コメなど食料品の価格が高騰している。これまでリベラル系野党の常套句だった「困った人に対策ができていない」というフレーズを高市早苗氏が主張するまでになった。石破総理も対策に乗り出したが森山幹事長などの農水族の抵抗を受けている。JAのある組合長が「スーパーで売られているサンドウィッチよりご飯一杯のほうが安い」と主張し炎上する騒ぎも起きた。憲法第25条の生存権はこれまで社会福祉の充実の意味だと取られられていたが「国民が主食を確保できるか」という中進国的な意味合いを帯び始めている。これはアベノミクスの「成果」なので自民党を支援してきた人はシャンパンをあけモチをまいてお祝いしなければならないだろう。
コメの価格が高止まりしている。生活必需品ほど「きっかけがあれば価格が高騰しやすい」という経済学のお手本のような値上がりの仕方だった。コメの場合は農水族と農水省が生産を調整し値崩れを防いできたこともありコメの価格は短い間に2倍に上がっているが、実は数十年前の価格に戻っただけという指摘もある。
石破総理は本音では米価対策を行いたいと考えている。ところが農水省や農林水産大臣から抵抗されて思うように対策が打ち出させなかった。ついには自民党の小野寺政調会長を呼び「自民党から圧力をかけてくれるように」と指示をすることになった。田崎史郎氏は「農水省が怠けている」とする官邸側の主張をテレビ番組で展開した。
しかしおそらく小野寺氏も対策を打ち出すことはできないだろう。石破総理は「コメの輸入も選択肢の一つ」と発言したが農水族のドンと言われる森山裕幹事長に否定されている。総理大臣の発言すら否定できるほど幹事長の力が強くなっているのだ。
そんな中、JAのある組合長の発言が炎上しているという。コメの価格がパンの価格を上回っているためコメとパンが比較できなかった。このためコメとサンドウィッチを比較して「それないだろう」「議論に誤魔化しがある」と指摘されたのだ。炎上というより嘲笑に近い。
スーパーマーケットを観察していると格安のパスタが売られている。原産国を見るとトルコなど聞いたことがない国のものがある。これまで日本人は口が肥えているから安い小麦は食べないという評価があったが「背に腹は代えられない」ということなのかもしれない。
JA全農はコメの価格は高くないと主張する。であればこのまま市場原理を働かせるのが良いのではないかと思う。おそらくやがては外国産の穀物(主に安い小麦)に淘汰されるだろうが、それは仕方がない。JA全農が望んでいることだ。
この一連の問題について記事を集めていてふと思い浮かんだ国がある。それがトルコだ。エルドアン経済学の影響を受けたトルコではインフレが進み、庶民はまともな価格でパンが買えなくなった。これを政治的チャンスと捉えたイマモール市長が公営パン屋を開設し需要が高まっていた。
イスタンブールのエクレム・イマムオール市長は、市の売店にできる行列は経済的な危機のみならず、政治的変化が必要だということを示していると見ている。イマムオール氏はエルドアン大統領の敵対候補と目されている人物だ。
アングル:通貨暴落トルコ、インフレ直撃で安いパンに行列(REUTERS)
事態を重く見たエルドアン政権はイマモール市長を逮捕し大統領出馬資格である大学の卒業資格も失われた。
コメやコムギなどの主食確保が社会福祉になっている中進国は多い。アベノミクスは産業構造転換などの社会改革を金融緩和によって先送りする政策だったが、トルコのエルドアン経済学も金融緩和的な政策だった。
今回のインフレはアベノミクスが長年望んでいたことだ。熱心にアベノミクスを支持してきた人はシャンパンをあけモチをまいてお祝いしなければならない。
この2つの政権の「末路」は極めて似通っている。結果的にインフレを抑えられなくなり食料価格などの必需品から高騰が始まる。
ただ、トルコは外貨準備が不足しがちな国であるのに対して、日本の経常黒字は過去最高の30兆円に達したそうだ。これほどの黒字を抱えながら生活者の課題が中進国なみということになり「どこかおかしいのではないか?」と感じる。
これまでは自民党政権が既存の政策を擁護し「困っている人に対策ができていない」と野党が批判するというのがお決まりの構図だった。自民党支持者たちは「困っている人は怠けているだけ」と決めつけてこの野党の主張を黙殺してきた。
ところが現在は高市早苗氏までもがこういっている。食料品消費税減税などを訴えているそうである。
物価高の現状を踏まえ「困っている人がいる時に国が歳出や減税を惜しむのはおかしい」と強調。
高市氏、食品税率0%主張 消費減税否定の首相に不満(共同通信)
