と協力し、『一つの中国』の原則を巡る国際的な合意を堅持し、第2次世界大戦の勝利の成果を共同で守っていく」と述べた。」という一文を抜き出している。

中国本土は国共内戦によって武力的に統一された国だ。しかし中国の歴史は勝者が一方的に作る。国民党が抗日戦線の担い手であった事実は抹消されている。つまり共産党の存在意義は中国人民を解放し偉大な清帝国の正当な継承者であるという共産党の宣伝によって正当化されている。

つまり「猛女高市」は彼らの統治を正当化するための装置であるということになる。アメリカもロシアも中国でも何らかの理由で「自分たちの偉大な過去」に回帰したいという願望が高まっている。これはおそらく未来を提示できなかったものが過去に拠り所を見出すという意味合いを持っているのであろう。

さらにアメリカ合衆国もまたこの回帰物語に取り込まれ同盟の維持と戦後世界の秩序維持に興味を持たなくなっている。フジテレビでは全く語られていなかったが、TBSでは「バイデン大統領からトランプ大統領に変わったという状況の変化」が理解されていないとかろうじて触れられていた。

しかしこうした「説明」は日本社会ではほとんど響かないようだ。依然、人々は自分たちの物語に耽溺したがっている。では、なぜ日本人は中核的信念を変えようとしないのか。

これが今回のChatGPTログの内容だ。

アメリカ社会はあらかじめ責任の所在を明らかにするが日本社会の合意は曖昧だ。社会的合意が曖昧にまとまってしまうため一旦作られた合意形成を変えるコストが極めて高いのではないかというのがChatGPTの類推だった。人々は合意を曖昧に理解し自分たちに都合よく解釈しているが、それをけっして口外しない。だから日本人はめったに宗教と政治の話は外では行わない。

確かに日本の安全保障は敗戦とアメリカ合衆国の路線変更という2つの事実によって作られており1つの理論で説明することができない。さらに冷戦構造が崩壊したあとは巻き込まれ不安だけでなく見捨てられ不安を抱くようになりできるだけ少ないコストを追加で差し出すことで破綻しかけている契約を「延長」できるかもしれないというかりそめの希望を抱くようになった。

そもそもこの問題はどのようにして始まったのか。

高市総理は安倍総理の正当な後継者であることを示そうと台湾有事ついて従来の見解を踏み越えている。これは支持者たちに「あなた達は変わらなくてもいい」と訴える内容だった。また日本国内に対しても「これまでの政府見解と何ら変わるものではない」と説明している。

そもそも岡田克也氏も立憲民主党の変節をカバーするための論拠を求めていた可能性が高い。立憲民主党は反アベ運動を背景にして作られた政党だが内部に様々なイデオロギーを抱えている。

限定的集団自衛権を認めても結果的に「何も変わらなかった」ことに安心した日本人は変化を変わらないためのコストとして受け入れてしまった。もし立憲民主党の言い分に従うと「何かが変わってしまう」かもしれない。特にトランプ大統領に見捨てられることは避けられなければならない。一方で党内には「変わらず護憲運動を推進したい」小西洋之氏らの原理主義的護憲派を抱える。だから枝野幸男氏は路線を変更し岡田克也氏がそれを国会で既成事実化しようとした。

日本の平和という所与の現実があるがそれは経緯の積み重ねによって作られている。それはいわば巨大なジェンガのようなものだ。その何かを変えてしまうとジェンガが崩壊しかねない。これがChatGPTの指摘する「変化のコスト」なのだと考えることはできる。

我々はこのジェンガに触れないために過去の経緯を「自分の都合のいいように」個人的に解釈し社会的な軋轢を避けてきた。しかしながら高市総理はこれを「まるでパンドラの壺の蓋を開ける」して表出させてしまった。我々の社会はこうして様々な議論が飛び交う状態になっている。

パンドラの壺の中には最後に希望だけが残ったそうだ。こうした不毛な議論の末に「元通りの平和で安寧な状態」が戻ってくるだろうと人々は期待している。

しかしながら我々は日本社会がもはや国家安全保障について1つの見解を持っていないということを知ってしまった。ゼウスはパンドラにわざと壺を開けさせて人間を罰したという説があるそうだが、その意味では高市パンドラの再来もまた一つの運命の警告だったのかもしれない。

GEMINIはニーチェの説を取り上げて次のように書いている。

希望は悪の最も悪しきものであると主張しました。なぜなら、希望があるからこそ人間は苦痛から解放されるのではなく、苦痛を長引かせ、自己を永遠に苛むことになる。

高市総理のとりなしによって中国と日本の関係がもとに戻るという希望もまたその類なのかもしれない。だからこそ我々はいいようのない不安にさらされているのである。

“高市早苗総理の台湾問題処理は私たちの何を不安にさせるのか” への3件のフィードバック

  1. うさこの父のアバター
    うさこの父

    高市首相の台湾発言については「興味を持って推移を見守っている」程度の者です。記事中の社会的合意についての日本と他国との相違についてのAIの類推について、そのまま記載しても意味無いのでは?と思いました。もしAIの類推通りならば日本の現状を変える努力が必要という趣旨ですよね。私見ですが、それは時間のかかる教育改革しかないと思います。具体的には、小学校時点から知識量メインの授業を自分で考えることメインにする事です。欧米のように。
    記事の趣旨から逸れていますが気になったのでコメントしました。

    1. 面白いご感想をありがとうございました。

      AIは何をしろと言っているわけではなく意思決定の援助をしているだけなんですが、日本人は集団の圧力を受けやすく権威に弱い傾向があるため「圧力を加えている」と勘違いされるのかもしれないですね。ただAIに「その意思決定に従いたくありません」と投入してもそれはインプットを与えているだけで、AIが傷ついたり怒ったりはしないんです。

  2. […] さて冒頭に長い前置きを置いた理由をもう一つ挙げたい。コメント欄で興味深いコメントを貰った。AIの要約を「AIが日本人が変化を受け入れるように強制している」と懸念を表明している。 […]