アメリカの名門ブラウン大学の狙撃事件とMITの教授殺害事件は当初別々の事件として扱われていた。結果的にはポルトガル国籍の男が亡くなって発見されるのだが、その過程で「間違った人物」が特定されネット攻撃されていた。恐ろしいのはおそらくこれからだろう。根拠のない憶測で個人を追い詰めたのだから集団で訴訟リスクにさらされることになる。
ブラウン大学もMITも名門大学なのでこの事件の衝撃は大きかった。結果的に容疑者はMIT教授の元同級生だったということがわかっている。職業は未だに明らかになっておらずアカデミックな世界から遠ざかったあとに不遇な時代を過ごした可能性がある。つまりもともと成績では格下だったのにMITという名門校の著名な教授に上り詰めた被害者を嫉妬した可能性があるわけだ。
別の同級生、ヌノ・モライス氏はポルトガルのプブリコ紙に対し、バレンテ容疑者とラウレイロ氏はISTでトップクラスの学生だったが、二人の性格は全く異なっていたと語った。モライス氏によれば、成績ではバレンテ容疑者が上だった。物事を理論的に考える傾向が非常に強かった同容疑者に対し、ラウレイロ氏はどちらかと言えばおっとりとした性格で、より応用的な科目に関する才能があるように思えたという。
米大学銃撃犯、元同級生が振り返る人物像 「優秀」だが傲慢で気難しい(CNN)
一方でブラウン大学の学生が狙われた理由はよくわかっていない。
しかしながら容疑者確保は別の人達を大いに震撼させた。
実はネットではパレスチナ系の同性愛を公言しているブラウン大学の関係者が「容疑者認定」されていた。Axiosによるとムスタファ・カーブーチ(Mustapha Kharbouch)氏はプロファイルの消去を余儀なくされ「悪夢のような数日」を過ごしていたという。
この事件はMAGAと呼ばれる人たちが
- 自分たちの物語を証明してくれるような「事実」を常に必要としている
ということを意味している。
裏返せばそれだけ不安定な運動体であるということになる。特にトランプ大統領の発言が揺れている今、その不安程度は増していると考えていいだろう。
一方でアメリカでは別の「脱トランプ」の動きも起きている。
それが意識的な部族化だ。今回のムスタファ・カーブーチ氏の誤認問題はRedditでも語られているのだが、人々が政治的ラベルをかなり細分化している事がわかる。ファッションも政治的なラベリングも彼らにとっては自分とは何かを示す材料になる。「普通が存在せず」「平凡」であることを嫌うアメリカならではの現象と言えるかもしれない。
実はこうした動きはファッショントレンドにも及んでいる。これまでのようにブランドに依存するのではなく「ライフスタイルを意識的に選択すること」こそが社会的成功の証であるなどと語られているのである。
一方でMAGA共同体は運動体を維持するために物語の骨格に沿った悪役を必要としている。その過程で「みんながそう言っているから自分も主張して構わないのだ」という群集心理が働く。結果的に彼らは名誉毀損などの訴訟リスクにさらされることになるだろう。

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