アメリカ合衆国(正確にはドナルド・トランプ大統領)の混乱と、イランの意外な合理性の橋渡しをしてくれるのが、小谷哲男氏の「クシュナー仮説」である。この仮説は地上波では提示できず、TBS CrossDigで提起された。
小谷哲男氏は「トランプ大統領はベンヤミン・ネタニヤフ首相に誘導されたとみられているが、実際の鍵はトランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏ではないか」と指摘している。もっとも、実際にはどちらか一方だけを原因と見るのではなく、「それぞれの思惑が合成されており、結果的に意味不明に見えている」と考える方が自然なのではないだろうか。
ユダヤ系のクシュナー氏は、もともとネタニヤフ首相とも懇意だったが、第一次トランプ政権でアブラハム合意を成立させた。その後はアラブ圏でも幅広くビジネスを展開している。サウジアラビアは当初、イラン攻撃に反対してきたが、直前になって「このままでは危険度が増す」として賛成に転じたとされている。つまり、「将来のビジネスにとって災いの種になる」と考えたサウジアラビアとクシュナー氏の思惑と、自身の政治的延命のためにイランを攻撃したいネタニヤフ首相の思惑が「たまたま一致した」とみなすことができる。
イランから見れば、自分たちは経済的恩恵から排除されているのに、サウジアラビアやUAEなどがアメリカと手を組み、「対岸で金もうけ」を始めたように見える。またイスラエルはガザを自分たちのテリトリーにしたかったが、トランプ大統領が突然「ボード・オブ・ピース」を立ち上げ、ガザのリビエラ化(つまり金もうけ)の道具にしようとして割り込んできたという構図になる。
さらにイランは原油(原資)だけでなく、テック拠点(結果)にも攻撃を加えており、ターゲットが何であるかは明らかである。
つまり、イラン革命防衛隊は自分たちにも力があることを見せつけ、「この輪の中に自分たちを加える」か、「加えないにしても金もうけを邪魔させない」として取引を持ちかけているという仮説が生まれる。だからこそ、クシュナー氏らの「金もうけの原資」を選択的に攻撃しているのではないか、という解釈が成り立つ。
この仮説のメリットは、イラン革命防衛隊を「合理的に説得可能な主体」として位置づけることができる点にある。ただし、民主主義国家であるはずのアメリカで、これほど露骨な金もうけが放置されているはずはないと否定したくなる気持ちも理解できる。常識との摩擦が大きいために地上波では紹介できないのかもしれない。
しかし、この仮説を導入すると、トランプ大統領の行動原理が読みやすくなるのも確かである。トランプ大統領はおそらく国際情勢を不動産開発事業のように考えている。ジョー・バイデン一家も「利権獲得」を目指しているはずだと考える人々がいる(実際にそうであるかどうかはここでは重要ではない)。
だとすれば、自分はその敵国であるロシアと結びつきたいと考えることになる。ロシアはザポリージャ原発の「共同利用」などを持ちかけていることから、ウラジーミル・プーチン大統領がこの「文法」を理解していることは明らかだ。つまり、ヨーロッパの首脳たちもまた、トランプ大統領とプーチン大統領の「文法」を理解している可能性が高いということになる。
本日は小論文でおなじみの「起承転結」方式にした。全体構成はこちらから御覧いただける。

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