イアン・ブレマーのトップリスクは「アメリカ革命」だった。変化は徐々に進行していたがそれが沸点を迎えたという評価になっている。この変化は不可逆である上におそらく日本のメディアは扱わないだろう。このため社会と問題意識は共有できず、正直「知らないほうが楽だった」と言えるかもしれない。日本は自らの国益を売り渡す選択=何も意思決定しないことを始めているため、対処するとしても独力で行う必要がある可能性が高い。
ドンロー主義をトップリスクの1つに入れていたイアン・ブレマー氏もあまりにも急な展開にYouTubeを一部入れ替えざるを得なくなった。つまり現在の世界は構図が急速に書き換わりつつある。
AxiosがMiller says no one would stop U.S. from seizing Greenlandという記事を書いている。スティーブ・ミラー氏がNATOに対して「NATOを維持したければグリーンランドを差し出す以外の選択肢はない」と脅しているという内容だ。
ヨーロッパはかなり以前からトランプ大統領のアメリカが狂っていることを見抜いていた。しかし、彼らはウクライナを抱えているためこれを見て見ぬふりをした。ルビオ国務長官がヨーロッパと協力してトランプ大統領の提案を押し返してくれたのも大きかった。
最初の兆候はあからさまにヨーロッパを敵視したNSSだった。さらにベネズエラ侵攻が実際に起き直後からグリーンランドをアメリカに寄越せというメッセージが盛んに出てくるようになった。主導しているのがスティーブ・ミラー氏だ。
ここでポイントになるのがトランプ大統領の外交政策である。トランプ大統領がベネズエラの管理を仄めかすと、ルビオ国務長官が「統治ではない」とカバーした。つまりトランプ大統領は騒ぎを作り出す人でルビオ国務長官がそれを治める人という役割分担を持っている可能性があった。これはニクソン・キッシンジャー体制と同じである。
しかし次第にルビオ国務長官がベネズエラ情勢において何もしていない事がわかってきた。そればかりかむしろミラー氏側に立ちトランプ大統領と一緒に世界を脅し始めた。トランプ大統領も作戦に成功したことで満足してしまいベネズエラ統治に何ら働きかけをしていない。つまり、現在のドンロー主義においてはキッシンジャー国務長官のような実務者はいないということが分かる。ルビオ氏がなぜそうなったのかはよくわからないが、彼の内心には関係がない。彼らは国民に直接語りかけるカリスマがない。だからバンス氏のような人物について行くしかない。
更にドンロー主義をトップリスクに入れたイアン・ブレマー氏も展開が急なことに驚いており「仮説ではなくなった」とビデオを一部差し替えざるを得なくなった。
総合すると、ミラー氏がけしかけ、トランプ氏が実行し、ルビオ国務長官は何もしないという「ブレーキが壊れた」のが今のアメリカの構造と言える。アメリカが通った後には混乱しか残らないということだ。
ヨーロッパは一応準備ができており「国際法遵守」という盾を使っている。しかし日本はこの盾を早々と放棄してしまった。ここから高市政権が本当に国際戦略を持たず、むしろ、経済政策からの撤退の結果としてアメリカの威光に依存する道を消極的に選択したことがわかってしまう。彼らが頼れるのは学芸会のような高市早苗総理の「明るさ」と安倍晋三氏の遺影だけだ。
では「国際法」という正義が実現しないことが問題なのだろうか。実はそうではない。
フランスの中央銀行総裁が「アメリカ政権の政策がドルの基軸通貨としての地位を危うくする」と言っている。
アメリカがドンロー主義を追求すると次のようなことが起こり得る。
- アメリカがさらに孤立主義を深める。
- 西半球にないサウジアラビアが資金を引き揚げ、アメリカのハイテク株が瓦解。
- アメリカが国内に産業を還流させるためにかつてのプラザ合意のように制度的なドル安を誘導する。しかも理屈ではなくミラー方式で「飲むか滅びるか」と迫ってくる。
- アメリカはかつてのプラザ合意のような枠組みを一方的に提案するが、ヨーロッパがこれを拒否。そもそも協力したくても支えられるような実力がない。
- 日本は「アメリカにしがみつく」道を選び防衛増税を回避するために財政を拡大。中東情勢も怪しくなりアメリカのエネルギーに過度に依存。
- 長期金利が上昇し「低金利」を支えられなくなる。ここが日本のティッピングポイントとなる。
- 日銀が担保していた流動性が損なわれ円キャリートレードの素地が損なわれる。サウジアラビアと違って円キャリートレードにはこれと言った意思決定者がいない。
- 円キャリートレードによって支えられていたアメリカの株式が更に下落。
- しかしこの頃にはすでに中東やヨーロッパとは協力できなくなっている。
というような「共倒れ」が起きても不思議ではない状況である。
日本はおそらく自分たちの実力をかなり過小評価しているが世界の流動性を円安・インフレというコストまで支払って支えている。
そもそも日本は西半球にないためアメリカ共栄圏の中に入れてもらえない。中国を牽制する捨て石として利用されて終わりである。
問題なのはミラー氏がバンス副大統領やルビオ国務長官とかなり気脈を通じているという点にある。最近のルビオ国務長官の発言からもそれがよく分かる。仮に共和党政権が続くとこの体制が固定されかねない。ルビオ国務長官が嬉々として従っているとは思えないが彼には選択肢がない。
おそらく日本人がこの状況を最後まで「見て見ぬふり」をするだろう。誰かが警鐘を鳴らした時点で不安を感じたくない人たちから一斉に攻撃を受けることになる。「言霊の国だ、悪いことは考えてもいけない」というわけである。
つまり異状を感じ取った人は社会から助けてもらうことはできないのだから一人ひとりが行動指針を立てる必要があるという結論が得られる。
すでにTBSの昼のワイドショーでこんなシーンがあった。コメンテータたちは「アメリカが主権国家を襲撃する」という事態に当惑している。そこで識者が「マドゥロ大統領は実は選挙を盗んだ大統領であって正統な大統領ではない」と発言。確かにこれはある程度確からしい。
すると恵俊彰氏が「じゃあヨカッタですね」と安心してしまった。彼は緊張に耐えられなかったのだろう。これまで日本の安全を支えてきたものが一瞬にしてなくなることを恐れている人たちは「これまでと何も変わっていないのだ」という根拠を必死になってかき集めようとしている。おそらく日本社会はこのまま変わらない可能性が高いだろう。むしろ気がつけば気がつくほど全力で無視しようとするだろう。
今後のアメリカがどうなるかについては2つのシナリオがある。1つはレーガンパターン。軍事侵攻の経済が上向き「強いアメリカ」というナラティブが維持されたシナリオだ。この場合、アメリカ合衆国はますます孤立主義を強めることになる。もう1つがパパブッシュシナリオだ。軍事侵攻には成功したが経済が低迷しその後政権を追われた。
日本はどちらに転んでも良いようにプランを立てる必要性があるがおそらく高市政権には無理だろう。

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