日本の保守はアメリカ合衆国のバックアップによって中国と対峙するというプランを持っている。つまりアメリカが日本の頭越しに中国に接近した時点でプランが破綻する。
習近平国家主席とトランプ大統領が直接会談を行った。この席で台湾問題について中国からトランプ大統領に説明をしたようだ。一方でトランプ大統領は4月に北京に招待され有頂天になっている。高市総理はこの頭越しの会談ではしごを外されたと言ってよいだろう。
しかしここに意外な援軍が入ってきた。それがアメリカのシンクタンクのハドソン研究所だ。よく「日本を影で操っている」と言われるのだが実際には日本がシンクタンクに頼り切っているという実態がある。
厳しい現実を突きつけられると保守は「中国の手先だろう」などと苛立ちをぶつけてくるがそれは彼らがきちんとした戦略を持たず不安になっているからだ。保守派はシンクタンクのコメントを良く理解したうえで議論を立て直すべきだろう。
このブログは高市総理についてネガティブな表現が多いため「左派の立場に立って高市総理を攻撃しているのだろう」と考える人も多いだろう。しかし実際には単にインプットを精査し、プロセスを明確にすれば精度が高いアウトプットが得られるのに……と考えているだけである。つまり政治がプログラミングのようにならないことに苛立ちを示しているだけで、左右どちらかの陣営に肩入れしているわけではない。
もちろん、政治経済のような議題には一種の権威性がある。だから「なにか深いお考えでもあるのではないか」と疑われることもあるのではないかと自省している。
さて、習近平国家主席がトランプ大統領と電話会談を行った。これに先立って新華社通信がわざわざ台湾問題をアメリカに説明したと言っている。日本の保守がアメリカに対して見捨てられ不安を持っていることをよく理解しているのだとわかる。
報道によると、習氏はトランプ大統領に対し「中国と米国はかつて肩を並べファシズムや軍国主義と戦った。今、第2次世界大戦の成果を守るために連携すべきだ」と伝えた。
習氏、台湾問題で立場明確に トランプ氏と電話会談=新華社(REUTERS)
中国国営新華社通信によると、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が24日、電話会談した。習氏は「台湾問題における中国の原則的立場」を説明したという。
米中首脳が電話会談 「台湾問題の原則的立場」説明―新華社(時事通信)
トランプ大統領は政治的に行き詰まりつつあるため新しい成果を必要としている。つまり中国やロシアのような大国と直接渡り合って「成果」を出したい。習近平国家主席は4月に北京で会いましょうとオファーを出しトランプ大統領は嬉々としてこれを受け入れた。北京政府が積み重ねてきたカードは高市政権をアメリカと切り離す事にゴールがあったのかもしれない。
President Donald Trump, posting a readout of his “very good” call with President Xi on Monday morning, said he’s now accepted an invitation from the Chinese president to visit Beijing in April and that Xi will come to the U.S. for an official state visit later in the year.
Trump admin live updates: Trump accepts invitation from Xi to visit Beijing in April(ABCニュース)
“President Xi invited me to visit Beijing in April, which I accepted, and I reciprocated where he will be my guest for a State Visit in the U.S. later in the year. We agreed that it is important that we communicate often, which I look forward to doing,” Trump wrote on his social media platform.
トランプ大統領はウクライナ問題でもロシアの代理人のような動きを見せている。今回の北京訪問の約束でトランプ大統領が日本を支援する可能性はかなり低くなったといえるだろう。
しかし日本の保守系は感情的に慌てふためき「ここは冷静になるべきだ」と平静を装うしかない。政策を立案したり政策提言をする能力を持つ集団(シンクタンク)がないからである。
と、時事通信で興味深い記事を見つけた。それがハドソン研究所の提言だ。高市総理の言っていることは間違っておらず堂々と主張を貫くべきだと言っている。
冒頭「インプットとアウトプット」の話をしたのはこのハドソン研究所の記事につなげるためである。ハドソン研究所は政策立案ができない高市政権とその背景にいる保守に代わって「アメリカ合衆国に説明しやすいパッケージ」を作ってやっている。そしてご丁寧にそれを広める手伝いまでしているのだ。
とはいえ言っていることが完全に理解できたわけではないので例によってChatGTPにサマライズしてもらった。ハドソン研究所は日本を影で操っていると言われることがあるのでまずは「陰謀論」から話を始めた。
ハドソン研究所は保守系・現実路線のシンクタンク。共和党に直接命令を下すわけにも行かないので同盟国への政策提言で自分たちの立場を強化する戦略を取っている。特にトランプ政権は非伝統的(これはウクライナに対する提案が共和党の重鎮に反発されたことからもよく分かる)なので特にそれが重要になる。
ハドソン研究所の強みは「日本の政治家がそのまま引用できる形」で政策パッケージをまとめる事ができる点にある。今回はフィンランド化というフレームワークを使ってパッケージ化している。
日本の保守が安全保障について中核的な概念を語ることができないのは、あるいはハドソン研究所のようなシンクタンクに大きく依存してしていたからなのかもしれない。また、安全保障が陰謀論的に語られることが多い理由も説明ができる。
例えば今回「フィンランド化」というフレーズを直接引用したとしよう。おそらく伝聞で話を聞いた日本の政治家はその根拠を説明できない。特に安倍総理はその傾向が顕著だった。日本有事は台湾有事というフレーズを高市総理が直接継承してしまったことから高市総理もハドソン研究所の消費者に過ぎない可能性がある。
今回の特徴はケネス・ワインスタイン日本部長が直接出てきて時事通信というメディアで直接メッセージを伝えている点にあるといえる。これまで非公式の会合などであたかも安倍総理が直接発想しているような印象を作ってきたのだが、様々な批判にさらされるSNS時代には逆効果だ。
保守の人々はこの記事を参考にして議論を組み立て直すべきだろう。仮に日本からのプッシュバック(押し返し)がなければトランプ大統領は中国に接近し日本は本当にはしごを外されることになる。
さて冒頭に長い前置きを置いた理由をもう一つ挙げたい。コメント欄で興味深いコメントを貰った。AIの要約を「AIが日本人が変化を受け入れるように強制している」と懸念を表明している。
前回のChatGPTの会話は「日本人は責任の所在を曖昧にしたまま意思決定をすることが多い」ので「何かを変えるためのコストが高くなり」「必要な変化が遅れる傾向が強い」というものだった。
これは単に構造を解析・整理しているだけだ。
しかし日本人はここに「AIという権威の高いものが変化を押し付けている」という匂いを嗅ぎ取ってしまう。構造に対する理解をせずに結果をそのまま受け入れている上に集団圧力にも弱いため「それが悪いと責められた」と考えてしまうのだ。
例えば今回のハドソン研究所の提言も「それを必ずしも受け入れるべき」ということにはならない。日本の国益に沿っているならば必要な対価を支払ったうえでそれを利用すべきである。
しかしながら日本人はそもそも自分たちがこれまでどんな意思決定をしてきたのかを極めて曖昧にしか理解していないため、自分たちの利益のために能動的に行動するということができない。デメリットを提示されただけで不安になり抵抗してしまうのだ。
つまり今回の話も
- 非伝統的(同盟にこだわらない)トランプ大統領と日本の影響力拡大を抑止して地域への影響力を強めたい中国が結びつこうとしており、日本は何らかのプッシュバックを必要としている
というだけの話であり、どう行動するかの意思決定は日本人に委ねられている。
当ブログがいいたいのは
- 単に情報を整理して、できるだけ精密な処理をしたうえで、必要なアウトプットを取り出すべきですよね
ということだけなのである。
