先日は「もってゆきようによっては核兵器保有・受け入れ」議論を政治的なアジェンダに乗せることができるようになるのでは?と書いたが、案の定そうならなかった。理由は2つある。まず、情報発信源としてほぼ名指しされている人があまりにも筋が悪かった。さらに総理大臣サイドに「ポップアップイベントに対して組織で即応体制を取る」という発想がなかった。
そもそも総理大臣サイドにリーダーシップを取るつもりはないので議論は漂流し「落ち着くところに落ち着く」だろう。結果的に対外的変化に何もしないことを選ぶ可能性が高いのではないか。
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経緯
すでにQuoraでまとめた経緯をそのまま転載する。なお誰が発言したかはみんなわかっておりそれを前提にした推測も出ている。こうなると「みんなわかっているのに本人だけ名乗り出ることができない」という社会的罰ゲームだ。
- 首相官邸筋が「核兵器保有」について個人的見解を述べる。議論はオフレコ。
- 朝日新聞が伝える
- 共同通信が「首相官邸筋」と伝えたことで防衛大臣説が消える。と同時にオフレコだったがあえて伝えたとしてことの重大性が補強される。
- 時事通信やNHKが伝えたことで「高市総理大臣側が情報コントロールを試みた」可能性やそもそもアドバルーンだった可能性が浮かぶ。
- この時点で「逆に議論の俎上に乗せることができるのでは?」という可能性が浮かぶ。
- 護憲派・人権派は「このような観測気球はいかがなものか」と懸念を表明。
- 朝日新聞が「個人的な見解だった」と報道し情報コントロール説やアドバルーン説が消える。つまりこの時点で「個人の見解であり政府の公式見解は何ら変わりはない」と確定させてしまったことになる。高市総理は核兵器受け入れについては状況を変えたかったはずだが「戦略的」に軌道修正した形跡がない。
- 記者たちが木原官房長官に質問したことで首相官邸筋が官房長官であった可能性が消える。
- この席で官房長官は「非核三原則を遵守する」と記者たちに言質を取られてしまう。後に「あらゆる可能性を議論すべきでは?」という押し返しも起きるのだが、少なくとも政府見解は固定されてしまった。危機対応能力のなさが浮き彫りになった。この時点で「核について表立って議論する」選択肢が消える
- 中谷元前防衛大臣(この方も自衛官だがもとは現場レベル)が「責任論」に言及。
- このころから「ほぼ名指し」が始まる。つまり議論ではなく「犯人探し」にシフトする。
- 小西洋之氏はXでほぼ名指し。
- 玉木雄一郎氏も「この人物」を知っていることを仄めかす。
- 「ほぼ名指し」の人物だったとすれば、おそらく最も言ってはならない職歴を持ち、なおかつ核兵器保有とは全く相容れない職務を担っていることとなり、とても議論の格上げのために「逆利用はできなかったろうなあ」と言う気がする。
- 誰も名前は言わない、ため「本人宙吊り」状態。おそらく本人が言いたくてももう言えない。直ちに高市政権の問題になってしまうからである。
- こうなると「言わせるゲーム」(絶対言えないから)が始まる。
- 立憲民主党は更迭を要求。これを問題化する気満々である。しかしなぜこれが更迭理由になるのかについては説明しているようで説明できていない。つまり「変えることそのものが危険視される社会」になっている。真っ当な核兵器の議論は行われないままだ。
- 中国が案の定「国際社会も警戒すべき」と発言。つまり中国が日本を敵視しているのではなく「国際社会が警戒する相手」にしようとしている。しかし日本は公式には何も変えていないことになっているので、したがって反論もできない。
- 小泉進次郎防衛大臣が「(議論からあらゆる選択肢を排除せず)」と発言し押し返しを図った。
キープレイヤーのSNSでの発言
おそらく「誰が言ったか」がわかっている玉木雄一郎氏。つまり首相官邸筋のNPTの担当者であることは皆わかっている。
名指しはしていないが「ほぼ名指し」となっている小西洋之氏。いくつもの名誉毀損裁判の経験から「ギリギリ」のラインがわかっているのかもしれない。
非核三原則について議論することは「関係者を傷つける」から絶対に許されないとする野田佳彦代表。国際環境の変化について語るつもりはなさそうだ。
議論すべきだと主張する河野太郎氏。ちなみに当ブログは河野太郎氏にブロックされている。ブロックを多用することで有名な河野太郎氏には「ブロックたろう」という異名がある。
いくつかのまとめ
高市総理は台湾有事発言から学ばなかった。「個人的見解」は中国に利用される可能性が高い。「ポップアップイベント」が自分たちの不利にならないように、また自分たちの有利な状況を作るために逆利用するという発想に至らなかった。今後こうした事態が起きたときの「戦略の切り替え」をする訓練をし、なおかつ「災害対応招集チーム」でも作らない限りこのような炎上はこれからも起きるだろう。
今回の事例は日本人が変化そのものを嫌い、変化が起きたときに「犯人探し」を問題解決に代替させる傾向があると示す新しい教材になった。台湾有事問題においては未だに「原因を作った岡田克也が悪い」「いやいや朝日新聞のせいだ」という「議論」がある。多くの日本人には戦略的発想がなく犯人探しでムラの動揺を収めようとする傾向が強い。
今後の議論
炎上による議論の封じ込めは我が国の安全保障議論のためには良くない。しかし政府は戦略的に議論を組み立てる「軍師」のような人がいないようだ。
とはいえ、今回の議論はSNSで冷静に監視されている。おそらく「本当に将来の核兵器の議論をしなくてもいいのか?」と考える人は出てくるはずだ。
時事通信は「今後の世論の動向を見極めたい」とする政府の声を伝えている。高市総理はリーダーシップを期待されているがあくまでも「客席」側に座っており主体的に動こうとする意欲は感じられない。結果的に誰もが「誰かなんとかしてくれるのではないか?」と考えているようだ。
政府は「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を維持する姿勢を強調。世論の反応も見極めつつ、沈静化を目指す構えだ。
野党、「核保有発言」首相に罷免要求 政府、沈静化目指す(時事通信)

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