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追い込まれるNATO事務総長

6〜9分

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ヨーロッパはロシアの力による現状変更に抵抗し続けている。加盟国の領土に対する脅威になりヨーロッパの秩序が崩壊しかねないからだ。しかし実際にはアメリカ合衆国頼みの状況から脱却できていない。

ところがそんなアメリカ合衆国がロシアの力による現状変更を認めかねない状況になっている。ルッテ事務総長は追い込まれているといえるだろう。

ルッテ事務総長はトランプ大統領とうまくやって行ける事務総長として期待されていた。NATO首脳会談においてルッテ氏はオランダ王室も巻き込んだ懐柔策に出る。BBCはお世辞と懐柔で「約束」得る、トランプ氏一色だったNATOサミットと苦々しい調子でルッテ事務総長のへつらいぶりを報道している。

しかしながらこの懐柔策はトランプ大統領には効果がなかったようだ。

まるで王様のような待遇に気を良くしていたトランプ大統領。一時はプーチン大統領は戦争を終わらせるつもりはないのだろうと発言するまでになっていた。

しかしながらプーチン大統領は落ち着き払った様子で動じることはなくトランプ大統領に魔法をかけ続けた。自称「ディールの天才」でのどが渇いた子どものようにノーベル平和賞という名誉を求めるトランプ大統領を懐柔するのはさほど難しくない。

ABCのThis Weekでボルトン氏は「プーチン大統領がKGBで培った魔法を試す場になるだろう」としてロシア側に有利な展開になることを予想している。CNNもトランプ大統領はロシアに有利なディールを受け入れてしまうのではないかと見ているようだ。

BloombergはThis Weekのルッテ事務総長のインタビューから次の箇所を抜き出している。

ルッテ氏は「この領土の問題に関して、将来の合意でロシアが事実上ウクライナの一部を支配していることを認める場合、それは政治的・法的な承認ではなく、事実としての認識でなければならない」と語った。

米ロ首脳会談、ウクライナ領土巡る交渉への道開く-NATO事務総長(Bloomberg)

もはや何を言っているのかは意味不明だが、要するに「トランプ大統領が現状を認めたとしてもそれは認めたことにはならない」と無理筋の予防線を張っているのだ。

ヨーロッパとウクラナイナは13日にトランプ大統領と会談を行うことになっていて、その後の15日にトランプ大統領とプーチン大統領が会談することになりそうだ。アメリカ合衆国側は3者会談も排除しない方針だそうだが、下手をするとアメリカとロシアが揃ってウクライナに領土割譲を迫るという悪夢のような展開に終わるかもしれない。

これは日本にとって対岸の火事ではなく……というのはガザの記事と全く同じ内容だ。

これまではアメリカ合衆国は力による現状変更を認めないとしていた。しかしトランプ大統領はおそらくこれが何を意味しアメリカの国益とどうつながっているのかはがよくわかっていないようだ。そしてこれはトランプ大統領個人の資質ではなくアメリカ合衆国が自由主義に対してメリットを感じられなくなっていることを意味するのだろう。

日本は日米同盟は維持しつつ代替的な解決策を模索すべきタイミングに来ているが、国内政局に釘付けの日本の政治家はそこまで大局的になれるほどの余裕がなさそうだ。

日本が終戦記念日とする1945年8月15日(実際には戦争終結ではなく戦争の意思がないことを示した日付に過ぎないという人もいるが)から80年後の2025年8月15日は世界にとって新しい節目になるのかもしれない。

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