高市早苗総理大臣が代表質問に答えた。その直後から面白いように株価が下がりはじめ最終的に914円下げたところで取引が終わった。来年の夏まで成長戦略が出ないとことがわかっており、なおかつ答弁でも消極的な姿勢が目立ったからだろう。
正直「え、来年の夏まで何も出てこないの?」という驚きがある。
アメリカ合衆国では製造業の不振が伝えられている。
3日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した10月の製造業景況感指数は48.7とダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(49.3)に反し、前月から0.4ポイント低下した。個別項目では、生産や在庫が悪化した。市場では「依然として製造業の苦戦が続いている」(INGのジェームズ・ナイトリー氏)との受け止めがあった。
米国株、ダウ反落し226ドル安 最高値圏で持ち高調整 ナスダックは続伸(日経新聞)
このため日経平均はやや値上がりし最高値をつけていた。資産を日本に逃がしたいと考える人がいたのかもしれない。
ところが高市総理肝いりの「成長戦略会議」が終わった頃から様子がおかしくなり、代表質問が始まると面白いように下落が始まった。
以下、共同通信の見出しを並べた。
原因の一つが片山さつき財務大臣の口先介入だった。
しかしながらやはり要素として大きいのは「成長戦略の不在」だろう。なんと2026年の夏まで成長戦略が出てこない。これまで岸田・石破両総理大臣のもとで作られていた「新しい資本主義」をすべてリセットする。代表質問の答弁でこれ以上の株価押上げ材料もないとみなされ「手仕舞い」をする投資家が増えたのだろうと考えられる。
高市総理は政府が集中的に特定分野に投資をするから経済成長が促され税率を変えなくても国家財政は賄えると主張してきた。
しかし先に分析した通りインフレが起きれば(たとえそれがコストプッシュ型のインフレであっても)家計から政府への所得移転が起きる。つまり賃金上昇が伴わなくても国民困窮化を通じて政府は当初の目的を達成できてしまう。財務省はこのあたりのカラクリをよくわかっているのだろうと感心させられる。
そもそも高市政権の積極財政はギャンブル要素が強い。AI、半導体、量子などは「デファクトスタンダードを作った人たち」が総取りできる分野だ。日本はすでにこれらの分野に出遅れているため何もやらないわけにはいかないが、巨額の投資をしても回収できない可能性が高い。負けを抑えるためには機動的な投資戦略と機動的な撤収が必要である。つまり「勝ちを狙う」よりも「負けを最低限にする」投資が求められている。
つまりそもそも政府が言っている成長戦略は成長戦略ではない可能性が強いのだが「絶対に中る宝くじを見極めるために長い時間をかけて検討します」というようなことを言っている。
なぜ誰も「いやいやいや」と言わないのだろう。
ただし、立憲民主党も成長戦略が作れないため野田佳彦代表の質問は政治とカネ問題や当面の物価高対策に終始していた。野党の勉強不足もまた共犯だろう。
野田代表も指摘していたように日本の需給ギャップはすでに埋まっているため積極投資は単に供給制約によるインフレを招く可能性が高い。
ただしインフレが起きると資産家は実物資産を購入する必要が出てくるので株価や不動産などは高騰するかもしれない。また資産家はドルを買って海外に資産を逃避させることもできる。今回下がらなかった株は政策の影響を受けにくいということになるのだから、今回の下落は投資家にとっては良い面もあるといえる。
市場では「相場のムードが悪化したというよりは、ここのところの急ピッチな上昇の反動で利益確定売りが先行したようだ」(岩井コスモ証券の投資調査部部長・有沢正一氏)との声が聞かれた。相場を主導してきたAI(人工知能)・半導体関連銘柄の物色は続くとみられる一方、「最近はAIインフラ関連株も買われ、物色の裾野が広がってきている」(有沢氏)という。
日経平均は大幅反落し5万2000円割れ、利益確定の売り優勢 好決算には買い(REUTERS)
問題はこうした恩恵に預かれそうもない人たちが高市政権を支援しているということだ。むしろ自分たちを困窮させる政治家を喜んで支援している。ただこれは「自己責任」なのかもしれない。
