Xを見ると枝野幸男氏と小西洋之氏がモメている。発端になったのは国会の高市早苗総理に対するヤジのようだ。だが議論を見ても一体何をモメているのかがさっぱりわからないのでChatGPTに聞いてみた。
何をモメているのかはわかったが、この議論が国民生活にどんな役に立つのかはさっぱりわからなかった。
だが、この対立を理解すると立憲民主党という政党が役割を終え消滅しようとしているという結論が得られる。
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政党の設立趣旨が国民から支持されなくなった立憲民主党
もともと安倍総理に憲法を守らせたかった
そもそも立憲民主党は安倍総理大臣が憲法を無視した政治を行っているという前提のもとに2017年に作られている。つまり立憲民主党は憲法が書かれたとおりに政治を行いたい政党ということになる。この枠が守られなくなった時点で立党の趣旨が失われる。
ではそもそもなぜ安倍総理は無理な解釈改憲に踏み切ったのか。オバマ政権下で安倍政権にかなり強い圧力をかけた可能性がある。
オバマ大統領は口では「外交主導・平和主義」を掲げてはいたが政治的に敗北し主導権を共和党に握られてしまった。民主党は「軍事力」を人質に共和党は「福祉」を人質にした経費削減議論が起きる。これを背景としておそらくは水面下で何らかの働きかけが行われていたものと類推できる。
安倍政権は2014年に解釈改憲を行ない2015年にこれに基づいて安保法制の改定を行っている。この結果「安倍総理は立憲主義に反している」とする反安倍運動が盛り上がり、結果的に立憲主義を擁護する立憲民主党が枝野幸男氏らによって作られた。
当時は小さな政党で賛同者も少なかったと記憶している。
そもそも憲法と日米安保がズレている
戦勝国(連合国)は日本が再び戦争をしない国になることを求めた。このため当憲法は連合国の当時の理念を引用して作られている。
ところがその後にアメリカ合衆国は東西冷戦構造に対応するために大きな路線変更を余儀なくされる。こうして作られたのが日米安保だ。これを「できるだけ日米が対等になる」形に修正しようとしたのが1960に改定された新しい日米安保条約だった。
つまり憲法と日米安保にズレが生じた。
不安に支配される憲法運用
ChatGPTに小西洋之氏が主張する政府の47年見解について聞いてみた。解釈改憲の背景に「不安」があったことがよくわかる。つまりもともとあったズレが解消されることがなかったばかりか「不安」に基づいて運用されてきた。
巻き込まれ不安があった昭和47年
沖縄統治に失敗したアメリカ合衆国は日本に沖縄を返還し基地利権だけを温存しようとした。ところがこのままでは日本がベトナム戦争などの有事に巻き込まれる可能性がある。日本が巻き込まれることを恐れた田中角栄内閣はアメリカの作戦に日本が参加することはないと国民に説得する必要があった。当時の見解はそもそも憲法を純粋に解釈した結果ではなく「不安」に基づいて作られていると考えるのが自然だろう。
見捨てられ不安が強まった2014年
安倍政権はオバマ政権からの強い圧力を受けていたと類推できるが、背景にはアメリカに対する見捨てられ不安があったはずだ。そこでこれまで厳しく解釈されてきた集団的自衛権の「例外的容認」という方向に舵を切る。
現在はトランプ大統領のディール志向に不安を募らせる
では現在はどうなっているのか。おそらく日本人が今抱えている不安はトランプ大統領が経済と軍事をごちゃまぜいして短期的ディールを得ようとする「ディール志向」に怯えているのではないか。トランプ大統領はNATOなどに対してGDP比3.5%の負担を求めているが、高市政権は2%の調達にも苦労しそうである。
安倍政権特有の「ガイアツ」を利用できないという問題
