今回のAIチャットログはこちら。議題は全く異なる2つの政治ニュースだった。1つは植田総裁の2%インフレ目標達成は近いと宣言したというニュース。もう1つは自民党・維新・公明党が全国知事会に給食費無償化の財源を無心しに行ったというニュースである。
この2つのニュースを論理的に組み立ててゆくと、今後高市政権のもとで国民生活はますます苦しくなるということがわかる。
このところ長期金利(10年国債)金利が急上昇している。金融市場はすでにこれを織り込んでおり30年国債の入札は順調で商社(資本コストは高いが価格転嫁が容易とされる)の株価も上がっている。植田総裁の2%目標到達は近いという発言はこの金融市場の判断と符合している。
日本銀行と安倍政権は現在の状況をデフレ的=つまり正常ではないという認識を持ち、賃金上昇を伴った物価上昇を「出口」に定めてきた。ところが安倍総理の説明は日銀が政策を推し進めてゆけば自ずと賃金上昇が起きるというもの。安倍総理が意識してそう言っていたのか、そう思い込んでいたのか、単に勝手に回りがそう受け止めていたのかは今となってはわからない。
しかしながら「常識的に考えて」日銀が企業に賃金上昇を命ずることはできない。高市総理がいくら「注視して日銀にすべてをお任せ」しても賃金上昇は実現しない。
しかしながら「何らかの理由」で物価上昇が始まってしまったので植田総裁は「勝手に退出を宣言し」「言うだけのことは言った」状態になっている。おそらく、大蔵省の主計官だった片山さつき財務大臣はこれを十分理解しているはずだが、自民党税調からは宮沢洋一氏が退出しており「多勢に無勢」と言った状況である。
ChatGPTは植田総裁の発言を「プロなら意識している警告」と受け止めている。
- 日銀はもうアベノミクス的な財政・金融の同時緩和に付き合えない
- 金利正常化に入るので、財政運営が甘いと長期金利は確実に上がる
- 為替も円安方向に振れるのでインフレはさらに加速する
- つまり政治側が“構造改革か財政健全化”をしないと破綻リスクが増す
つまり「言うべきことはいいましたよ」というスタンス。
ChatGPTは今後政府が「正しい政策」を打ち出さなければ、インフレが腰折れしたままで「スタグフレーション」に突入するであろうと予想している。今回の記事はChatGPTとの会話を再構成しているので、ログで読むとこのあたりの論理構成の順序が入れ替わっている。
「専門家=テクノクラート」の発言はどこかAI的だ。箱の中に閉じ込められている。
状況を分析し答えを作ることはできるが実行はできない。つまり植田総裁はある意味箱の中に閉じ込められているのだ。このため植田総裁は植田総裁はすでに出口の正解を組み立てており、日本経済が破綻しないための最低条件を明確に示した、がそれを実行するのは政府と有権者次第ということになる。
では高市総理はこの植田総裁の警告をどう受け止めたのだろう。おそらく何も受け止めていない。それがわかるのが「給食費」のエピソードである。
これまでの議論からわかるように、AIや専門家は
- 状況を分析したうえで抽象化し
- それに即した答えを作り
- 実行を待つ
という挙動を見せる。
では政治はどのように動いているのか。
自民党、維新、公明党の代表者が全国知事会と会談した。議題は給食無償化と私立高校無償化の財源議論である。
これは国民と政党との間の取引だった。つまり政権政党が政権に居続けるためのコストである。しかし、実際に実現する段階になるとコストを全額負担したない、最低限で済ませたいと考えるようになった。つまりコストのディスカウントを始めたのである。
これを突きつけられた地方自治体は「政党の人気取りのコストを負担させられるのは困る」という気持ちがあるが、同時に「将来なにかお願いしなければならない」と考える。全体像が見えない中で損得勘定の議論が始まりますます全体が見えなくなってしまうのだ。
しかし全体が見えていないのは実は自民党も同じである。彼らはどれくらいのコストを差し出せば国民が納得して諦めてくれるのかがわからない。そのため、場当たり的な約束を繰り返し、後でコストを最小化するという「後出しケチケチ作戦」に転じた。
この後出しケチケチゲームが現在高市総理が行っているゲームの名前である。
しかしこのゲームは論理的に次のような展開になる。
- コンセプトの抽象化ができない
- 局所調整が無数に発生
- 辻褄が合わなくなり誰も何も決められなくなる
- 結果的に誰もが「とにかく自分の持ち出しを減らす」という単純なルールを採用
- 持ち出しを嫌い縮小均衡ゲームが始まる可能性
という展開になる。
ここで我々ができることは多くない。失敗の積み重ねを概念化し「ああまた今回も同じ失敗を繰り返しましたね」「いつになったら学習するんですかね」と繰り返し繰り返し突きつけるくらいしかできることがなくなってしまうのである。
ではなぜこんな事になってしまったのか。今回のチャットから浮かび上がってきたのは「そもそも誰が日本のコンセプトを決めていたのか」という問題だった。
吉田茂総理は大蔵省の後輩たちを集めた「吉田学校」を作った。その中から共通言語を持った人たちが現れ、行動経済成長の基礎を作っている。また岸信介総理も元々は商務省官僚で大蔵官僚とともに満州運営(産業開発5ヶ年計画)で実務経験を詰んだ革新官僚だった。しかしながら彼らテクノクラート型総理大臣は宮澤喜一を最後に出なくなってしまった。彼は情緒的な「政治とカネの問題」を処理できなかった。その最後の生き残りが宮沢洋一氏だったが、地元から宮沢ブランドは選挙には不利と言われてしまったそうだ。
結果的に有権者は清和会型の「政治主導」に希望を見出すことになった。その発端となったのが小泉純一郎総理大臣である。
もちろんテクノクラート型の政治にはデメリットもあるのだから「日本も大蔵省主導の政治体制に戻るべきだ」などと主張するつもりはない。おそらく日本の悲劇は大蔵省に代わるような「抽象化能力の高い人達」が現れなかったことなのだろう。結果的に「縮小均衡が悪化しないようにマネージする」のが現在の選択肢の中ではベストなシナリオということになる。
ChatGPTの今回の一番のハイライトは次の箇所だ。
歴史的に、民主主義が“専門家中心”に揺り戻すのは決まって 危機のとき です:
- 財政危機
- 金融危機
- 戦争
- 技術転換(AI規制など)
シンガポール型・EU型・アメリカ(民主党)型のように、テクノクラートが復権するのはこういう瞬間。
日本でも同じで、
金利正常化による財政制約が有権者に“現実”を突きつけたとき、初めて選好が変わる可能性があります。
かつて「希望は戦争」と言って叩かれた人がいたなあと思い出した。改めて強調しておきたいがこれは単に「論理的に導かれた計算機の出力」だが「痛い思いをしないと人は変わらない」ということになる。

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