共同通信が「総裁選要求議員の公表検討 自民選管、厳正な対応重視」という記事を出している。非常に不思議な記事だ。厳正な対応とは「氏名の公表」である。これにより石破おろしを萎縮させる効果があるものと考えられる。つまり「石破おろしに加担するものの名前を晒しますよ」と言っている。
当初「石破陣営が名前を晒す戦略に出た」というタイトルにしていたのだがタイトルを変更した。選挙管理委員会と石破政権の関係は必ずしも明確ではないからだ。つまり、逢沢さんが石破おろしを抑制する動機がよくわからない。
当ブログは国際ニュースと国内ニュースをともに扱っていて、国際ニュースはアメリカのものが多い。アメリカ人は聞かれもしないのに自分の立場を公表し自己宣伝したがる文化である。議員たちはこぞって「自分の主張」を展開し、芸能人の中にも「自分はトランプ大統領を支持する」など立場を明言する人がいる。
ところが日本人はやたらと隠したがる。企業献金問題でも「企業名を公表されると献金してくれる人が減る」などと主張される事が多い。
「隠したがる文化」はSNSの匿名志向にも現れている。SNSで名前と立場を晒すことは「危険だ」と考えられている。なぜ実名を出さないかを聞かれると人はあれこれ理屈をつけるのだが「そもそも名前を晒して自分の立場を表明するのは危険だ」と考えているのではないかと思う。同調圧力が強く個人が意見を言うことで損をする機会も多い。
仮に総裁選前倒しが過半数に到達しなかったとする。するとリストは「石破おろしに加担したものの罪人リスト」ということになる。石破政権が続く限り造反者は決して優遇されることはないだろう。
そう考えると表向き公平な選挙を謳っている選挙管理委員会はかなり石破総理側なのではないかと考えたくなる。ではその理由は何なのか。
石破おろしに加担するなら切腹覚悟でというのは逢沢委員長の発言だったようだ。では逢沢一郎さん廃止場さんと懇意なのか。
これについて解説している人はおらず唯一「逢沢さんではなく森山さんの意向だろう」という説が見つかった。逢沢さんが石破さんを守る動機がみえないから森山幹事長を理由にした解説になっているのかもしれない。
時事通信は「選挙対策委員会が総裁選に前のめりの姿勢を見せれば倒閣勢力だと見られてしまう」との当事者の感想を書いている。意外と政局のような戦略的なものではなく「恨まれたくない」という気持ちの現れなのかもしれない。
裏では足を引っ張り合いながら、表向きはミンナナカヨクということになる。陰湿この上ない。だが石破総理はかつて麻生おろしに参加したことがあるから麻生氏から恨まれているなどという話を聞くにつけ、自民党の「恨み」には持続性があると感じる。
いずれにせよ今回の内紛は自民党のコップの中の嵐であって有権者の明日の暮らしにはなんの関係もない。意思確認が長引けば長引くほど「自民党は有権者のことなど考えていない」という印象が残る。一方で恨まれることを恐れた議員たちが沈黙しても「今までの内紛はなかったこと」にできない。そもそも自民党は何を反省しているのか?と言うことになるからだ。
今回のもう一つの特徴は「実は誰も責任を取りたくない」という新しい傾向。責任を押し付け合う「逆権力闘争」が起きている。
一部では菅総理主導で森山幹事長が維新とのパイプづくりを進めているとされていたが維新は「減税がない議論は認められない」「交際のない婚約はない」として早期の連立入りにはきわめて否定的な考えを示している。この構想でお神輿に担がれる予定になっているのは小泉進次郎氏だが「世間は冷ややかに見ている」として総裁選にはあまり乗り気ではないようだ。
トランプ関税対応など面倒な課題が山積する中でどう立ち回るのが得なのかを考える人は多いが、自分が火中の栗を拾おうという人はいないというのが正直なところなのかもしれない。
いずれにせよ自民党で逆権力闘争(責任の押し付け合い)が起きるというのは前代未聞。政治評論家やジャーナリストの人たちはさぞかし戸惑っているのではないかと思う。