つまり「自民党政権が持っている不安の質が変わった」だけで実は具体的な要請がアメリカ合衆国からあったわけではないということになる。このため安倍政権は外圧を利用した憲法改正もできず政府見解を変えることもできなかった。このため形の上では昭和47年見解を温存しつつそこに迂回路を作ることにした。
高市政権はトランプ大統領から明確な圧力を受けるものと予想されている。つまり安倍総理よりは政策が進めやすい。もちろん日本人の日々の暮らしは安倍政権が先送りにしてきた政策の結果であるコストプッシュ型インフレを受けて日に日に貧しくなっている。このため、経済的な制約は安倍政権当時よりも厳しいものになっていると言えるかもしれない。
アメリカ合衆国も特に日本に具体的な期待をしていたわけではなかった
オバマ政権がアメリカ議会状勢を受けて日本に圧力をかけたというのは仮説に過ぎない。しかし現実にオバマ政権は日本が集団的自衛権の行使ができるようになった=いざというときにアメリカの補完勢力として稼働できるようになったという事実に満足してしまい、実際に「違憲の疑いのある限定的集団的自衛権」が行使されることはなかった。
結果的に立憲民主党が指摘したような「違憲の活動」が行われることはなかったわけである。
そもそも小西洋之は何を騒いでいるのか
小西氏は間違ったことは言っていない
状況の前捌きができたところでようやく小西氏が何を騒いでいるのかをChatGPTに聞いてみる準備ができた。
枝野幸男氏は現状は違憲であるが認識を新しくしたことで条文そのものは問題がないという新解釈に達することができると言っている。ところがここで小西洋之氏はそんな新解釈は「立憲民主党の設立趣旨から言って認められない」と反論する。そしてその根拠として政府見解が昭和47年と2014年で違っている点を上げている。
確かにこの点だけを照らせば小西洋之氏が言っていることは間違いがない。
しかし小西氏の意見に従うと日本人はさらに不安になる
しかしながら小西洋之氏の見解を採用するならば、当時オバマ政権を納得させその後既成事実化した集団的安全保障の限定的容認を撤回する必要が出てきてしまう。志位和夫氏も立憲民主党は立党の原点に立ち返るべきと言っている。これは安保法制が違憲であり無効であるという立場を堅持しろという意味になる。
しかしながらここで「日本がオバマ大統領を納得させるためについた嘘」をトランプ大統領に説明できるのか?という問題が出てくる。どこまでもこれは「不安」問題なのだ。
憲法9条も日米安保も「お守り」のように扱われているということがわかる。だからこの問題は神学論争化しやすい。お守りの功徳について話しているだけだからである。
トランプ大統領が高市早苗氏を気に入ったことが大きなニュースになる国
日本は常にアメリカ合衆国に対してアンビバレントな気持ちを持っている。アメリカ合衆国に巻き込まれたくはないがかといって見捨てられたくないし機嫌を損ねたくない。
このためには総理大臣が常にアメリカ合衆国の大統領と「仲良く」していることが重要とされる。高市早苗氏は安倍総理の後継であることを強く打ち出しトランプ大統領に気に入られたことがニュースになった。
これは日本人が持っている強い不安と自信のなさの現れだろう。お守りの効力は少なくとも後数年は保たれると信じたい日本人が多いのである。
立憲民主党は何に失敗したのか
ここまでは神学論争的な安保法制について議論を進めてきた。最後に立憲民主党がなんのために存在するのかについて考えてみよう。
そもそも安定した地盤がないところにお城を作った
第一の問題は日本の再出発に関わる問題だ。憲法と日米安保がズレた状態になっている。安定しない地盤の上に建物を建てているようなものだ。これを安定させるためには憲法を改正しなければならないが立憲民主党の中には憲法9条に決して指を触れてはならないという人々がいる。
憲法9条が持っている「平和の精神」に指を触れてはいけないと言うなら話はわかるが「条文を変えられない」となると話が全く異なってくる。
