今回の一連の解散報道を見て驚いたことがある。TBSが「統一教会問題」を心変わりの原因の一つとして挙げているのである。現時点では「週刊誌報道」扱いの未確定報道なので随分思い切ったことをしたものだと思った。実はこの問題は韓国では政治報道のど真ん中に来て居る。結果次第では国際問題に発展しかねない。韓国の与党が変質したのは日本のせいだと言うことになりかねないのだ。しかし日本では週刊誌ネタの一つとしてしか理解されておらず温度差が大きい。
まず「旧統一教会問題の再燃」をご存じない方のために状況を整理したい。旧統一教会が「国民の力」に再度接近していた。特に尹錫悦大統領を党内候補に押し上げるために大勢の信者を動員した疑いが持たれている。なぜ統一教会が尹錫悦氏を支援したのかはよくわかっていないが、統制を強める共に民主党でもなく、宗教企業体の関与を嫌う他候補でもない点が好まれたのではないかと考えるのが妥当である。更に弱ければ弱いほど「利用価値がある」ということになる。
旧統一教会と新天地は、教会の信者を政党に加入させ、選挙に影響力を行使したという疑惑が持たれている。旧統一教会のこのような行為は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫人のキム・ゴンヒ特検の捜査で一部明らかになった。しかし、新天地の場合、さまざまな暴露が続いたにもかかわらず、適切な捜査が行われたことはない。今回を機に、民主主義をゆがめる宗教団体の不法行為を根絶しなければならない。
【社説】旧統一教会・新天地…検察・警察合同捜査本部は聖域なく実態解明を=韓国(ハンギョレ)
ところが尹錫悦氏が議会を打倒しようとして失脚したことで共に民主党が攻撃を強めた。共に民主党は検察のちからも弱めたいと考えている。
ささらに国民の力で尹錫悦氏のライバルだったホン・ジュンピョ前大邱(テグ)市長が内部告発した。つまり古巣の「国民の力」が宗教企業体によって歪められていた=だから自分が候補になれなかったと告発したのだ。
ホン前市長は「類似宗教(新興宗教)集団が政治に潜入して党内選挙を左右するようになったのは、2021年7月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)が国民の力に入党する時、新天地の10万人1000ウォンでの責任党員加入で本格的に始まった」として、「あの時、新興宗教集団の集中票で予備選挙の情勢を覆した尹錫悦の予備選挙総括委員長だったクォン・ソンドン議員が、その経験をもとに旧統一教会も引き入れて自ら党代表選挙に出馬しようとした、というのが定説」だと主張した。
韓国保守重鎮、旧統一教会特検について「国民の力の解散理由が一つ増えるだけ」(ハンギョレ)
尹錫悦大統領は民意を武力によって制圧しようとしたという疑いで裁判にかけられており(13日の裁判では死刑求刑もあるとされている)その上に「宗教企業体」によって意思決定が左右されていた可能性があるということになる。
李在明政権が検察を弱体化させようと考えているが、ホン・ジュンピョ前大邱(テグ)市長は「検察がしっかり捜査をすべきだ」と考えている。結果的に韓国世論は「検察と警察が協力に捜査を行って統一教会の徹底調査を行うべきである」と考えるようになった。
韓国ギャラップが16~18日、全国の18歳以上の有権者1001人を対象に実施した世論調査(電話面接方式、信頼水準は95%、標本誤差は±3.1%ポイント)によると、政治家による統一教会関連の金品授受疑惑について、特検を導入すべきかとの質問に、「導入すべきだ」は62%だった。「導入する必要はない」は22%にとどまった。民主党支持層では「導入すべきだ」が67%に達した。中道層と野党「国民の力」の支持層でも、それぞれ65%、60%と高い水準だった。韓国ギャラップは「特検導入論に優勢となっており、与野党支持層間の見解の差も大きくない」と分析した。
「統一教会特検の導入すべき」62%、「不要」22% ギャラップ調査(東亜日報)
この調査の過程で出てきたのがトゥルーマザー報告書だ。長島昭久議員が元信者で合同結婚式を挙げたことまでがわかっているのだが、文書の中に高市氏が自民党総裁になることが天の最大の願いだと書かれていたこともわかっている。
ただし捜査は始まったばかり。ようやく警察と警察による合同捜査本部が発足している。李在明大統領によって潰される可能性がある検察としては是が非でも成果を出したいところだろう。
ポイントになるのは「日本では単なる週刊誌ネタ」とされている問題が「韓国政治報道の文脈ではメイントラックに乗っている」という点である。ただし今のところは世論誘導のためのリーク文書が飛び交っている段階で報道機関が公の機関から受け取ったものではない。だから日本の地上波や新聞社は主体的にこの問題については扱えない。
にも関わらず、ひるおびでは佐藤千夜子氏(毎日新聞社)が「統一教会問題など」と具体的に例示していた。また星浩氏も「1月になって統一教会問題が出てきたこと」が解散に前のめりになった理由かもしれないと語っている。TBSではフリップでも旧統一教会関連報道が影響を与えた可能性があると書いており、かなり自信を持っていることが分かる。
もう一つこの問題について取り上げているのが朝日新聞だ。こちらは報道ではなく社説で扱われているのが確認できた。
政策以外の問題もある。韓国で昨年末、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との密接な関係を示す内部文書の内容が報じられた。
(社説)冒頭解散検討 国民生活より党利党略(朝日新聞)
一方で毎日・朝日といえば、高市支持者が「反日・中国寄り」と名指しで批判する媒体(マスゴミ)なので「どうせこれも反日報道の一環なのだろう」と考える人が多いかもしれない。確かに、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビ、読売新聞などは統一教会問題には触れていない。
結局のところ「この報道のインパクトを最もよく知っている」のは高市総理や萩生田幹事長代行などごく一部の人達だけということになる。
いずれにせよ、さかんに「経済政策第一」と主張していた高市総理が1月に心を変えるなにかがあったことは確実である。統一教会問題はその有力な材料の一つとみなされているが、そのインパクトはベールに包まれている。結果的に高市総理は何らかの大義を掲げて「これまでの主張を覆してまで実現したい何か大きな事がある」との説明を迫られることになった。
ただしこの問題は単なる安倍派と政治とカネの問題の枠に収まらないかもしれない。
韓国の統一教会が運営する企業が単体で営業利益を出しているなら、単に宗教企業体の不正問題だ。つまり、単なる韓国の国内問題ということになる。しかし、仮に日本からの献金が韓国の政界工作資金に使われていたとなると、なぜ日本で大っぴらな献金が実現できていたのかという点が問題になる。仮にここで自民党が関与していたということが分かると日本の政界は共犯者だったという図式が成立しかねないということになってしまうのである。

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