JNNが「高市内閣の支持率82.0% 政権発足直後の支持率としては2001年以降2番目に高い JNN世論調査」という記事を出している。驚くべきことに安倍政権を抜いて小泉政権以来の高い支持立を獲得した。この勢いで長期政権も期待できるのではないかと考えたくなるのだが、実は第3位は鳩山政権である。
小泉内閣は、党内談合で生まれたために不人気だった森内閣の後継だった。古い自民党をぶっ潰すと宣言したうえで郵政問題という対立軸を作った。また鳩山政権は迷走した第一次安倍政権・福田政権・麻生政権の後継。特にリーマン・ショックを克服できなかった麻生政権の支持率は最初から51.1%(小泉以降で歴代ワースト)でありその後も支持率が回復することはなかった。
つまり「選挙なき政権交代が起きても空気が変わらない」という苛立ちのあとで変化を演出すると瞬間的に支持率が上がるということがわかる。ただし小泉政権のように対立構造を維持できなければそのまま鳩山政権のように失速し悲惨な未来が待っているということになる。つまり当初の高い支持率がそのままその後の政権の安定を保証するわけではない。
最も大きなドライバーになったのはトランプ大統領のと親密ぶりだったようだ。一部では終始トランプ大統領の腕にぶら下がるような姿勢が「みっともない」「媚びている」と悪い評価だったが、そもそも日本はアメリカの安全保障にぶら下がっているみっともない国である。単にそれが可視化されただけということなのだろう。巻き込まれ不安、見捨てられ不安、ディール不安という三重の不安を抱える日本人は、アメリカが不安定になればなるほどなんとしてでもアメリカにしがみついていたいという根強い不安を抱えている。
高市総理は先週、就任後初めて、アメリカのトランプ大統領らと首脳会談を行いましたが、今回の一連の外交について83%の人が「評価する」と答えています。
高市内閣の支持率82.0% 政権発足直後の支持率としては2001年以降2番目に高い JNN世論調査(TBS News Dig)
防衛費の増加について心配している人はそれほど多くない。所信表明演説には次のような一節がある。高市総理は経済成長が起きるので増税をしなくても大丈夫だと力強く約束している。
この内閣では、「経済あっての財政」の考え方を基本とします。「強い経済」を構築するため、「責任ある積極財政」の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。この好循環を実現することによって、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変えていきます。
第219回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説(令和7年10月24日閣議決定)
今後は政府がなんとかしてくれるから国民の負担は増えないと期待する人が増えているのだろう。合理的かどうかではなく信じたいから指示しているのかもしれない。
高市総理は所信表明演説で、「責任ある積極財政の考え方のもと、戦略的に財政出動を行う」と表明しました。高市政権になって景気が良くなると思うか聞いたところ、▼「良くなると思う」は58%、▼「良くならないと思う」は23%でした。
高市内閣の支持率82.0% 政権発足直後の支持率としては2001年以降2番目に高い JNN世論調査(TBS News Dig)
理論的に見ると日本経済は需給ギャップが埋められておりこれ以上の積極財政は限られた産業の需要を増やす。また行き過ぎた積極財政のもとで円安が進めば輸入品を中心にさらにインフレが進むことになるだろう。しかしそんなことを知っているのは限られた政治と経済の専門家だけ。一般国民は政治家の精神論で乗り切れると信じている。
小泉政権は国民の視線を経済から「既得権打破」にシフトしたことで長期政権化に成功したのだが、高市政権は外に敵を作るアジェンダセッティングをしていない。つまり増税議論が出た瞬間に当初の期待は逆回転することが予想できる。
また高市政権に対する高い期待は自民党の中に緩みを生じさせる危険性がある。小林鷹之政調会長は「自民党全体の支持率が上がっているわけではない」と党内の引き締めを図っている。
最後に政治とカネの問題も気がかりである。維新の藤田共同代表は「法的に問題はないが今後はやらない」と弁明する方針だそうだ。つまり問題の責任は取らないと言っている。高市総理は結果的に政治とカネの問題を反省しない旧安倍派に加えて維新の面倒まで見なければならない。有権者は増税問題が出てこない限りは政治とカネの問題に関心を持たないだろうが、経済不安に火が付けば高市政権はまっ黒焦げになる。
