Yahooニュースのアクセスランキングでデイリーの記事が1位になっていた。負担増を警戒するニュースに対する鮮度の高さがわかる。高市政権のメッセージングから次に負担増議論が出ることは明らかだがYahooニュースで情報を取っている人たちには理解ができないんだろうなと感じた。実は防衛増税の議論も始まっている。
今回の記事は当ブログを読んでいる人は当然Yahooニュースとは情報リテラシーが違うという前提のもとに書かれている。
感情的な政権批判はなくかといって「日本はこのままで絶対安全だ」とも保証しない。言い方は悪いがかなり理屈っぽい珍しいタイプの人が多いのではないかと推測している。仮に「内容が全く理解できなかった」という方がいらっしゃったら潔く自首していただきたい。
さてデイリーが
という記事を出している。
一般の人たちはこれほどまでに負担増=イニシャルコスト支払いを警戒しているのかと驚いた。どう考えても負担増の話が来ることは予想できるからだ。
デイリーは【高市自民】で政権に批判的な記事を書いているので反高市で行くことに決めたようだ。問題はこれがアクセスランキングで1位になったという点にある。コメント欄も読んでみたが「まだまだ増税路線と決まったわけではない」というコメントも多かった。内心かなり動揺しているようだ。
この反応は長引くデフレで人々が「持ち出し」に強い警戒感をもっていることを示唆する。高市=増税と結びつけたくない人も多いようだ。
だから「信じたくない」という気持ちが生まれ「まだまだ様子見だ」と考えるのだろう。
おそらくYahooニュースで情報を取っている人は新聞など読まないだろうし、株価の上がり下がり以外の経済には興味がないだろう。別のエントリーでまとめるが昨日商社株が4%ほど値上がりしている。一方で30年国債の発行がを前に長期金利(10年国債のレート)が上昇している。
また防衛増税の話も始まっている。1%くらいならバレないだろうということになっているようだ。
自民党は防衛力強化の財源として想定してきた所得税の増税について、2027年1月に実施する方向で検討に入った。複数の関係者が4日、明らかにした。現行の所得税に1%を付加し、2千億円強を確保する。復興特別所得税を1%引き下げることで国民の理解は得られると判断したもようだ。
防衛財源、27年所得増税案 自民1%付加検討、実現は不透明(共同ニュース)
すでに当ブログの読者にはご理解いただいている通り高市政権は成長のためのイニシャルコスト支払いを求める内閣だとの仮定を置いている。この予想から離れるとそれは批判の対象になるが、けっして高市総理を責めているわけではない。必要なことをやっていませんよねと指摘しているだけである。
今のところ眼の前で起きている一つひとつの事例を見ると、この仮定はなかなか成り立ちにくい。高市政権が明確に改革を意識していることは確かだが必要な作業は行われておらず自民党の中にも周知されていない。
その一つの例が「はえぬき」の鈴木大臣のおこめ券利益誘導問題だった。明らかに鈴木大臣は農政の失敗を認めないフリーライダーであってコメ既得権=レントシーカーの温存を図っている。
今回のYahooニュースを見ると「Yahooニュースを見るような人たち」はおそらく「眼の前に負担増の話が来た」時点で不安を感じ始めて「高市総理の支持をやめる」のだろうということがわかる。眼の前の現実を突きつけられるまで事前予想が一切できない人たちなのである。
我々(当ブログの読者)は「当然そんなことは前から予測できていたよね」と思うわけだが、一般の人達はそうではないということだ。
そう考えると「政治にカネを払う人たち」は政治に貢献しようとしているのではなく「損を最小限にして」「できればレントシーカー側に回りたい」という人たちが多いのではないかという疑いが(理論的に)出てくる。
2021年の東京新聞に「自民党に寄付をしている産業ほど租税特別措置を多く受けている」という記事が出ていた。
- 仮に企業が「この政党のイデオロギーが良いと思うから」政党を応援するならば自分たちの方から献金を宣伝するはずだが
- こっそり見返りを求めたい場合には逆に隠したくなる
ということだ。
片山さつき財務大臣はこの租税特別措置の「大胆な」見直しを提言しており国民から広くご意見を募集してもいいと言っている。つまりこのニュースは一見すると高市政権が改革型の内閣であり、フリーライダーやレントシーカーを許さない姿勢を明確に示したと肯定的に評価できる。
しかしながら共同通信は「片山さつき財務大臣は6543万円のパーティー券収入を得ていたがその購入者を一切公開していない」と書いている。ただ片山さんの公開比率が飛び抜けて低いわけではなく全体の透明度も5.3%だったそうである。
つまり片山さつき財務大臣を支えるような人たちはレントシーカーかレントシーカー志願者ということになる。そんな片山さんが本当に既得権排除なんかできるのか?という疑いが出てくるわけだ。
案の定、維新とのプロジェクトである日本版DOGEの勇ましい掛け声とは裏腹に自民党の税制調査会では延長の要請があった30のうち「ほぼ全て」が認められたそうだ。
自民党の税制調査会は2日、企業への特例的な減税「租税特別措置(租特)」について、延長の要望があった約30項目のほぼ全てを認める方針を決めた。高市早苗政権は租特の見直しを掲げ、専門部局を立ち上げたばかり。早くも本気度が問われる展開となっている。
租特見直し、問われる本気度 維新からため息「減税ばかりするのか」(朝日新聞)
つまり自民党の「改革」は単に連立相手の維新をなだめておくための手段であってその本気度は極めて低い可能性が極めて高い。朝日新聞は「維新からため息が漏れた」としているが、維新に連立離脱という選択肢はない。離脱した瞬間に彼らのポジションが崩壊してしまう。
片山さんとしては「賢い」選択だ。レントシーカー排除を目指す維新に協力するふりをしてインサイダーとなり内部からあの手この手で改革を妨害すればいい。
まとめると「自民党の改革はポーズ」だが国民はそれを気にしない。一般国民が騒ぎ出すのは「自分たちに対する負担増」が目の前に突きつけられた時ということになる。
ただ、この図式も民主党政権末期を記憶している人たちにはおなじみの光景だろう。行政仕訳が失敗し財源が捻出できなくなった野田政権は消費税増税を容認し国民から見放された。
このループから抜け出すためには高市総理が国民に強力を求める力強いメッセージを打ち出すべきだが、今のところそのような兆候は見られない。
持ち出しを嫌う国民が多いと仮定すれば「メッセージの発出は自殺行為」ということになる。結局同じことが繰り返されるだけなのかもしれない。

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