9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


迷走するコメの議論 小野寺政調会長は口喧嘩

6〜9分

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日本人は議論ができないと書くことがある。大抵の人は日本人が馬鹿にされたと腹を立てるようで「なぜ議論ができないのか」と考える人は多くないようである。ただ迷走する米価の議論を見ているとなぜ日本人が議論ができないのかがよくわかる。

コメの値段が下がらない。国民は「食料品が値上がりしているから食料品価格を下げるために食料品の消費税を減額すべきだ」という単純化した議論に吸引されている。さらに共同通信の世論調査によると40%が生産減が影響であると回答している。つまり減反政策が原因だと考える人が増えている。減反政策を知っている中高年ほどそう考える傾向が高いそうである。

コメの値段がなぜ下がらないのかについては徐々にメカニズムが分かりつつある。

  • 農水省がコメの生産量をギリギリに抑えて値崩れを防いできた。
  • 同時に農協が現在の複雑な流通に耐えきれなくなりコメの流通が複雑化した。
  • (何らかの影響で)コメが足りなくなると一気に逼迫感が増しコメの値段が上がり始めた。
  • 価格を高くしているのは中間業者。農家は経営が逼迫し離農が続いている。狭い日本でコメを運ぶだけで「消費者の手元に届くまでに2686円(5Kgあたり)増えています」という状態。
  • 生活必需品であるコメはは一度価格が上がると下がりにくい(下方硬直性)うえに需要の価格弾力性が低い(価格が上がっても需要が減らない)ため、価格が高止まりしている。

しかしながら日本人はこうした基礎分析を嫌がる傾向がある。結果的に次のようなコタツ記事が書かれた。いきなり各論に突入してしまうため「感情的な言い合い」で議論が平行線を辿ってしまうのである。

一方の橋下氏は「それは補助金抜きで価格を見て判断していただかないと選択になってないですよ」と言い返し、小野寺氏は「いやいや農家が自ら選択している」、橋下氏は「だってそれは補助金があるから。補助金で誘導しているからじゃないですか」と一歩も譲らず、議論は平行線のままだった。

自民政調会長が橋下徹氏と“口げんか” 主食用米、飼料用米の作付け巡り「農家の判断」「補助金で誘導」(スポニチ)

問題を解決するためには次のような処方箋が考えられる。

  • コメの生産量をギリギリに抑えずに済むように海外に販路を広げる。
  • 現代の流通に耐えられなくなった農協に対して必要なIT化などの支援を行うと同時に小売が参加できる透明な市場を作る。
    • 消費者が適正な価格でコメを買うことができる。
    • 流通が中抜きしなくなれば適正な儲けがコメ農家に還元され次も農業を続けることができる。

その意味では石破総理の「海外にコメを売る」というアイディアは一概に責められうべきものではない。しかし石破総理は「流通改革」を行うと同時に目の前の問題に対処する必要がある。

失敗を認めず海外にコメを売る話をしてしまったために「国内でコメが足りないのになぜ海外に売るという話をしているのか」として炎上してしまったそうだ。週刊女性PRIMEが石破首相、お米高騰の中「世界に日本米を提供」発言に「的外れにも程がある」国民大激怒というコタツ記事を出している。

自民党は支持母体のJAを守っているつもりなのだろうが、儲けが中間業者に流出することにより農家の経営が圧迫される。またコメの価格の高止まりは「もうコメを食べない」という消費者を育てることになる。つまり海外製の安いパスタやパンなどに需要を奪われてしまうのである。

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