鈴木農水大臣がテレビに出演しコメ価格の政策転換について農林水産省の方針を弁護した。鈴木大臣は自身を「農水省はえぬき」と評価しており農水省の自己弁護の色彩が強い。高市総理大臣はコメ価格についての見解を出しておらず、農林水産省の官僚が代わりに政治的に暴走しているような状況になっている。
ただここ数日の議論を見ていて「なるほどなあ」と思った点もある。どうやら安倍政権・高市政権は政治を問題解決ではなく「勝ち負け」と考えているようだ。問題解決型の議論ではないため鈴木大臣の評価は大きく別れている。
鈴木農水大臣がテレビに出演しコメ価格の政策転換について説明した。表面的には農家の利益代表となり「高い価格でコメを買ってもらわないと困る」と説明しているような印象がある。
玉川徹氏は「コメの価格が2倍になったのはハイパーインフレだ」との暴論で鈴木大臣に立ち向かおうとしたがあっさり玉砕していた。さすがにこれは無理な議論だ。
ハイパーインフレとは通貨が紙くずになるようなインフレを指す。だが、日本円が紙くず化したという話は聞いたことがない。また厳密に言えば米価は30年前の価格を回復したに過ぎないともいえる。つまりこれまで不当に安すぎた可能性もある。
日本の問題は、日本が30年前の経済状態を回復しつつあるなか、多くの国民がそこから抜け落ちているという点にあるといえるだろう。つまり日本はデフレではなくなったがデフレマインドが残った状態になっている。
中日新聞は「鈴木憲和・農相、朝の生放送で”無双状態”に「すげぇ」「玉川さん達言い返せないw」ネット沸く」と書いている。鈴木大臣は高市早苗総理が指名したのだから「高市陣営である」という評価があるのかもしれない。
Quoraの政治系の記事に活動実態がないアカウントからコメントが付くことがある。先日も「政治に対する評価は人それぞれなので、結果的に在任期間が一番長い総理が一番偉かったということにしてはどうか?」という提案があり、即刻ブロックした。安倍総理を支持し高市総理に政策の継続を求めている人はどうやら「何かの量」を使って「誰が一番エライか」を決めたがっているようだ。
本来ならば「問題解決派」と「誰が一番なのかを決めたい派」を分けたうえで丁寧に対応すべきなのかもしれないが、どうしても「目の前の問題が全く解決していないのに誰が一番なのか決めてどうするんだろう?」と考えてしまう。
いずれにせよ「日経平均が5万円を越えたのだから高市総理がエラい」と考える人は増えてくるだろう。民主党が選挙で負けて安倍政権ができたときにも株価が上昇しておりその後の長期政権につながっている。つまり「何かの指標で評価する」という人は意外と少なくない。
一方で全く異なった評価もある。
政治評論家の田崎史郎氏は「鈴木大臣は人の言う事を聞かない人だ」と評価している。高市総理は米価について何ら情報発信をしておらずおこめ券も財政的裏打ちがないのだという。
高市政権はこれまで公明党が抑えてきた防衛安保関連の改革には極めて熱心だ。しかしながら経済政策については野党との協議が必要になるため高市政権がどのような経済対策を打ち出すのかはあきらかになっていない。
このように立場によって評価が全く別れる鈴木大臣だが、冷静に言い分を聞いていると次のようなことを言っているとわかる。
- これまでの農水省の政策は全く悪くない
- たださまざまな突発的な状況があり「たまたまうまくいかなかっただけ」なので
- 今後手法を更に研究し精緻化する
と言っている。つまり農水省の自己弁護なのである。そのため総理大臣がのこのこと出てきて自分たちが守ってきたコメの価格について出過ぎたことを言うべきではないと主張している。
鈴木大臣の発言それなりに精緻に組み立てられているので玉川徹氏の発言を跳ね返すことはたやすい。ではそれが実際に問題解決に役立っているのか?ということになる。
だが実際に農水省はバターや牛乳の需給調整に失敗しておりコメ農家も高齢化の影響で減り続けている。農水省をバッシングしても仕方がないことだが彼らの政策に限界があったのは明らかである。しかし彼らは関東軍よろしく「自分たちは負けたわけではない、まだ勝っていないだけだ」と進軍を続けている。その先にあるのは崖かもしれない。
高市政権は今後、公明党の「妨害」によって妨げられてきた防衛・安保系の反動の強い政権になり、経済政策と政治とカネの問題については整理が進まない政権になりそうだ。
結果的にこれまで行き詰まりを見せてきた「その他の政策」については官僚の自己正当化による揺り戻しが起きるだろう。鈴木大臣の暴走はおそらくその最初の一歩になりそうだ。

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