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玉木雄一郎はなぜ逃げたのか

6〜10分

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当ブログでは玉木雄一郎国民民主党代表はサスペンデッドな状況を作り自分を高く売りたいのだろうと分析しているが、支持者たちはそう思わなかったようだ。デイリーが【高市自民】ネット荒れ「腰抜け」「逃げるなヘタレ」批判に反論 玉木代表「私には内閣総理大臣を務める覚悟がある」異例3回もSNS 自公決裂→「玉木首相」提案への態度めぐりという記事を書いている。

玉木雄一郎氏は実務能力のある優れた政治家だ。更に政治家として他人の期待に合わせるお調子者キャラでSNSの人気者になった。賢く世間を渡る令和スーダラこそが現代で成功する秘訣。改革者を気取りつつ責任を取らない絶妙な距離で与党自民党と渡り合ってきた。

彼に問題があったとすれば成功しすぎたことだろう。公明党までがこのお調子者ピボット戦略の旨味に気づき政権を離脱してしまった。公明党は与党にも参加したくないが野党に与することもしたくないので首班指名の2回目には無効票を提出するそうである。斉藤鉄夫代表に言わせればこれこそが「人間中心主義の中道精神」なのだろう。

自民党は地方組織も含めれば大所帯である。議員たちを食べさせてゆくためには利権を期待する企業からの献金を受け続ける必要がある。一方で日本にはこうした利権構造に組み込まれていない無党派層が増えてきた。この先自民党の総裁はこの問題で「不利益」を被ることになる。

実は立憲民主党も同じような問題を抱える。意見が違う人達が「いつかは政権政党」という夢でかろうじて結びついているような状態。

つまり既存政党は2つとも大きくなりすぎた世帯を維持するためにかなり無理を強いられている。

現在の政治状況において、おそらく国会議員たちは「日本の再成長などありえず国民に財政負担などの不利益を飲ませるしかない」ということに気がついている。税制調査会長の宮沢洋一氏も「資本主義には賞味期限があるのではないか」などと呟いているくらいだ。つまり、誰もが「今後何らかの形で有権者に不利益を分配しなければならない」ということがわかっている。

玉木雄一郎氏はこの不利益を避けつつ「状況が許すならば総理大臣となり日本の将来について引き受ける覚悟がある」と主張している。これまでの日本の政治文化ではこうした状況は無理やり作るべきものだが玉木雄一郎氏にそこまでの覚悟はない。

玉木雄一郎氏に取って誤算だったのは立憲民主党が「玉木雄一郎首班でもいい」と言い出したことだった。立憲民主党の存在意義は「いつかは政権政党」なので首班は外から持ってきてもいい。維新にとってもバーゲニング環境を成立させるためには「アイミツ(相見積もり)」が取れるライバルの存在は好都合だ。

しかし仮に玉木雄一郎氏が立憲民主党案を受けてしまうと「不利益分配の当事者」という責任を立憲民主党と維新から押し付けられることになってしまう。逃げ出したくなるのは当然だろう。立憲民主党に所属する諸勢力のおねだり先が玉木雄一郎氏になるか高市早苗氏になるかという違いしかない。

結果的に玉木雄一郎氏は繰り返し「自分は内閣総理大臣を務める覚悟はあるが今はその時ではない」と主張。勝手に玉木雄一郎氏に期待していた支持者が吹き上がると「私は誤解されている」と釈明を繰り返している。

そう考えると小泉純一郎氏が「進次郎が総理大臣になるのはまだ早い」は慧眼だった。麻生太郎氏も進次郎氏に対して俺なら火中の栗を拾わないと言ったと伝わっている。現在の総理大臣が無理な構造を維持するために使い捨てる「消耗品」であることに気がついている人は多いのだろう。