高市執行部と維新の間で政策協定が結ばれた。公明党が抜けたことで右傾化が進んでいる。今回はFNNが紹介した全文を読みつつ気になったところを抜き出してみた。
もともと大阪維新はアメリカ型の地方分権を輸入し改革政党を偽装しながら大阪への利益誘導を図ってきた政党だった。今回、維新と高市執行部が結びついたことでこの傾向が更に強くなった。高市氏は地方の支持を捨てて(地方都市を含む)都市の無党派に頼る政権運営を行うと決めたのだろう。一度決めたからにはやり抜いてもらいたい。
今回の基本政策は都市の荒廃を背景に、精神論を交えつつ日本を純化する内容になっている。日本を弱くしてきたのは軟弱なリベラルと医療に頼り切りになる高齢者だとの前提を置き「それを取り除けば」日本は再び強くなれると謳っている。国家が一方的に定義さえ見直せば高齢者は誰でも働くようになるらしい。
(五)年齢に関わらず働き続けることが可能な社会を実現するための「高齢者」の定義見直し
【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)
明治維新期の日本は国民を教育し産業を育成しなければ西洋に飲み込まれるだろうと考え、富国強兵政策を取った。そのアプローチは極めて実用的で外国から技術者を呼び寄せて新しい産業に学んでいる。
ところが今回の政策集を見ると、どう具体的に日本を強くしてゆくのかと言うコンセプトは全く書かれていない。しかしながら経済成長路線を放棄したわけではない。国家の投資があれば自ずと国家は再成長するであろうと書かれている。これは戦前の日本政治が行き詰まり実用型から精神論化にシフトしていったのに似ている。
また、両党は、国民の生活が経済成長によって向上されることの認識を共有する。そのために、責任ある積極財政に基づく効果的な官民の投資拡大を進めつつ、肥大化する非効率な政府の在り方の見直しを通じた歳出改革を徹底することによって、社会の課題を解決することを目指す。
【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)
少子高齢化や地方からの人口流出などについての詳細な記述はなく「これまでのような無駄な補助金」を「大阪への投資(維新は否定しているが)」に振り向ける内容。実際には日本全体を支える産業基盤はなく海外に流出した投資を日本に呼び戻す方策も書かれていない。またアメリカ合衆国で起きている同盟基盤の変質についても何も書かれていない。
薄く広く地方にばらまいても自民党は選挙に勝てなかったのだから、これからは地方に頼らずに都市の無党派に頼ってやってゆくということなのだろう。そのために利権は大阪に集中投資する。
ただ、ラストベルト化した都市の無党派層の受け皿となる政党ができたのは良いことなのかもしれない。切り捨てられた地方組織は当然自民党を支援しなくなる。また高齢者も今後は「無駄な医療費を貪る悪者だ」とされることになるのだから自民党を応援しにくくなるだろう。
するとラストベルト化した状況を精神論で乗り切ろうとする政党とリベラル・地方の組み合わせの2つの勢力が作られることになるはずだ。
つまり日本にはラストベルト化し右傾化した都市とその他という対立構造が生まれることになる。
今回の動きについて立憲民主党はどう考えているのだろう。まず衆議院予算委員長に決まりそうな枝野幸男さんから。「いや」という表現を使っている。つまり政治とカネの問題は「嫌がらせ」ということになる。つまりどちらか相手がより嫌がる方を選びたいということになる。
次に参議院の蓮舫さん。物価高と裏金が対置されている。政治家が物価高で有権者に報復するならば嫌がらせを強めようという考え方だ。
これまではどちらかといえばこれらの精神的な考え方を批判的に扱ってきた。ところが高市・維新連合は「日本が成長しないのはリベラルと高齢者のせい」と言っているわけだから当然「それに対する報復的な嫌がらせ」に価値が生まれる。こうしたつぶしあいはすでにアメリカ合衆国では連邦議会の閉鎖に発展しており政治的には大きなアジェンダになっている。成長戦略が導き出せない全体的にラストベルト化した日本の政治はわかりやすい感情的な報復合戦に移行してゆくだろう。
立憲民主党は自民党に対するピコピコハンマー(音はするがたいして痛くない)なので立憲民主党はまずはこの「伝統的な」戦略を採用するのだろう。
