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立花孝志氏の逮捕に陰謀論が広がる?

7〜11分

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産経新聞が「死者の名誉毀損立件に波紋「斎藤知事不起訴の批判回避」広がる陰謀論 N党・立花容疑者」と書いている。ただし具体的な陰謀論に中身は書かれておらずXのトレンドワードにも目立った動きはない。陰謀論の要件が欠けているのである。なんだこれでは単なるクリック詐欺だと感じた。

産経新聞の記事はYahooニュースにも掲載されておりリンクは短く立花容疑者を逮捕 広がる陰謀論となっている。しかし記事には特に具体的な陰謀論が展開されているわけではなく「何だクリック詐欺か」と言った印象。

しかしながら今回の現象は逆にSNSの陰謀論が何を背景にして広がるのかを理解するうえでは良い教材になるのかもしれない。

アエラに陰謀論についての記事が出ている。鳥谷教授は「陰謀論は、何か大事なものが奪われるという感覚、あるいは他人に比べて自分が著しく損をしているという感覚から生まれてきます。これらの感覚を「剥奪感」と呼びます。」定義している。

つまり陰謀論は相対的剥奪感を持った人たちがそれを取り戻そうとする取り組みということになる。相対的剥奪感を持った人たちはそもそも自分たちで権利主張ができず陰謀論のロジックを自分で作り出すこともない。だから物語の生産者と布教者を探している。

立花孝志氏は彼らの期待に応えるためには物語といっしょに殉教する必要があった。

しかし、立花孝志氏は真実相当性については争わず被害者遺族に示談を申し出て断られている。

仮に立花孝志氏をエスタブリッシュメントと戦う救世主だとするならば、彼はあくまでも無罪を主張し続けなければならなかった。あるいは「すんでのところ物語の犠牲者にならずにすんだ」と言えるのかもしれない。

立花孝志氏は今の政治社会が「あなた達のためになっていない」と主張するところまでは成功したが、その後に「取り戻す」仕組みを作ることはできなかった。このために実際に何かを取り戻してくれる別の存在が必要になる。そのために利用されたのが斎藤元彦知事だった。いわゆる二馬力選挙だ。

その後立花孝志氏は千葉県知事選挙への立候補の可能性を模索する。しかし熊谷知事は議会と対立関係にないため特に応援は必要としていなかった。結果的に二馬力選挙を断られている。このあたりがおそらく立花孝志氏の限界だったのでないだろうか。

今回の逮捕劇を見ていると兵庫県警の組織防衛的な側面は否定できないように思える。竹内氏の不幸な選択と警察の捜査が結びつけられた。このままでは警察に批判が向かいかねなかったため、捜査をしていたという事実はないと異例の反論が行われている。また伊東市長選挙を控えており選挙戦が始まると立花孝志に対する言論をコントロールできない可能性もあった。

おそらく立花孝志氏の「変節(謝罪)」について割り切れない思いをする支持者は多いのだろう。しかし彼らは自分で陰謀論のロジックを組み立てられない。結果的に「何かが怪しい」という漠然とした感覚は持ちながらもそれを形にすることはできずにいる。

しかしながら当然陰謀論の元になった相対的剥奪感がなくなったわけではない。むしろこの相対的剥奪感が権力構造に向かうという奇妙な展開を見せつつある。

立花孝志氏の支持はその後、参政党と国民民主党の支持に向かった。しかしこれが票になると見抜いた「鵺のような政党」である自民党は小泉進次郎氏ではなく高市早苗氏を総裁に指名している。

今後相対的剥奪感は過激な言論を通じて高市総理の発言と意思決定をある程度縛り付けることになるだろう。すでに台湾有事問題で中国との関係が悪化しつつあるが「外国の圧力に負けて発言を撤回すべきではない」との声が出ている。

つまり物語を必要としている人たちはまだ多数残っているのである。