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石破総理にはやはり無理だった(1/3) 政府が「実質賃金上昇」を政策目標化

6〜10分

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政府が実質賃金上昇を政策目標に掲げた。これを見て「石破総理にはやはり経済政策は無理だった」と感じた。大学生レベルの基本的な経済知識を持っている人であれば簡単に理解できるが、Yahooニュースのコメント欄には「国債を発行して消費税を減らせばいいだけだ」とのコメントが溢れていた。現在の政治言論状況は大学生レベルの経済知識を持っていないことがわかる。

このエントリーは実質賃金の上昇について扱い、なぜこれが実現しないのかまでを説明する。

政府が実質賃金の1%上昇を政策目標に掲げることになった。日銀の名目目標が2%上昇なので、名目では3%強の賃上げ目標を掲げたことになると共同通信は書いている。100万円の年収が102万円になるのが名目2%アップだ。ここから103万200円が名目の賃金ということになる。

NRIが「政府の実質賃金1%目標は妥当か?」でこの政策を論評している。専門用語が多く内容が極めて難解だ。

要するにそれぞれの業者からはマクロ経済状況は見えないためそもそもいくら給料を上げていいかわからないだろうと書かれている。わからないのだから意思決定のしようがないというわけで「ごもっとも」というほかない。

おそらく今回の議論の難所はここだろう。大学生の時に「経済にはミクロとマクロがあります」と習っている人は容易に理解できるだろう。だがそうでない人には「何がなんだかさっぱりだ」ということになるはずだ。

人は「何がなんだかさっぱり」という状況に直面すると怒りを募らせる。Yahooニュースのコメントを見ると「どうせ上がった分は社会保険料として吸収するのだろう」とか「赤字国債を発行して消費税をチャラにすればいいだけだ」というコメントが溢れている。

岸田前政権は、労働市場改革などを通じて労働生産性上昇率を高め、それが実質賃金上昇率の向上に自然とつながるような、「構造的賃上げ」を掲げた。石破政権も、成長戦略、構造改革を通じた生産性向上に目標を据えるべきだ。実質賃金上昇率の向上は、その成果として結果的に実現されるものである。

政府の実質賃金1%目標は妥当か?(時事通信)

NRIは実質賃金の上昇は(労働分配率が変わらない限り)生産性向上によってのみ達成されるのだから、政府はミクロ的な政策ではなくマクロ的な政策を通じて生産性の底上げを図るべきだと言っている。

政府はそれぞれの企業活動の結果を統計として受け取る。だから統計的な目標を立てがちだ。

しかし、ながら何かを動かそうとするとそれぞれの企業に個別に働きかけなければならない。それぞれの官庁はナワバリの企業を個別指導することで政策を実現してきたという経緯がある。

宮沢自民党税調会長のインタビューなどを見るとこれまで自民党税調はそれぞれの税制度の変更を数年かけて観察し「経験的な知識」として蓄積しているようだ。

このような諸事情が重なった結果、日本の政府はマクロ的な政策アプローチが苦手だ。

つまり新生自民党はマクロ的な改革を実現できるかが議論になる。しかし、おそらくこれは無理だろう。ではなぜ無理なのか?という点が次の議論となる。

このために2つのエントリーを用意した。1つはコメの値段が下がらないという話。もう1つは今回の経済対策の本来の目的が選挙対策であるという話だ。

石破総理はこれらの対策に失敗している。本質的に理解できていないのか、あるいは党内調整がうまく進まなかったのかはわからない。しかし無能なのか無力なのかは議論としてはあまり重要ではなく「やっぱりできなかったなあ」ということだけが重要だ。