9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


野田佳彦代表はなぜ党首討論に失敗したのか

17〜26分

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無意味な時間だった。高市総理と各政党の党首が討論を行ったがなんら新しい情報は得られなかった。特に長い時間を使った野田代表の質問はナンセンス以上のなにものでもない。質問する能力がないのならその時間を別の政党に分配すべきだろう。

野田総理はこのままでは高市早苗はリズ・トラスになると迫ったが「いやそんなことにはならない」と言い返されるだけに終わった。立憲民主党の勉強不足による明らかな失策である。

このエントリーはなぜ野田佳彦代表が失敗したのかを整理するのだが、議論が複雑なので目次を用意した。答えが読みたい人は目次をクリックして途中を飛ばしていただきたい。

まず現在の経済状況を整理

The Priorityが高市政権と日銀の政策の狙いについて解説している。過度な批判をせずに政策議論の裏側を伝えようとチャレンジしている点に好感が持てる。今回の議論の中にマンデルフレミングモデルという用語が出てくる。何を言っているのかさっぱりわからなかったので例によってChatGTPで整理してみた。

マンデルフレミングモデルは1960年代に作られた製造業を前提にしたモデルで、リフレ派が財政出動の根拠として用いることで有名になった。従来型の需要供給モデルを拡張し資本の移動を組み込んでいる。

高市政権と「マンデルフレミングモデル」の関係

マンデルフレミングモデルは強調されやすいが高市政権の主流とは言えない

高市政権の経済ブレーンの中にもマンデルフレミングモデルに依拠している人が含まれているが完全に主流とは言い切れない。むしろさまざまなフレームワークを混合させている可能性が高い。ChatGPTの整理(これも何を言っているのかはさっぱりわからないが)次の通り。

  • UIP+リスクプレミアム(現代版オープンマクロモデル)
  • DSGE(特に開放経済版)
  • 為替はFundamentalだけで動かないという議論
  • グローバル・サプライチェーンの価格波及モデル

これらは MF を拡張した「現代の開放マクロ」だが、古典MFモデル(価格固定・資本移動完全)とは別物であると出力された。

中には

  • ニューケインジアン的なインフレ・期待の重視
  • 新貿易理論・新産業政策の影響
  • DSGE的な開放経済の視点(ただし実務レベル)
  • 地政学・サプライチェーン型モデル

が見られるという。

高市政権の「モデルつまみ食い」疑惑

これらを戦略的に使い分けるならば政策としての一体性が保たれる。しかしながら「つまみ食い」になると弊害のほうが大きくなる。少なくとも今のところAIに論理的な整理はできない。

  • 円安是正のための為替政策(MFモデルでは“通貨管理的”で一貫性が弱い)
  • 国内製造業回帰を促す税制(供給サイド/新古典派的)
  • 公的研究開発投資の強化(内生的成長理論寄り)
  • 資本市場改革(金融深化=別のモデル)

どうしてこうなるのか。それはブレーンとして名前が出る人のバックグラウンドがリフレ派・成長戦略派・供給側改革派・国家安全保障経済派・財政規律派など様々な寄せ集めだからである。

ではつまみ食いだと何が問題になるのか。2つの問題が挙げられる。

  • 市場が一貫性のない状況を忌避し「日本売り」に転じる。これが野田佳彦氏の言っていた「リズ・トラス化」だ。
  • 次に政策的には何も実現できないままコストたる副作用が積み上がる。これも日本売りにつながる。これは短期的な帰結ではなく中長期的に積み上がる。
  • 構造問題が放置され衰退が進む。

結果的にコストだけが上がり賃金に反映されない。つまりデフレマインドが更に強化される結果になってしまう。つまみ食いが最もコストが高く「やらないほうがマシだった」という結論に至る。

野田佳彦の失敗

野党の責任は与党の政策監督である。しかしそもそもモデルを使った体系的な政策議論をしない日本人はモデルを使った正確な政策理解を優先すべきだ。しかしそのためにはまず質問する側がモデルを理解しなければならない。野田佳彦代表はこれを怠っている。

証明済みの問題をネチネチと問い詰めた

台湾有事発言で高市総理が国際問題を理解していないことはよくわかった。これはもはや前提として語ればいい話であってネチネチとテレビで時間をかけて陰湿に問い詰めるような問題ではなかった。さらに高市総理は間違いを指摘されるとムキになり言い訳を繰り返すだけに終わることもよくわかっている。彼女はおそらく政策立案者としては無能か凡庸だが、それを証明して何になるのか。

経済理論がよくわからないため、相手に間違いを証明させようとした

野田佳彦代表は高市総理の政策は単に日本売を招くだけであり「リズ・トラス化」すると指摘した。しかし内容をよく理解していないため「そんな事はありません」と言われて話が終わってしまっている。

