アメリカ人がかわいそうになってきた。連邦政府は閉鎖され一般庶民はインフレに追われている。一方で富裕層はトランプ大統領の支援に期待をして多額の寄付をしている。トランプ大統領はこの寄付を使ってトランプ好みの金ピカのボールルーム(舞踏場)建設を始めた。しかし、支持者たちはトランプ大統領が自分たちのための政策を推し進めていると信じて疑わない。そう信じたいという気持ちがあるのだろう。
ホワイトハウスの壁が壊された。トランプ大統領が私費で建設するボールルームとつなげるためなのだろう。トランプ大統領は「納税者のお金を使わずに建設が進められることを誇りに思う」と発表したそうである。ボールルームは「踊るための部屋」という意味だが、CNNなどでは宴会場と訳されている。
宴会場はトランプ大統領好みの装飾になっている。アメリカ人が豪華と感じるものを寄せ集めた金ピカの内装。これはトランプ様式と呼ばれるべきなのかもしれない。
ホワイトハウスが提供した完成予想図では、金とクリスタルのシャンデリアや金色のコリント式の柱、金の装飾を施した格天井、金色のフロアランプ、市松模様の大理石床を備えた広大な空間が示されている。3面のアーチ型の窓からは南側の敷地を見渡せる。
米ホワイトハウスに宴会場、工事始まる 「これまで以上に美しく」とトランプ氏(CNN)
Axiosによると、実際にこのボールルームは富裕層からの寄付を集めて作られている。トランプ大統領の優遇政策で最も恩恵を受ける人達である。アメリカ合衆国の株価は絶好調。富裕層が牽引する消費も好調だ。しかし物価高が進めば進むほど分前のない一般所得層はインフレに苦しめられることになる。
さらに治安も悪化している。現在アメリカの空港ではTSAの職員が無休で働いている。管制官の人手不足もあり空港は大混雑しているそうだ。アトランタのある空港ではSNSで空港攻撃をライブ中継する!と宣言した男が取り押さえられた。家族が心配して当局に通報したのだという。当局は動機の解明を進めているそうだが家族の話を総合するとおそらく動機は出てこないだろう。
アメリカ合衆国では武器だけは豊富に手に入る。対処する人たちの給料は後回しにされているが、トランプ大統領は「残って欲しい人の給料は払っている」と主張しているそうだ。
それでもバイデン政権下での諸政策に不満を溜め込んだ人々は「アメリカ合衆国がだめになったのは民主党の政策のせい」というトランプ大統領の主張を信じている。またどの政治家を支持しているかを公言する傾向があるアメリカでは一度「トランプ支持である」と表明するとその主張を引っ込めるのはなかなか難しいという事情もあるのかもしれない。
トランプ大統領はまず今回の建設計画はホワイトハウスと干渉することはないとしていた。しかし実際にはホワイトハウスの壁を壊している。批判を避けるためにその場限りの嘘をつき、結果的にやりたいことを実現するというのは、もはや見慣れたトランプ大統領の常套手段といえる。
そしてそれを批判されると民主党に対するとりとめのない不満を列挙し、相手が疲弊するのを待つ。
民主党的傾向を取り除けばアメリカは再び偉大になるという一種の「純化欲求」が起こると優先順位の変容が起きる。するとトランプ大統領の豪華な宴会場も「アメリカが純化されれば繁栄につながる」と理解されてしまうのだ。
目的実現のためには多少の嘘も許されるという手法は次第にアメリカ合衆国の民主主義を蝕んでいるが、人々はこの新しい日常に慣れてしまったようだ。
