当ブログではよく「高市総理の経済政策には期待が持てない」と主張している。ところが、「それってあなたの感想ですよね」と考える人も多いのではないだろうか。そこで今回は「賃上げ」について問題点を分析する。
結論だけを書くと、自民党の経済政策は「問いの立て方」が間違っている。日本企業の存続ではなく、政党の存続が前提になっており、それを支える支持者たち(現在の産業構造)の温存が自己目的化しているのである。
共同通信が「24年度賃上げで減税1兆円 過去最大、効果に疑問も」という記事を出している。賃上げと研究開発を促進する企業に対して、それぞれ1兆円の税制優遇が行われているという。
高市政権は、この租税特別措置(租特)を消費税減税の原資にしたい。つまり、賃上げ効果がなくなるのではないかと共同通信は心配しているわけだ。
しかし、効果があるのかないのか、記者自身もよくわからなかったのだろう。
「租特を巡っては、企業は減税されなくても人材確保のために賃金の引き上げに動くなど、寄与していないとの分析がある」
とまとめて終わっている。要するに何も言っておらず、単に「心配しているだけ」の記事になっている。
この記事だけでは議論の内容がよくわからないのでGeminiに解説してもらった。
- 法人税を納めている企業は、全体の3〜4割程度
- したがって、賃上げ効果はそもそも(あったとしても)限定的
- ただし、政府も何もやっていないわけではない
- 減税枠を5年間繰り越せる制度
- ものづくり補助金・持続化給付金などによる支援
- 公正取引委員会による価格転嫁しやすい環境整備
- 公的価格による支援
一方で、問題点もある。
・賃上げによって社会保障費が増えるため、賃上げができない企業がある
・逆に、人手不足からやむを得ず賃上げしている企業もあり、「補助はいらないのでは」と見る向きもある
さらに、先日紹介したBloombergの「投資家を黙らせた高市氏、日本の実験に世界が注目」によれば、経済多様性が高い日本の問題点は、小規模企業が乱立することによる過当競争にあるという。
つまり、政府の「ものづくり補助金・持続化給付金」は、「持続化」という言葉が示す通り、古くて非効率な産業構造そのものの“持続”のためにデザインされている。
根幹が「不効率の持続」にあると考えると様々な軋みの理由がよく見えてくる。その無理を補うために、さらに別の無理を重ねる。それでも効果が出ず、国民が「もう消費税は払いたくない」と言い出したため、措置を打ち切って減税の原資に回そうとしている。
今回は、共同通信の記事をきっかけに、AIを使って補強してみた。しかし調べれば調べるほど、「そもそも何か根本が間違っている」ために、議論を深掘りするほど一体何を議論しているのか分からなくなっていくことが見えてくる。
つまり、個別の制度や効果を論じる前に、「出発点のどこに問題があったのか」を考え直したほうがよさそうだ、ということである。
おそらく問題は、出発点が「日本の産業構造の最適化」ではなく、「政党の延命と、それを支える産業構造の延命」になっている点にある。
これを示すような事例はいくつも紹介できる。
- 支持基盤業界に偏った配分
- 選挙前に集中する政策
- 構造改革を避ける傾向
すべての政策が選挙対策だなどと言うつもりはない。しかし選挙の約束にかなり強い縛りを受けていることは誰の目にも明らかだろう。
よく「政策にケチをつけるなら対案を出せ」と言う人がいる。しかし、そもそも政策の根幹が間違っているなら、いくら対案を出しても有効な議論にはならない。
政策を分析しても、霧が濃くなるばかりで見通しが示せない。そこで、「なんだ精神論か」と言われるかもしれないが、あえて政策立案の土台になっているマインドセットそのものを分析してみたい。
日本社会は、過去に対して「失われた30年を克服できなかった」という自己認識を持ち、将来に対しては「少子高齢化で沈んでいく」という予測を抱いている。
各政党は、この過去と未来の認識の間で身動きが取れなくなり、「自分たちの政党を維持するにはどう振る舞うべきか」に気を取られるあまり、本来果たすべき「日本が持つ資産の活用と最適化」というゴールを見失っているのではないか。
勇ましい政策競争の裏側に「不安」を置いてみると、これまで見えにくかった政策の歪みが、より立体的に説明できるようになるように思える。
本日、国会が招集され、高市総理が施政方針演説を行う。
ここまでの議論は、「高市総理個人」ではなく、「自民党の問いの立て方、論の組み立て方」の問題だった。仮に高市総理が冷静に軌道修正できれば、「希望が持てる」状況になる。
では、実際に高市総理は何と言っているのか。時事通信から引用する。
高市早苗首相が18日召集の特別国会で行う施政方針演説の原案が17日判明した。食料品の消費税2年間ゼロに向け、夏前に中間取りまとめを行い「税制改正関連法案の提出を急ぐ」と表明。「成長のスイッチを押しまくる」とし、成長分野には「予算上、多年度・別枠で管理する仕組みを導入する」と明らかにする。
消費税法改正案「提出急ぐ」 成長分野に別枠予算―高市首相施政方針演説原案
(時事通信)
高市総理は、明らかに「勝ちすぎて」しまった。「不安」という見えない次元を導入すると、有権者の期待を裏切れないと焦っているようにさえ思える。とにかく「急ぐ」「押しまくる」と繰り返している。有権者はこれまでの決めきれない政治にうんざりしており、当初はこの姿勢を支持するかもしれない。吉村洋文・維新代表も「アクセルになる」と述べている。
しかし、そもそも現状分析も十分でないまま、闇雲にボタンを押しまくっても成果は出ないだろう。
成果を焦る高市総理に対し、官僚や政府関係者は「これは壮大な社会実験だが、有権者が望んだことだから仕方がない」と、冷ややかな距離を取っている。また、年度内予算成立を急ぐ高市総理に対し、参議院自民党は「参議院の議論を軽視してはならない」と釘を刺している。
つまり、焦っているのは高市総理とその周辺だけで、政府も議員も十分についてきていないのである。

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