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高市早苗総理がトランプ訪日を無難に通過

8〜12分

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無理な要求を突きつけてくるのではないかとされていたトランプ大統領の訪日が無難に終わった。安倍総理の後継であることを全面に押し出し不規則発言が出がちな記者会見を行わなかったことが効果を発揮したようだ。高市総理はトランプ大統領を褒めて褒めて褒めまくり日本に対する要求を突きつける隙を与えなかった。ヘリコプターでもつきっきりだったようだ。極めて有能なホストだったという意味では小泉進次郎氏や玉木雄一郎氏ではなく高市早苗氏が総理大臣に選ばれてよかったと言えるだろう。

日本は本質的にアメリカの従属国なのでこれくらいの待遇をしなければ国益を守れないということなのだろう。高市氏は有能なホストぶりを発揮しトランプ大統領訪日を無難に乗り切った。

一方で懸念もあった。

高市総理大臣は日米同盟が盤石であると強調「強い日本が戻った」とのメッセージを発信した。強い日本が戻った(Japan is Back)というメッセージを発出した。

若年層を中心に広がる「勝ち負けにこだわる人たち」を満足させる効果があったと考えて良い。日本は国際的には中国に負けつつあり少子高齢化の影響で若年層はアイデンティティの維持に苦しんでいる。おそらく高市総理の「力強い」メッセージは心理的補償を求める若年層に支持されるだろうが、強さにこだわる政治は全体利得を損なう対決型の政治状況を作り出す。

ただこの「対決型政治」の問題を説明するのはなかなか難しい。日本ではまだ人質政治の恐ろしさが広く知られていないからだ。

さらにマスメディアはトランプ大統領が強い日米同盟を保証し企業の投資案件の充実ぶりに満足したというトーンでニュースを構成する必要があり、実はジョージ・ワシントンの乗組員の11月の給料の資金繰りがついておらず、明日中国が日本を攻撃しても軍事予算が承認される見込みはないということは伝えていない。これらを伝えるとニュース構成が複雑になり、視聴者が熱望している「安心」というニーズを満たせないと配慮したのだろう。

予算関連のニュースは極めて重要だ。オバマ政権下でも連邦政府閉鎖をきっかけに集団的自衛権の行使容認に踏み切った事例がある。つまりトランプ大統領は議会を経ずに軍事費を調達する必要がある。しかし高市政権は維新を合わせても少数与党政権なので予算の捻出には苦労するはずである。

ただし、アメリカ連邦政府の予算問題を理解するためにはなぜアメリカ合衆国の政治が「軍事を人質に取るようになったのか」を理解する必要がある。とにかく序列や正しさにこだわる新しい有権者にこれを理解させるのはほぼ不可能だろう。

いずれにせよ敵味方思考のトランプ大統領は人安倍総理は自分の味方側の人物であり高市総理はその後継者だと認識したようである。高市総理はノーベル平和賞の推薦状を準備し、安倍総理のゴルフクラブを贈呈することで「自分はトランプ大統領の味方である」と強調したようだ。

また企業幹部との夕食会でトヨタは100億円の投資をすると言う情報だけが耳に残ったようだ。トランプ大統領が選挙で勝つためには共和党地域に対する投資を呼び込むことが重要である。

本質的にカードを持たないアメリカ合衆国は世界各国からの資金を「トランプチーム」に集めるために問題を作り出している。今回日本に対しては投資の見返りは関税優遇であると説明したそうだ。もともとなかった問題を作り出して「そこに勝ちをつける」というゲームになっている。中国はこのトランプ方式に学び自分たちも問題を作り出したうえで緊張緩和を演出し妥協を引き出す作戦で米中会談に備えている。

日米が今年合意した貿易枠組みでは、トランプ氏は、日本による5500億ドル(約84兆円)の対米投資を条件に、日本製品に対する関税を引き下げ、上限も設定した。ラトニック氏は、28日に発表した分だけでも約4900億ドルの投資に相当するとしている。

トランプ氏、日米企業幹部と夕食会-アップルCEOやソフトバンクG孫氏(Bloomberg)