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総理大臣になれない 高市早苗氏は悲劇の総裁になるか

8〜12分

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現在の日本政治には巨大な像がいる。日本は30年間成長していないが政治は何も手を打ってこなかったという事実である。このため公明党の連立離脱をきっかけにした政局ではそれぞれの政党が事実を自分たちの都合のいいように解釈、支持者たちはそれぞれ異なる「事実」を主張するためそもそも議論がかみ合わない。

今回は高市早苗新総裁の虚実について考える。高市早苗新総裁はしばらく総理大臣になれないかもしれない。選挙をやって勝てばめでたく総理大臣になるが負ければ単なる総裁のままで任期を終える可能性がある。ただそうは言えないのでいろいろと「独自の説明」を試みている。

高市新総裁は自民党党内人事を通じて明確な「保守回帰」シフトを見せた。一般有権者から見れば単なる右シフトだが、連立パートナーの公明党には違って聞こえた可能性がある。創価学会の指導者は戦前国家神道に弾圧され獄死者を出している。

高市自民党は国民の判断を仰がないうちに「思想的な転回」を図っているが宗教論争は面倒だと考えるマスコミは決してこの領域に触れようとはしない。

「経済そっちのけで宗教イデオロギー論争などやっている場合かという問題はあるが、これは単純な足し算引き算問題なので実際に選挙をやってみるのが手っ取り早い。おそらくこれまでこのような枠組みの世論調査は行われていないだろうから実際に試してみるしかない。MAGAもアメリカでは本流化しているのだから保守の望みどおりに国家神道的なイデオロギーが受け入れられる可能性はある。

  • 足し算
    • 国家神道的序列を取り戻したい保守系の人々
  • 引き算
    • 男性中心社会への回帰を嫌う女性有権者
    • 弾圧経験を持つ仏教系の信者

しかしながら自民党の中からも「総理大臣・総裁を分離すべきだ」という声が出てきた。

 政治とカネの問題を巡り「自民がのらりくらりと引き延ばし、不記載議員の一人を要職に就け、堪忍袋の緒が切れたのだろう」と指摘。首相と総裁が異なる「総・総分離」で国会を当面動かす案や、高市氏が辞任し総裁選をやり直す案に言及した。

高市総裁の対応に問題 自民・船田氏「公明の怒り当然」(共同通信)

つまりそもそも首班指名を先延ばしにして補正予算と予算を通してはどうかという声が出ている。

これは高市総裁にとってはかなり不利である。

石破総理は自民党の政治とカネの問題について語る必要はない。それは党務であり「総裁のお考え」だからだ。一方で公明党も野党連携に乗り人気のある政策をつまみ食いすればいい。ただし高市後を想定して野党の首班指名には協力しない。コウモリ戦略・ピボット戦略・ゆ党戦略と名前はどうでもいいのだが悪いものはすべて自民党に押し付けたほうがトクなのである。

共同通信は船田元氏個人の考えを紹介するのみだが実は高市早苗総裁も「しばらくは政府の鍵を渡してもらえないかもしれない」と気がついたようである。

ただしそうは書けないので「これまでの枠組みを大胆に見直した」と説明している。政調会長はまず政府の枠組みが決まってから「残った人」で自民党の政策を組み立てなければならない。それができないので「まず小林鷹之氏が考える最高の布陣」を作るのだと言っている。

物はいいようだ。

さらに税制調査会から「インナー」を引き剥がした。保守色が強い人々で布陣を固めるのだが、財務省と調整ができない。つまり「インナー」が持っているこれまでのノウハウが活かせないのである。これを説明するために「政府主導で作った政策に合わせて財務省が調整すればいい」と言っている。財政拡張主義に賛成する支持者たちは大喜びだろう。

こうした構図は民主党政権でも見られた。行政仕訳の嵐が吹き荒れる中財務省は民主党に協力しない。そして財源で行き詰まって初めて「やはり消費税しかないですね」と野田佳彦氏の耳元で囁いた。結果的に民主党は「政治的自滅」の道をひた走ることになる。

言って聞かせて言うことを聞かないならば「じゃあお前がやってみろよ」で失敗させればいいということになる。高市陣営が失敗しないためには金融市場を熟知した税制の専門家をどこから連れて来るしかない。

高市総裁はまだ経済政策を全く打ち出していないが、過去の発言から勝手に財政拡張的だろうと期待されている。日銀の利上げは当分行われないだろうと金融市場は勝手に判断し、円キャリートレードを復活させた。

このあたりは「政治的説明」が一切作用しない世界で、トラス・イギリス首相もトランプ・アメリカ合衆国大統領も金融市場には勝てなかった。