国民のテレビ離れに悩むNHKはテレビを持っていない人たちからも受信料を徴収しようとあの手この手の策を講じている。その一環として登場したのがNHK ONEである。10月1日からWebサイトがNHK ONEに統合されて登録なしでの閲覧ができなくなった。この中に公共性が高いかつての開票速報や防災情報などが含まれている。悪化するNHKの財政状況を打開するために人質に取られてしまった格好だ。
10月1日からNHK ONEというサービスが始まりNHKのウェブサイトが登録なしで閲覧できなくなった。受信契約を結んでいる人たちは登録が可能だが一部不具合があって登録できない人が締め出された格好になっている。
このNHK ONEのサービスの中には公共性が高い防災サービスや過去の開票速報などが含まれている。
もともとG-mailは厳しいスパムメールチェックを行っておりG-mailにメールを送るのはなかなか難しい。Googleが独自に身元不明とみなすアカウントからのメールを弾く仕組みになっている。例えばこのブログではコメントがあった通知はG-mailアカウント宛てに届くがフォームからの「要望」メールは別のアカウントで受けている。
NHKもこのG-mailチェックを通過できなかったようで公共性の高いサービスへのアクセスが制限されている。G-mail以外のサブアカウントでとりあえず登録は可能なのだろうが将来の利便性を考えるとアカウントは統一しておきたいと感じる。
NHKはなぜ今のような形になったのか。
もともとNHKは国が運営していたが総動員体制のもと戦争遂行のプロパガンダ装置の役割を果たすようになる。
再び日本が政府の影響によって戦争に向かうことを恐れたGHQはNHKを政府から独立させることにする。これが現在の放送法の始まりだ。
ところがアメリカは同時に民主主義を広めるプロパガンダ装置を求めており、読売新聞の正力松太郎を協力者として「民間」の放送局を作ろうとした。日本政府と議会をあまり信頼しておらず自分たちが直接コントロールできる放送局を先に作ろうとしたのだ。この一連の出来事は後に正力マイクロ波事件と呼ばれるようになる。結果的に最初のテレビ局はNHKとなり外資規制も盛り込まれている。
さらに1982年に放送法が改正されNHKエデュケーショナルなどの株式会社を外に作り過去のIP(知的資産)を利用した営利活動が可能になった。そもそも「受信料=公的資金」であるかは過去の複雑な駆け引きで曖昧になっている上に、外に資金を逃がして金儲けができるようになった。
放送法の上では「国民」は政府や企業からの自由を獲得するために独自の放送局を持つことを「許された」ことになっている。だからみなさまのNHKなのだ。しかし実際にはNHK予算は国会審議の対象になっておりNHKの放送はどうしても政府・政権を意識したものになる。
例えば第21代NHK会長の籾井勝人会長は在任中に次のように発言しており、国会でも発言が問題視されている。
- 「政府が右(と言っているの)を左というわけにはいかない」
- (国際放送について)「明確に日本の立場、政府の立場を主張するのは当然だ」
本来ならば「公共性を見直すことで国民の知る権利を最大限に活かすための整理が必要である」と言いたいところだが、そもそも日本の政治議論は眼の前の利害関係にとらわれる傾向があり「国民の知る権利」のようなコンセプトベースの問題は扱えない。つまりそもそも議論は無理だろう。
結果的に「NHKは自分には関係がない」と考える人が増える。この冷淡な人たちの中で一部過激な意見が出てきても冷淡な人々はどうせ自分には関係がないことだと考えるようになる。結果的に日本の政治言論はアルゴリズムに支えられた「お気に入り」の言論に耽溺することになる。
2025年8月の読売新聞にこんな一節がある。
NHKの屋台骨である受信料収入が下げ止まらない。契約数が5年間で145万件減った昨年度末から3か月、さらに14万件減少した。支払率も厳しい状況だ。
46都道府県で支払い率低下、ショックを受けた経営委員に副会長「今が受信料に基づくNHKの持続可能性の分かれ目」(読売新聞)
やむにやまれぬ経済状況にさらされたNHKは生活に必要不可欠なコンテンツや過去の検証に必要なコンテンツを人質にとって受信料の徴収率をアップさせたいのだろうが、自らのコンテンツをペイ・ウォールの中に隠すことで明確な自殺を図っていると言えるだろう。
やりたいならやりたいようにすればいいと思う。どんな組織にも自分の運命を自分で決める自由はある。

“背に腹は代えられないNHKの防災情報や開票速報が登録の「人質」に” への2件のフィードバック
「10月1日からNHK ONEというサービスが始まりNHKのウェブサイトが登録なしで閲覧できなくなった」とありますが、実際には文中のリンク先の記事(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9ed86e05cfc94849947cbd9279574f090b2521e0)でも触れられているとおり、ログインしなくても利用可能なコンテンツはあります。ニュース記事の閲覧や見逃し配信の視聴は可能です。
そうですね。なので閲覧できないコンテンツを限定しました。