政府が実質賃金上昇を政策目標に掲げた。これを見て「石破総理にはやはり経済政策は無理だった」と感じた。大学生レベルの基本的な経済知識を持っている人であれば簡単に理解できるが、Yahooニュースのコメント欄には「国債を発行して消費税を減らせばいいだけだ」とのコメントが溢れていた。現在の政治言論状況は大学生レベルの経済知識を持っていないことがわかる。
このエントリーは「マクロとミクロ」の違いを説明するために、コメの価格が下がらない理由とその解決策(Amazon)を説明する。
賃金の話をしているのになぜコメの話をするのだろうか?と考える人が出てくるのではないかと思う。
テレビ朝日がコメの価格が下らない理由について調査した。
生活必需品ほどなにかのきっかけで価格が上昇しやすい。そしてその価格分を吸収しているのは悪徳農協でも悪徳スーパーでもなかった。中間業者だったのだ。しかし中間業者の儲けについてテレビ朝日は調べることができなかった。流通経路が複雑すぎるのだろう。
番組は「中間業者がボロ儲けしている」という結論にはしていなかった。ネットワーク上に複雑な流通経路が形成されているため融通し合っているために値段が上がっている可能性もある。コメの価格を平準化するためには複雑な流通経路を整理して価格を透明化することが必要だということになる。
前回の議論では「市場構造を変革せよ」ということだ。
岸田前政権は、労働市場改革などを通じて労働生産性上昇率を高め、それが実質賃金上昇率の向上に自然とつながるような、「構造的賃上げ」を掲げた。石破政権も、成長戦略、構造改革を通じた生産性向上に目標を据えるべきだ。実質賃金上昇率の向上は、その成果として結果的に実現されるものである。
政府の実質賃金1%目標は妥当か?(時事通信)
ではそんなことはそもそも可能なのか。これを民間で実現した業者がある。それがAmazonだ。
Amazonは巨大な物流センターを各地に立ち上げて小売の価格を透明化した。結果的に消費者は価格と品物を比較しながら買い物ができるようになった。つまり、政府の政策に頼らなくても民間事業者がマクロ的な市場改革を起こすことは十分に可能であるという証拠になる。
だがしかしと思う人も多いのではないか。
確かにAmazonの登場によって潰れた店は多い。大手家電量販店は他の仕事を増やしてかろうじて生き残ったが街の電気屋さんは淘汰されようとしている。街の本屋さんや文房具屋さんもなくなった。また金物屋さんなども競争に敗れつつある。
いわゆるデフレ経済下では価格重視の顧客が増え「余計なサービスは要らない」という人が増えた。
最後に取り残されるのは高齢者だ。やすいものを求めると同時に「きめ細やかな配慮」を要求する。国内パソコンメーカー・家電メーカーなどは高齢者向けのサービスを提供していたが高齢者の要望がエスカレートしたこともあり結果的に国内市場から撤退していった。伝統的に日本人は「これをサービスしますよ」という言葉を「無料である」と解釈する。
Amazonは小さな製品を作る企業にとってはチャンスにもなっているが既存の中小零細業者にとっては脅威でしかない。
つまり、中小零細企業に支援されている政党は構造的にこの問題に対処できないのである。自民党は「中小零細」への優しさを優先する分配型政党なのだから、原理的にこの問題に対処できないことになる。
自民党が次世代型の政党に生まれ変わるためには、現在の状況のどこに問題があるのかを理解する必要があったが石破総理はこれらの対策に失敗している。
本質的に理解できていないのか、あるいは党内調整がうまく進まなかったのかはわからない。しかし無能なのか無力なのかは議論としてはあまり重要ではなく「やっぱりできなかったなあ」ということだけが重要だ。

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