トランプ大統領が面白半分で自由主義経済圏を破壊し始め、話題になっている。
「NBCニュースに対し、米軍の攻撃でカーグ島の大部分が『完全に破壊された』とした上で、『面白半分であと数回攻撃するかもしれない』と語った」という。次世代型リーダーはこれを組織の危機管理のケーススタディとして研究すべきだろう。テーマは広報戦略の立て直しとトップの暴走である。
もう一つの注目ポイントはバンス副大統領の行方である。今は「チーム・トランプ」の一員であるバンス副大統領だが、トランプ大統領との間には微妙な距離があり、今後の動向が注目される。つまり、今後は「何を発信するか」よりも「何を発信しないか」が重要になってくるのだ。
戦争の継続が確定的になった。トランプ大統領は中東諸国が持ちかける和平交渉を拒否し、イランに対する攻撃を続けている。トランプ大統領は間違いを認められず、イランも今回の防衛を通じて「世界経済に強い影響力を持っている」と誇示したい。両者の思惑が「一致」し、自由主義経済の混乱につながりかねないホルムズ海峡封鎖の継続が既定路線となっている。
トランプ大統領の暴走を止められない以上、閣僚たちも何もしないわけにはいかない。そこで広報戦略の立て直しを図っている。ライト・エネルギー長官がインタビューに答えて「しばらくの間戦争は続くが、これは大きな成果を得るためのほんの小さな犠牲に過ぎない」と説明した。さらに「バイデン政権の時代にはガソリン価格はもっと高かった」と主張している。
仮に戦争が長引いたとしても、それは和平に応じないイランのせいであり、自分たちの落ち度ではないという「説明」はアメリカ合衆国ではよく見られる。さらに「自分たちも確かに問題を引き起こしているが、バイデン政権よりましだ」という説明もそれほどめずらしくない。
バンス副大統領も同じような説明をしている。ガソリン価格の高騰はバイデン大統領のせいであり、自分たちの落ち度ではないというのである。この釈明はすでに反トランプ陣営から嘲笑の対象になっており、「もっと釈明を続けさせよう」という投稿まで出ている。
さらにベッセント財務長官もスカイニュースとのインタビューを途中で中断させられた。この後戻ってきてインタビューは継続されるのだが、明らかに慌てており、声が震えているように見える。
失敗は誰の目にも明らかであるにもかかわらず、それを認めず、目の前の問題を矮小化し続けることが「広報上の大惨事」になることが分かる。
トランプ大統領はこうした努力をすべて上から押しつぶしてしまう。発言は二転三転しているうえ、最近では「面白いからやっている」という趣旨の発言が増えている。共和党議員たちの前で「イランの船舶を沈めるのは、そちらの方がもっと面白いからだと軍に言われた」と説明し、聴衆の笑いを誘った。さらにNBCのインタビューでも「カーグ島を攻撃したのは面白いからだ」と主張している。
NBCニュースに対し、米軍の攻撃でカーグ島の大部分が「完全に破壊された」とした上で、「面白半分であと数回攻撃するかもしれない」と語った。
トランプ氏、カーグ島再攻撃を示唆 イランとの取引「条件不十分」(REUTERS)
トランプ政権の混乱の原因はどこにあるのだろうか。
第一に、トランプ政権は「組織内でバリューを共有せず、結果こそがすべてだ」と考えてきた。
第二に、トランプ政権は実施された政策を評価せず、すべては成功だと主張し、内部でもそう思い込もうとしてきた。
結果としてトランプ政権は、明確な失敗に対してリカバリーができず、場当たり的な釈明を繰り返し、その釈明がさらに嘲笑されている。
トランプ政権には二つの選択肢が残されている。「失敗を認めて謙虚さを取り戻す」道と、「広報上の失敗を克服し、強い軍事力を投入して状況を上から押さえつける」道である。
アメリカ合衆国は強い軍事力を持っており、この戦略が成功する可能性はかなり高いのではないかと思う。しかし、この「成功」はすなわちホルムズ海峡の封鎖が長引き、アメリカ経済が高いインフレに陥ることを意味している。つまり当座の戦争には勝てるが、アメリカ国内に強い経済不満を生み出す。トランプ政権はこれを有権者に説明することができず、「バイデン政権よりましだった」という釈明を繰り返すことになるだろう。
そんな中、注目されるのがバンス副大統領の動向だ。今回の「開戦時」に沈黙期間があり、トランプ大統領も「自分とバンス副大統領では哲学が違う」と語っている。今は無理筋の釈明を行っているが、決して「自分も戦争に賛成している」とは言わない。そもそもバンス氏はロースクールの学生時代にオバマ政権を支持し、共和党を批判していた経歴がある。
- Trump says Vance was ‘philosophically’ different on Iran while downplaying split(AP)
- バンス上院議員、かつて共和党の移民政策を批判 批判の投稿の削除依頼も(CNN)
つまり仮にトランプ政権が行き詰まれば、バンス副大統領はこの戦争を「トランプの戦争」と位置づけ、切り離してしまう可能性がそれなりに高い。
特にベッセント財務長官の動揺ぶりを見ると、政権内ではかなり危機感が共有されている可能性が高い。今後は雄弁なトランプ大統領や「スピーカー」のヘグセス国防長官以上に、バンス副大統領とベッセント財務長官が何を言わないかにも注目が集まる。特にベッセント財務長官が「為替、国債、原油価格」に関する見通しを避け始めれば、おそらくそれは彼が何かを掴んでいるサインになる。さらにバンス副大統領が無理筋の擁護すら諦め何も語らなくなれば「危機は目の前に迫っている」と考えてよいだろう。

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