前回のエントリーでは「お子様化する国内政治」について俯瞰した。今回はこのお子様化した政治に苛立つ経済と金融について書く。日経新聞が珍しく政治に批判的な「[社説]消費税減税ポピュリズムに未来は託せぬ」と打ち出している。日経新聞だけだと思っていたのだがREUTERSには「インタビュー:「逃げの解散」、金利上昇続けば路線変更も=溜池通信・吉崎氏」というインタビュー記事が出ていた。
こうした反発はいわば炭鉱のカナリアだが、大手メディアも政治もカナリアの動向には無関心だ。
高市総理の衆議院解散意向報道が出ると日本の長期金利が上昇を始めた。
日本はいよいよ「金融財政の例外」から「説明責任を果たす普通の国」になったが、政治の側に説明責任を果たす意欲はないようだ。
金融・財界は高市総理個人ではなく与野党が財政について十分な説明責任を果たしていない政治全体を問題視しているのだろう。ただこれは批判ではない。金融市場は自分たちの資産を守るために合理的とみられる行動を取っているだけである。
日経新聞は消費税を所得税・法人税の代替財源だと見ているのだろう。つまり経済界に自分たちだけが良ければ日本はどうなっても構わないという利己的な気持ちがあったことは否定できない。
これまで経済界は減免された法人税を享受する一方で国内の設備と労働者に積極投資してこなかった。消費税を減税するともとに戻せなくなり結果的に所得税や法人税が上がる可能性がある。これを恐れた財界は表向きは政府が主導する賃上げなどを支援してきた。つまりこれは一種の取引だった。
しかしながらこの取引は高市総理の登場で成り立たなくなっている。高市総理は不用意な台湾有事発言で対中ビジネスをリスクにさらしている。また日経新聞が言うところの「消費税減税ポピュリズム」は高市早苗氏のかねてからの持論だった。総理就任後一旦抑え込まれた主張が再び出てきたことを裏切りと感じた日経新聞は「[社説]消費税減税ポピュリズムに未来は託せぬ」という極めて厳しい社説を出した。
つまり今回の亀裂はこれまで賃上げに協力的だった大企業の離反宣言につながる可能性が高い。表立って離反すると言うよりは静かな退出になるかもしれない。これ以上政府に協力はできないから今まで以上に身を守る行動=海外投資が加速する可能性がある。賃上げは加速せず政府にさらなる物価高対策を求めるようになるだろう。
ただ、REUTERSも元双日総合研究所チーフエコノミストで、溜池通信の吉崎達彦代表のインタビューを掲載している。こちらはもっと手厳しい。
現在、韓国からトゥルーマザー特別報告書と呼ばれる報告書が出ている。韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁に対して「高市早苗氏が総理総裁になることは天の望みである」と分析が提出されていたとされる。
また、萩生田光一幹事長代行、北村経夫議員らの名前も出ている。また別の報道では佐藤啓官房副長官が安倍総理の銃撃事件当日に奈良教会の応援集会に代理として妻を出席させていたとされている。
このトゥルーマザー報告書が地上波で取り上げられることはない。しかし吉崎氏はわざわざこの問題を持ち出して、これらのスキャンダルを隠すための総選挙だった可能性をほのめかしている。
本来なら、高市総理は城内実氏らから出てくるはずの「攻めの積極財政」の内容を固め、それを裏打ちする本予算を通してから解散をしたかったはずだが、足元でスキャンダルが噴出したために「その時間がなかったのではないか」ということになる。
それだけに今回の解散には驚いた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の内部文書とされる『TM特別報告』問題や、自身が代表を務める自民党支部での政治資金問題を受け、予算委員会を乗り切れないと判断したのではないか。攻めというよりは、逃げ・守りの解散だ。
インタビュー:「逃げの解散」、金利上昇続けば路線変更も=溜池通信・吉崎氏(REUTERS)
とはいえ日経新聞も吉崎氏も「では中道を支援しましょう」とは言っていない。むしろ高市早苗総理のパニックボタンのあとに出てきたのは「これまでのような予算作成では有権者の期待に応えられない」という与野党の焦りだった。
別のエントリーでみたように有権者はお子様化している。お子様化とは「政治に対して適切な統合を行い責任を果たす機能」が発達していないことを意味している。しかし選挙を前にした政党は有権者を説教するわけにも行かずこれまでの間違いを認めることもできない。責任回避のためにいくつかの提案(=宥め策)を出している。
- 消費税は減税するが、財源は明示しない。財源は国民会議で議論し自民党税調が単独で議論することはない。
- 税金だけでは財源を賄えないので財政法4条を曲げて例外的な国債を発行する。建設国債に特例を儲け、なおかつ教育国債という新しい使い道も検討されている。
- しかし財政法4条を曲げると金融市場の信任が失われる。このため埋蔵金で2年間の消費税を賄い、その後で政府がファンドを作って投資益で消費税を代替するという案が出ている。
- 維新などはこの先経済成長するから消費税減税の財源はなんとでもなると主張している。
高市総理は長年自民党税調を支えてきた宮沢洋一氏という「大人」を切り捨てた。そして財源など後から見つければいいという藤井裕久元財務大臣元財務大臣の甘言にそそのかされ最終的に消費税増税に追い込まれた野田佳彦氏は2年間は使える財源があると再び同じ間違いを繰り返そうとしている。これもいわば「大人の異言う事など信用できない」という民主党が結局責任を取れなかったという事案だった。
今回は維新が「大胆に政治改革を行えば財源は捻出できる」と言っている。子供政治を宥めることで手一杯の政治家たちの「幼児化」も進行する。
有権者は政治的統合能力を失っている(あるいは最初からそんなものは持っていなかった)が、政治家はそれをなんとか宥めようとしてる。「大人」として有権者に責任を突きつけることは自殺行為である。一方で国際金融市場は「日本は金融財政面で特殊な国ではなくなった」としてこれまで減免されてきた説明責任を強く求めるようになった。つまり国際金融市場は日本に大人になれと言っている。
だからこそこうした状況を支えててきた金融界・経済界は「これ以上この構造矛盾を吸収できない」と強く反発している。ベッセント財務長官はこうした誰も責任を取らない状況を「炭鉱のカナリア」に例えている。しかし大手メディアがカナリアの状況を伝えることはない。

コメントを残す