ラトニック商務長官がBloombergの番組に出演し5500億ドルファンドについてに説明した。日本はアメリカ合衆国が選定するプロジェクトに資金を出資し資金だけを回収、残りの利益はアメリカ合衆国が受け取る。仮に残りの資金の支出を拒んだ場合はこれまでの投資額も没収されるという内容になっているそうだ。
石破総理が結果的に失敗した政権延命のために譲り渡したのは日本の将来だった。
ラトニック商務長官がBloombergの番組に出演しにこにこ顔で日本との投資ディールについて自慢している。
日本は出資額を取り戻すだけで残りの利益はすべてアメリカが受け取るとしたうえで、仮に日本が途中で投資を打ち切った場合は関税額がもとに戻る上に日本への返済義務も失効すると言っている。つまり日本はこれまでの出資額を失うことになる。つまり返済が続く限り(トランプ大統領の任期が終わっても)これまでの出資額と日本の自動車産業がアメリカの人質になるということだ。
赤澤経済再生担当大臣は最後まで石破総理続投論にこだわった閣僚の一人とされている。石破総理は解散まで持ち出して総理大臣の椅子にこだわった。次の総理大臣の野心を持つ林官房長官も石破総理を説得することはなく結果的に菅総理に退陣を説得した小泉進次郎農水大臣が石破総理を説得したものとされている。政権内に大局観を持って政権運営ができる人材がいなかったことが石破総理の失敗の要因とされている。
関税交渉は石破総理とトランプ大統領の信頼の上に成り立ったと説明したい石破政権が結んだ関税交渉はアメリカ合衆国に極めて有利な投資条項を含んでいる。日本の政権はトランプ大統領が指定した口座に無条件でお金を準備しなければならない。さらにその額は赤澤経済再生担当大臣が主張していたようなごく一部ではなく5500億ドル(日本では80兆円ファンド等と言われる)全体にかかってくるようだ。
仮にこの説明が事実なのだとすると日本は今すぐ自動車産業を放棄して覚書を破棄するか、一度出資した額を確保するまで枠いっぱいにアメリカに支払い続けるかという究極の二択を迫られる。立憲民主党や国民民主党は大手労働組合を背景にしているため本音では自動車産業救済を優先したいはずだ。自民党も石破総理にすべての責任を負わせてグレートリセットを図り「未来志向の」総裁選を長く続けたいと考えている。このため総裁選の候補者出馬で話題を作り9月22日まで総裁選告示を引っ張ったうえで12日間のフルスペックで総裁選を行いたいと考えているようである。
ただし、民間も含めて5500億ドルの資金を残り3年強で提供できるとは思えない。金策ができなくなった時がゲームオーバーとなり日本はこれまでの出資をすべて失い政府(つまり税金)で出資者に穴埋めすることになるのだろう。
よくトランプ大統領の政治姿勢を「カツアゲ」と表現する人がいる。これまで当ブログでは分配構造が崩れたことが政権弱体化につながったなどと分析していたが、実はカツアゲまでされていたということになる。まさに「悲報」といったところ。
なおトランプ政権の産業政策はかなりずさんなものだ。盛んにアメリカ合衆国に工場を誘致させようとしているが「工場を運営するのはアメリカ人であるべき」と盲信するMAGA政治家が韓国の工場を狙い撃ちにした。立ち上げスタッフが大勢検挙されたと考えられており韓国では衝撃が広がっている。トランプ大統領はアメリカ人を訓練するスタッフは必要という認識を示したそうだが具体策は示さなかった。どうやら立ち上げスタッフを受け入れるビザの制度がないそうである。
反省はしているので少なくとも「学習はできる」ようだが、とにかく気持ちを優先して走り始めあとになって様々な問題が出てくるというのがトランプ政権である。
- 現代自動車の米工場摘発、トランプ大統領の国内投資拡大計画と矛盾(Bloomberg)
- 韓国企業、現代自動車の米工場摘発受け対応急ぐ-米投資に懸念強まる(Bloomberg)
- トランプ氏、米労働者訓練必要と発言-韓国企業工場の不法移民摘発で(Bloomberg)
さらに雇用統計のベンチマーク改定が行われると開放の日以降大幅に雇用が悪化していたとする統計結果になると予想されているそうだ。日本政府と産業界が期待しているアメリカ市場の将来も実はそれほど約束されたものではないのである。
いずれににせよ自民党がリセットまつりを開催されている期間は具体的な政治アジェンダについては語られない。また分析力がない日本の政治評論家と報道機関は自分たちに馴染みがある政局報道こそが政治報道の王道であると主張し続けるだろう。