メリット・デメリットが明確にできなかった
安保法制の違憲部分は結果的に稼働することはなかった。仮に違憲部分が稼働しこれが何らかの弊害(人的被害や経済被害)をもたらしていれば「やはり限定的容認は間違いだった」と考える人も出てきたかもしれない。有権者は政治的プロセスをあまり大切にせず結果にフォーカスしがちだ。
枝野幸男氏が変節したのは原理原則を守っていては国民の期待に応えられないと気がついたからだろう。しかしおそらく国民は平和主義にたいした関心は持っておらず、どの政党に投票すれば自分たちの暮らしが良くなるかに興味がある。
立憲民主党がこの期待に応えるためには、今の自民党政権に代わる経済政策を打ち立てる必要があるが霞が関のシンクタンク機能が使えないため、自分たちの力で経済政策を立てる必要があるだろう。
ピコピコハンマーという自分たちの役割を見誤った
とここまで考えてきて「そもそも憲法についてさほど興味がなさそうな日本人がなぜ立憲主義を擁護するのか」という問題が出てくる。これを考えてゆくと「細かいことはわからないが、安倍総理はなんか不誠実そうだ」と思いたがっている人が多いのではないかという気がする。
ところが安倍総理はいなくなってしまい攻撃対象がなくなった。そこで代わりに持ち出されたのが政治とカネの問題である。政治とカネの問題が大きく取り上げられるのは、おそらくは自民党は自分たちに十分に分け前を与えず「誠意がない」と証明するためであって、とくに誰が政党を支えるのかという議論には興味がないいのではないかという気がする。
立憲民主党の役割はピコピコハンマーである。これは大きな音を立てはするがたいして痛くない政府に対する「制裁」だ。
国民・有権者は分配が先細ることに漠然とした不満を持っている。ただし体制を大きく変えるようなリスクも負いたくない。そのために大きな音を立てるピコピコハンマーを振りかざし政権政党に懲罰を与えたい。国民が期待しているのは経済政策でありインフレに移行した経済に対する痛みを誰かが助けてくれることである。
これをわかり易い言葉で説明したのが蓮舫氏だ。繰り返し「実利=物価高」と「政治とカネ=自民党の不誠実さに対する懲罰」を重要課題だと言っている。
総括
立憲民主党は現在ピコピコハンマーとしての役割を期待されている。これもおそらくは現行憲法と選挙制度の欠陥の一つ。つまり有権者が自分たちの政策を実現してくれる立法者を選べずなおかつ一度選んだ政党が国民本位の政策を実行してくれなくてもそれを抑止することができない。だから代わりに懲罰的政党を求めるのだ。
これはおそらくは立憲民主党が提案政党として独自に経済政策を作る機能を持たなかったからである。しかし自らをピコピコハンマーとは認めたくないため「自民党は憲法を蔑ろにしている」という別の懲罰理論を持ち出した。
しかしながらこの懲罰理論を純粋に遂行すると国民が持っているアメリカ合衆国に対する根深い不安をを払拭することができない。結果的に立憲民主党は自縄自縛に陥り内部分裂しかけているということになる。
安倍総理が不在になるとこの懲罰対象は立憲主義から「政治とカネ」の問題に移った。
解決策は3つ
結果的にこの文章の結論は次のとおりになる。
- 立憲民主党は自ら経済シンクタンクを持ち政府や自民党に代わって政策立案できる政党にバージョンアップする
- ピコピコハンマーとしての役割に徹し、難しい原理原則論は金輪際持ち出さない
- 内部矛盾が解決しないのであれば潔く政党を分割する

“立憲民主党分裂消滅危機 小西洋之と枝野幸男は何をモメているのか” への1件のコメント
[…] 昨日気散じに書いた立憲民主党の内紛の観察記事と合わせると、有権者は今の政治に漠然とした不満は持っているものの、自発的に問題解決に結びつけようという気持ちはなく、誰かに煽られなければ政治に参加しないという独特の政治風土が生まれているものと分析できる。 […]