すでに整理したとおり、高市総理の経済ブレーンには様々なバックグラウンドを持った人達がいる。このブレーンを取りまとめる人がいないため、彼らは高市総理に政策を売り込もうとして「コスト(副作用)」については語らず、ベネフィットばかりを売り込もうとするだろう。

つまり経済ブレーンと呼ばれる人たちから話を聞いたところでそれは彼らが高市総理に何を売り込みたいのかを事情聴取しているだけであって日本の経済政策に付いて理解する助けにはならないということになる。

つまり現在の政治構造において問題を整理し選択するのは高市総理しかいないことになる。仮にその高市早苗総理が自分がやっていることを理解できなければ、誰も理解しないまま政策の寄せ集めだけが実行されることになる。

野田佳彦代表はそもそも高市総理が自分が何をやっているのかを理解しているのかをテストすべきだった

仮に高市総理が経済政策について理解をしていないとすると、高市総理の経済政策は単に日本売りにつながる。つまり高市総理はリズ・トラス化する。しかしそれだけでは終わらず国民経済が疲弊し「失われた数十年」がさらに延長されることになる。だから野田佳彦代表はそもそも高市総理が自分がやっている経済政策を他人に説明できるかをテストすべきだった。

現在の日本政治が持つ現状維持の誘惑

台湾有事問題においてよくわかったことがある。一つは高市総理の戦略思考の欠如と無理解ぶりだ。加えて現在の日本人には極めて「現状維持バイアス」が強いという事もわかった。自分の在り方を誰かに肯定してほしい、そのままでいいと認めてもらいたい人が多いようだ。

冒頭に述べたマンデルフレミングモデルは日銀の事実上の財政ファイナンスを正当化するために用いられた。安倍総理が人気だったのは「日銀がなんとかしてくれるからみなさんはそのままで良い」と現状を肯定してくれたからだろう。しかしモデルは機能せず製造業は海外に流れていった。高市政権はそれを認めずに「アベノミクスは機能し始めていたがコロナとウクライナで台無しになった」と抗弁している。

日本型のポピュリズムと日本の現在位置

いわゆるポピュリズム政策は行き過ぎた分配のことを意味することが多い。しかし日本の場合は行き過ぎた現状肯定もまた人々には受け入れられやすいポピュリズムの形なのかもしれない。

長期インフレ期待が積み重なると企業はこのまま収益を上げ続けるが国民生活には恩恵が少ないという図式が定着することになる。

7〜9月期のGDPギャップが出てきた。3期ぶりのマイナスということになっているのだが誤差の範囲で0近辺を推移している。つまりちょうど需給バランスが釣り合っている状態。今回は計算式上で潜在成長率を下げたことで若干マイナスになったとのこと。少子高齢化が進めば供給制約がさらに厳しくなる。

国民民主党の玉木雄一郎代表は供給制限の原因になりそうな労働制約問題を解消するための税制改正を要望している。しかしながら高市総理は財政規律を心配しており議論はかみ合わなかった。おそらく単なる「低所得者優遇」政策に落とし込みたいという狙いがあるのだろう。

日銀は逆ザヤ(国債で得られる金利よりも利払いのほうが増えている)でこれまでのような積極的な金融政策は取りにくいだろう。これは有権者ではなく金融市場が判断する。

よく「株高不況」という言葉が語られるが実際に統計で証明されたわけではない。実は税収は好調で補正予算が作られる前の国債発行額はかなり低く抑えられるはずだった。つまり有権者の生活実感が良くならなくても国の税収は回復している。つまり、重税で国民生活を痛めつけたうえでわざわざ多額の事務経費を支払ってそれを割り戻そうとしているということになっている。高市総理は都道府県知事たちと会談し「協力」を要請している。一方で都道府県知事たちはガソリン減税で収入が減ることを心配している。

結論

様々な議論を総合すると、おそらく「共通言語」を持たないままで議論が進行しており、誰も何も取りまとめていない可能性が極めて高い。まずはそれぞれが背景にある経済モデルの概要を理解した上で議論を整理しなおすべきなのかもしれない。

しかしながら共通言語を作らないことでそれぞれが都合の良い解釈ができ「自分が変わらなくて良い理由」づくりに役立ってきたのも事実である。

このまま自然に経済が回復してゆけばいいのだが、安倍政権の失敗を見る限りは弊害ばかりが積み重なりこのままじわじわと国民生活が苦しくなってゆく。

結果として各政党とも不安定な運営を迫られている。まずは共通言語のなさを自分ごととして捉えるべきだろう。