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現代自動車の不法移民捜索のきっかけは極右政治家

10〜14分

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現代自動車のバッテリー工場で不法移民摘発があり、韓国政府はチャーター機を差し向けて自国民を帰国させる意向。米国人労働者への技術指導のため派遣された韓国人臨時労働者も含まれており米国人労働者からの反発も起きている。さらに日本の製造業にとっても工場立ち上げ支援の従業員・関係者らが嫉妬から摘発されかねないという事例になった。きっかけになったのはMAGA政治家の通報だった。

かつて中国への投資にはカントリーリスクがあるとされたが、アメリカ合衆国への投資についてもMAGAというカントリーリスクが生じていることになる。

日本政府はアメリカの便利なATMとして期待されているがアメリカ合衆国は製造業をかなり軽く考えている。彼らに言われるがままに出資をすることは日本の国益を損ないかねない。日本の資金の使い道はあくまでも日本ファーストで検討されるべきではないか。

現代自動車のバッテリー工場で不法移民の摘発が行われ大勢の「非正規滞在者」が捕まった。このままでは不当拘束の後に第三国に追放ということになりかねないため慌てた韓国政府はチャーター機を差し向けて自国民を救済することにしている。

当初「やはり韓国だから」などと呑気に見ていた人も多かっただろう。しかし今後アメリカ合衆国に工場を建設したい日本企業にとっても「明日は我が身」という状況になった。

今回の摘発者の多くは工場を立ち上げるための支援要員だったとハンギョレ新聞が書いている。

アメリカ人の中にも理屈がわかっている人がいて批判が多く集まっているそうだ。

実際にブレイナム氏のフェイスブックには、同氏の通報行為は不適切だという批判的なコメントが相次いでいる。あるネット民は「逮捕された475人のうち300人は、新たな工場を建設したり、既存の工場で米国人労働者たちに装置の扱い方を教えたりするために派遣されている韓国人の臨時労働者たち」だとし、「韓国で開発された技術をきちんと習得するまでは、韓国の人材が現場にいなければならない。韓国人がICEによって手錠をかけられるようなことが続くと、韓国も自国民の米国への臨時派遣をやめる可能性がある」と指摘した。

現代自動車通報の極右政治家に「愚か…」米ネット民から批判殺到(ハンギョレ)

何があったのか。

労働条件に不満を持っている人が地元の極右政治家に相談をしたようだ。待遇改善のために以前から知り合いだったとされている。多くの不法移民が働いていると主張しそのまま工場に踏み込んで立ち上げのスタッフたちを大勢検挙した。

プライドが高いアメリカ人が外国経営者や作業員と激突するというのは意外とよくあることだ。

ダイムラー・ベンツとクライスラーの合併のときにもドイツ流の厳格な経営を好まないクライスラーの従業員が抵抗している。プライドを守るために対等合併とされていたが実際には救済に近かった。合併の破綻後も独立して復活することは難しいためフィアットの傘下に入り最終的にはステランティスと名前が変わっている。

このクライスラー「救済」の事例は今後日本製鉄とUSスチールで問題になるかもしれない。

今回は韓国企業だったためアジア人蔑視が背景にあるのではないかと思ってしまうが、アメリカ人はそもそも外国人から指図されることを嫌う。今回はそこに極右とポピュリズム型の自国優先主義が入り込んでしまった。

今回の事例はもちろんトランプ大統領のATMとしてアメリカの製造業に出資する日本の80兆円ファンドと絡めて考えることもできる。

日本は出資に拒否権を持てない上におそらく経営にも参加できない。NRIの分析によると予想配当であらかじめ利益分配されてしまいこれがアメリカ合衆国財政を助ける可能性がある。その後の経営は自分たちの後進性を認めたくないプライドが高いアメリカの労働者たちが好き勝手な経営を行う可能性があるということになる。

ベッセント財務長官は最高裁判所が関税を違法なものと宣言すればアメリカ合衆国政府は関税の還付に応じなければならなくなるとして最高裁判所を恫喝している。減税が実施できなくなればそれは最高裁判所のせいだというわけだ。

アメリカ合衆国が財政に行き詰まれば当然日本というATMへの期待が高まる。もちろん「覚書」なので応じる義務はないのだろうが、石破政権の後継政党は「自動車産業に対する壊滅的な打撃」か「日本の将来」かという究極のトロッコ問題に対峙することになるだろう。自民党は分配政党どころか損を日本の有権者に押し付ける存在になろうとしているということだ。

不動産業出身のトランプ大統領は、土地を買いどこかからお金を調達しさえすれば後は収益が上がる工場が自動的に立ち上がると考えている。極右の政治家も世界一優秀なアメリカ人は外国から指導される必要がないと考える。こうした人々に製造業固有の複雑さを説明することなどできない。結果的に投資された金は無駄金になることが予想される。

日本ファーストのスローガンは外国人排斥のために使われることが多い。しかし本来なら自分たちの金は自分たちの将来を作るために使われるべきだ。仮にこれが「日本ファースト」であるとするならば、日本ファーストも必ずしも間違った主張とは言えないのではないか。

“現代自動車の不法移民捜索のきっかけは極右政治家” への4件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    当初「やはり韓国だから」などと呑気に見ていた人も多かっただろう。
    現代自動車のバッテリー工場で不法移民摘発のニュースが流れた後、Youtubeでとある動画見ると、意気揚々と韓国批判をしているのがありました。法令遵守がなってないや、韓国政府が開き直っているなどと話していました。たしかに、このニュースの表面だけを見れば、そういう主張だけで完結するのですが、色々な海外のニュース記事を読むと、色々な背景や思惑などが読み取れることが書いてあり面白いなと思いました。
    海外に行ったことすらないので、向こうで就労ビザを300人分短期で取得するのがどれだけ大変なのかは分かりませんが、この事件が起きたところを見ると、取得は結構面倒なのかもしれませんね(現地で報酬が発生しない技術指導のみなら労働ビザが不要と昔聞いたことがありますが、今はどうなのかは不明です)。

    1. そもそも就労ビザって年間枠が決まっていて(枠が公表されるわけではない)抽選だったりするんですよね。なので取ろうとしても取れない場合が多いんです。そのため短期出張では特例が認められている。手続きが面倒というよりそもそも取れるかどうかわかんないんですよね。

      1. 細長の野望のアバター
        細長の野望

        なるほど、そうなんですね。
        それだと、アメリカにある製造工場のふたを開けてみると、思ったよりも”不法移民”が多いのかもしれないのですね。

        1. 韓国はビザ制度を変えるように働きかけるようですね。日本も他人事ではないので同調すればいいと思うんですが、このあたりはセンスが鈍い。