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盛り上がらなかった総裁選のこれまでとこれからをまとめる

11〜17分

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盛り上がりに欠けるままで総裁選が終了した。盛り上がらなかった理由を総括し、今後何が起きるかを検討する。

総裁選が盛り上がらなかった理由はいくつかある。どれも安倍政権が影響している。

  • アベノミクスで凍結・先送りにしてきた経済問題が解決できなかった。
  • 政治とカネの問題で麻生派を除く派閥が崩壊し、リーダーがいなくなったことで、党内にまとめ役がいなくなった。結果的にさまざまな人々に妥協せざるを得なくなり、総裁候補が明確に政策を打ち出せなくなった。
  • 安倍派が引き起こした政治とカネの問題が解決できず、なおかつアベノミクスで凍結・先送りしてきた問題も解決できなかったことで少数与党に転落。総裁が党の方針を決めてもそれが日本の将来の政策につながらなくなった。

結果的に各候補とも様々な形で融和を訴えざるを得なくなったが、融和を訴えれば訴えるほど党内のまとまりのなさが目立つようになった。時事通信は次のようにまとめている。昭和の時代から派閥がなくなれば執行部に権限が集中し「強い自民党が作られる」とされてきたが、自民党は結局党内文化を変えられなかった。

「全員野球」(小泉氏)、「全員参加」(高市氏)、「ノーサイド」(林氏)、「ワン自民」(小林氏)、「挙党態勢」(茂木氏)と、全候補が党内融和の重要性を強調。

「ポスト石破」論戦白熱せず 没個性・内向き鮮明―自民総裁選(時事通信)

一つの自民党を訴える裏で昔ながらの激しい足の蹴り合いも行われている。小泉陣営は高市陣営を攻撃するよう支持者に訴えたが、これが露見すると「かばいあい」に転じる姿勢を見せた。これまで裏でやっていたことがすべて明るみに出るSNS時代らしい光景だった。

長老同士の意地の張り合いも目立った。麻生太郎氏は古賀誠氏を意識して「林芳正にだけは票を入れるな」とほのめかしているようだ。田崎史郎氏が直接の言及を避けながら「林さんだけは麻生詣でをしなかった」と言っており、岸田文雄元総理は麻生太郎氏と直接会談も行い腹の中を探っているが、見出しの上では「協議・会談」となっている。麻生太郎氏は「党員票を優先するように」指示を出し高市支援と受け止められているという。

麻生太郎氏は「林陣営を除く全部の候補者」を支援する全方位外交を展開。一方で宏池会(旧岸田派)の上川陽子氏は「犯罪被害者救済支援」を念頭に小泉陣営への支援を表明した。

今後の展開について考える。高市早苗候補は立憲民主党に近い政策(給付付き税額控除)を採用したと加谷珪一氏が指摘している。しかし野田佳彦氏には協力するつもりはないようだ。

現金給付「立民案丸のみを」 野田代表(時事通信)によると

  • 自民党内で取り下げ案が出ている2万円給付のハードルを上げる形で4万円給付とし
  • この案を丸呑みしない限り政策協議には応じないと主張

とされる。

しかし時事通信は重要な発言を見逃している。高市早苗候補が立憲民主党に近い案を出しているにも関わらず、野田氏は高市氏についてこう切り捨てている。

野田氏は、高市氏とは財政を巡る考え方が「決定的に違う」と強調。石破茂政権と行っている協議を受け継ぐ人が総裁になる方が「政策で実現できるチャンスが大きい」と語った。

野田立民代表、与党との政策協議排除せず-現金給付案「丸のみ」なら(Bloomberg)

高市早苗氏は財政拡大路線だが野田佳彦氏はすでに政権担当時に財務省に取り込まれており消費税増税を決めた過去がある。つまり財政再建派の高まりをブロックするために「高市とだけは絶対に組まない」と言っている。

一方で小泉進次郎候補は麻生太郎氏に鈴木俊一元財務大臣・元総務会長の重要ポストでの起用を約束したと報道されている。このため小泉氏が維新や国民民主党との連立交渉を行ったとしても財政拡大には動きにくい。

つまり、どちらが自民党の次の総裁になっても連立交渉は難航するものと考えられる。維新と菅義偉氏の間では先行協議が始まっており「維新が自分たちの言い分を通した」形が作れるかどうかが次の試金石になる。

さらにトランプ大統領の訪日が決まりつつあるようだ。日本政府はトランプ大統領が大好きなロイヤルカードを使っておもてなしする計画を立てている。天皇陛下を全面に押し出し「特別感を与える」手法はオランダやイギリスで成功事例がある。日本もこれを活用せざるを得ない。

しかしながらトランプ大統領は

  • オバマ大統領やトルドー首相のようなイケメン政治家が嫌い
  • メローニ首相のような右派の女性は好き

なので、誰が総理大臣になるかでその後の日米関係は大きな影響を受けるものと予想できる。

韓国に対しては「白紙小切手を要求した」と伝えられており在韓米軍の土地所有権移転についても「希望」をほのめかしている。これを日本に対して提示するかしないかはすべてその時のトランプ大統領のご機嫌次第。

特に小泉進次郎氏が次の首班に決まりそのまま総理大臣になった場合にはトランプ大統領の訪問=ゲームオーバーになる可能性も排除できないということになる。高市氏ならトランプ大統領にうまく取り入ってくれるかもしれないが、メローニ首相が成功しているのは彼女がイタリア政界とEU議会をうまく手なづけているからだ。

こうしたドタバタを全て乗りえた後に来る予算編成にはあまり時間がない。

官僚の間では「林芳正氏なら最初から説明をしなくて済む」という期待があるようだが、高市・小泉両氏に対してはそうもいかないだろう。特に小泉候補はパレスチナ問題において「外務省のブリーフィングを受けていないからわからない」と発言している。おそらくかなり混乱するだろう。

これらを冷静に考え合わせると、林芳正氏以外が総理大臣になった場合、連立交渉が難航し、トランプ大統領との交渉で大惨事が起き、官僚たちはすべてブリーフィングをやり直すため、何も決まらなくなる可能性がある。結果的に満足するには美化された思い出に耽溺する高齢者か強い日本を夢想する「保守層」だけ。

とはいえ政権を何度も放り出すわけにはいかないのだから、表の顔が誰になっても「裏で政権を回す」ような政権になるかもしれない。安倍政権は「菅義偉官房長官が裏で回していた」ことで知られるが、次の官房長官は政策も他の政党との協議も「誰かが裏で回す」政権になるということだ。今度の裏回しの人はその意味でものすごく大変な役割を背負うのかもしれない。

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