9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


長期金利が上昇 高市総理の目指す日本はどのような国なのか

9〜14分

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長期金利が上昇し一時1.73%になった。REUTERSによると金利はベアスティープしているという。つまり経済の立ち上がり期に見られる良い兆候だ。しかし、このよう兆候の恩恵を受けられるのは企業と投資家だけになりそうである。エコノミストたちは高い支持率に遠慮して批判は控えている。しかし実感が得られない有権者たちが不満を感じ始めれば「すでに埋め込んでいる」批判材料を展開させることになるだろう。

日本のGDPが6四半期ぶりにマイナス成長になった。マスコミは「トランプ関税など一時的な影響である」と言っている。つまりあまり心配しなくていというわけだ。木原官房長官も経済は成長基調に乗っていると説明している。しかしながら日本経済は「僅かに誤差の範囲でプラス」状態が続いてきた。つまりほとんど成長していない。

現在、中国との関係が悪化しつつあり地方や小売の稼ぐ力にネガティブな影響が出始めている。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算では1兆7900億円になるそうだ。

国民には「経済は成長基調だ」と言っているが、高市総理の経済ブレーンたちはこれを「危機的状況だ」と主張。対応のためには今の17兆円の予算規模では足りず20兆円が必要(日本成長戦略会議の片岡委員)だ、いやいや25兆円必要だ(責任ある積極財政を推進する議員連盟)という勇ましい声が踊る。片山さつき財務大臣も補正予算の規模は日に日に膨らみつつあると説明している。

市場はこの財政拡張路線に反応し長期金利が1.73%に上昇している。REUTERSは「ベアスティープ」と書いている。これは短期金利も長期金利も上昇基調にあるが長期金利のほうが多く上がっているという意味なのだそうだ。市場は国の積極的な財政出動もあり長期的には「国が成長するだろう」と予想していることになる。長期金利上昇はハイテク企業にはマイナスがだが日本のハイテク企業はアメリカに連動している。またエネルギーに依存する企業も価格転嫁は容易なため国際的に資金調達ができていればネガティブな影響は受けない。しかしお金を借りている人(中小企業や家を建てたい人)にとってはあまり良くない変化になる。

また円相場も円が安くなる展開。ドル円は150円台が定着し対ユーロも円が史上最安値の180円台となった。これは高市政権の経済政策で円の価値が更に下落し、輸入物価がインフレを起こす材料となる。

金利上昇自体は「投資家にとって日本が稼げる国に戻りつつある」という意味で良い変化といえる。金融庁の諸改革もあり海外投資家が安心して投資できる国になっているとも言える。そもそも現在の物価高は年率3%近辺であり日銀が目指しているのも2%成長なのだから1.73%でもまだまだ低すぎる。

問題になるのは「アベノミクスの出口戦略」である。日銀がすぐさま破綻することはないが、政府と日銀が歩調を合わせて金融政策と成長戦略を両立させないと金融市場からノーを突きつけられかねない状況になっている。

特にこれといった正解があるわけではなく「工芸的に」何年もの時間をかけてこの時間を乗り切らなければならない。

ChatGPTにまとめてもらったところ「アート(工芸的)に対処すべきフェイズ」で「総合的に判断しつつ短期ですませるか長期に分散させるか」を決めたほうが良いそうだ。

アートは日本語ではあまり馴染みのない言葉だ。もともと美術ではなく工芸を意味している。理屈よりもそのばその場の対処が求められるという意味になる。壺を作る時に「理屈」を言っても仕方がない。手加減や水の加え具合を間違えるとツボは形にならないからだ。日本はかなりの時間をかけてこうした難しい局面に対処する必要がある。

こうした金融政策の先行きの難しさはThe Priorityでも示されていた。長期的にはインフレ加速ではなく経済停滞が予想されるとしたうえで、折り込みが難しいまだら模様の経済指標になったと言っている。つまり当面は難し状況を判断しつつそのばその場で適切な運営を行ってゆくしかなと言うことになる。

また国家は選択的に儲かる産業を選定するべきではなく「成長のインフラ」を作るべきだと考えられている。

高市政権は感情的な支持者、漠然とした期待を寄せる有権者、ポジション的にアベノミクスに固執するエコノミストたちに囲まれている。

特に危険なのはポジションを変えることができないエコノミストたちだ。追加支出が増えても期待通りの効果が出なければ大陸に進出した陸軍よろしく「追加物資が足りないから本来成功するはずの戦略が失敗した」といい出しかねない。これに対して経済評論家が異議を唱えても「高市さんをイジメるな」と感情的に反発する人も出てくるだろう。

たそもそも物価高対策は弥縫策に過ぎない。このため今は期待を寄せている有権者たちも「いつまで経っても政府は少なすぎる経済対策しか出してくれない」と不安を溜め込むことになるだろう。

日銀の植田総裁は「財政拡張路線が長く続くと経済に悪い影響が出る」と高市総理の政策に抵抗している。18日に総理官邸に出向き意見調整を行うと報道されているそうだ。高市総理が学者肌の植田総裁の言っていることを理解できるかが一つの注目点なのだろう。