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裁判もまともにできないトランプ政権 政敵潰しの裁判が棄却される

6〜10分

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ウクライナディールのエントリーでトランプ政権はまともに外交戦略が作れないと書いた。しかしそうは言っても大国アメリカの民主主義がそんなことになるはずはないと考える人もいるのではないか。そこでトランプ大統領の政敵潰しの裁判についてお伝えすることにする。裁判が棄却された。仮免検事が裁判所に認めてもらえなかったのである。

トランプ大統領は自分と親族企業を訴追した政敵に私的に復讐するために裁判を起こしている。つまり私用で司法省を使っているといって良い。ABCニュースなどリベラル系のメディアは激しく反発している。

この政敵潰しの一環としてコミー元FBI長官とジェームズニューヨーク州司法長官が起訴された。ヴァージニア州の地区連邦検事は「公判を維持できない」と降ろされてしまう。代わりに検事に就任したのがトランプ大統領のスタッフで弁護士資格を持つハリガン氏だった。

おそらくバージニア州の検事事務所はハリガン氏が送り込まれたことを快く思っておらず全く協力してこなかった。案の定ハリガン検事は手続きに失敗。大陪審全員にコミー事件の起訴状を見せていなかったとされる。

裁判官はハリガン検事に説明を求めたのだが、ハリガン検事もあっさりと認めてしまう。その後司法省は「いや実はハリガン氏は大陪審全員に訴状を見せていました」と抵抗している。

結果的にこの裁判は棄却されたとABCニュースが伝えている。記事には理由が明らかに示されていない。Axiosによるとそもそもハリガン氏の就任は議会承認を迂回した「仮免」であり(暫定検事と表現される)すでに暫定期間を過ぎてているのだから、起訴内容をまとめるところから違法だったと言っている。

“I conclude that all actions flowing from Ms. Halligan’s defective appointment, including securing and signing Ms. James’s indictment, constitute unlawful exercises of executive power and must be set aside,” she wrote in an order in James’ case.

James Comey, Letitia James prosecutions dismissed(Axios)

つまり訴訟を新しく起こしたいならそれはそれで構わないけれども「仮免じゃないちゃんとした検事を連れてきてやり直しなさいね」というわけである。

トランプ氏はおそらくビジネスでも同じようなことをやってきたのだろうと思う。つまり何らかの理由で裁判を起こしてビジネス的なライバルを潰したり抑止したりしてきた。同じ手法を政治家としても採用しているのだろうが、おそらくあまり行政手続きに慣れた人がいないのだろう。結果的に政策は行き詰まり見直しを迫られることになっているというわけだ。

ウクライナ和平問題では外交政策を組み立てるに当たっても国際世論や国際法をあまり理解していないのだろうなという気がする。本来は素人同然の人が入ってきても官僚機構が支えるのだろう。それがアメリカ合衆国の強みになっている。

ところがトランプ大統領はエスタブリッシュメントを嫌うため、なかなか各方面に熟知したエキスパートの知恵が得られないようのである。日本はこの辺の事情を熟知したうえで対米政策が脱線しないように操作していかなければならず、そのためには世論が動揺しないように一定の抑制を効かせなければならないといえるのだ。従米路線も骨が折れる。