トランプ大統領の軽率な和平合意騒動に揺れていたウクライナだがその背後で汚職疑惑捜査が進んでいた。すでに閣僚2名が辞任していたがこの程ナンバー2のイエルマーク首席補佐官が辞任した。
- イエルマーク首席補佐官はゼレンスキー大統領の側近で和平交渉でも重要な役割を果たしていた。15年以上前に弁護士としてテレビ制作事業に参入し、ゼレンスキー氏と知り合った。
- 捜査は1億ドル規模のエネルギー部門汚職スキャンダルで、ゼレンスキー大統領のかつてのビジネスパートナーだったミンディッチ氏が首謀者なのではないかと疑われている。ミンディッチ氏はすでに国外に逃亡している。BBCによるとミンディッチ氏はゼレンスキー氏のスタジオ95街区の共同所有者。
- 汚職摘発当局はイエルマーク氏に通知せず家宅捜索を行った。イェルマーク氏が直接汚職に関与したかどうかはわかっていないが、監督責任を問われる可能性がある。
Bloombergは
エネルギー関連で1億ドル(約156億円)にも及ぶ公金横領疑惑が政権上層部にも広がり、ゼレンスキー氏自身がどこまで関知していたのかについても疑問が持ち上がる中で、ゼレンスキー氏は汚職根絶を約束した。
ウクライナ汚職対策機関、ゼレンスキー大統領最側近の自宅を捜索(Bloomberg)
と書いている。
つまり問題の処理を間違えるとゼレンスキー大統領の信頼に傷がつきかねない。
ヨーロッパはロシアが力による現象変更路線を拡大して西側に押し返してくるのではないかと恐れておりウクライナを支援している。しかし域内には「これ以上の犠牲を支払ってウクライナを支援すべきなのか?」との声が広がっている。ゼレンスキー大統領の任期はすでに切れているためプーチン大統領はゼレンスキー大統領を非合法な大統領と言っている。つまり今回の捜査はプーチン大統領の主張に一定の説得力をもたせる結果になっている。
ゼレンスキー大統領が戦争を言い訳にして私腹を肥やしていたとの懸念が広がれば、ヨーロッパのウクライナ支援にも大きな影響が出るだろう。
この話が皮肉なのは戦争が続けば続くほどエネルギー産業への依存度が高まってゆくという点にある。元々ソ連時代からの汚職体質があり東西冷戦終了後に台頭したオリガルヒも残っている。つまり歴史的な経緯が積み重なりウクライナの汚職依存構造を根深いものにしているということになる。
仮にゼレンスキー大統領が汚職を知っていて黙認していたとなれば当然彼は「汚れた英雄」とみなされることになってしまう。
