9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

米国のアメリカ連邦最高裁判所は、いわゆる「トランプ関税」の約7割を占める関税について、差し止め判断を下した。これにより、ドナルド・トランプ大統領は、自身の経済政策の修正を迫られることになる。

選挙キャンペーンを意識するトランプ大統領にとって、「敗北」を認めることは容易ではない。そのため、成果を演出する手段として、イランへの軍事行動などに傾く可能性が指摘されている。

トランプ政権は近く、ミネソタ州で高まった抗議運動や民主党の強硬姿勢を背景に、同州から事実上撤退した。表向きには「成果を上げたため、留まる理由がなくなった」と説明しているが、実態は敗北に近い。

今回の関税差し止め判断は、これに続く司法的な挫折と位置づけられる。

最高裁は、政治的価値判断を極力避けつつ、国際緊急経済権限法(IEEPA)が大統領に広範な関税権限を与えているとは言えないと判断した。この決定には3名の反対意見が付された。

Reutersは、「約1750億ドル規模の関税収入が返還対象になる可能性がある」と報じたが、最高裁判所は具体的な還付方法については踏み込まなかった。

これに対し、トランプ大統領は「最高裁は恥さらしだ」と非難し、全世界に10%の関税を課すと強硬姿勢を示している。

トランプ関税は、減税政策の財源と位置づけられてきた。しかし今回の判断により、その前提は大きく崩れることになるだろう。今後の一般教書演説も、かなり荒れた内容になる可能性がある。トランプ大統領は別の条文を持ち出して一律10%関税を主張しているようだ。

アルミニウムと鉄鋼への関税は今回の判断の対象外だが、「関税の脅し」が弱まったことで、日本に対して対米投資を強要する圧力は低下しつつある。時事通信も、同様の見方を示している。

トランプ氏は、最高裁で敗訴した場合、日本などとの間で結んだ貿易合意を「解消しなければならないだろう」と語っていた。仮に解消すれば日本に対する15%の相互関税などが撤回され、昨年7月の日米合意を履行する必要もなくなるだけに、米政権の今後の対応が注目される。

トランプ関税は違憲 米最高裁判決「大統領に権限なし」―政権敗訴、看板政策に大打撃(時事通信)

しかし、移民摘発や関税政策の挫折は、問題の本質ではないのかもしれない。

米商務省の統計によれば、アメリカ経済の約3分の2を占める個人消費が減速している。ABC Newsは「労働市場も凍りついている」と指摘した。

生活コストの上昇によるアフォーダビリティ(経済的余裕)の低下は、中間選挙の主要争点となりつつある。しかし、トランプ大統領の周囲には、現実的な経済政策を立案できる人材がほとんど残されていない。

内政が行き詰まると、外交・安全保障に「逃げ込む」のは、大統領制国家ではよく見られる現象である。

ところが、トランプ政権の外交政策からは、伝統的な共和党指導者や経験豊富な外交官が排除されている。現在の交渉を主導しているのは、成果をほとんど上げていないスティーブ・ウィトコフ氏や、娘婿のジャレッド・クシュナー氏である。いずれも「素人同然」との批判も少なくない。

いわゆる「ボード・オブ・ピース」では、集まった各国指導者を「豊かで力強い」と持ち上げたという。トランプ大統領のセカンドキャリアを見据えた動きとされるこの会合の成功には、アラブ諸国の資金が不可欠である。

ただトランプ氏が最も重要なガザ問題に言及したのは自ら演説を開始してから25分も経過した後で、発言の大半は出席した各国首脳の容姿や力強さ、富などを「褒める」ことに費やした。普段は甘い顔と強面(こわもて)を使い分けてディール(取引)を迫るトランプ氏だが、出席者の目には同氏のこの会合での振る舞いはかつてないほど楽しげに見えたようだ。

平和評議会初会合、トランプ氏は各国首脳に「お世辞外交」展開(REUTERS)

一方で、イランに対しては、核開発を放棄して和平交渉に応じるか、米国の報復攻撃を受けるかという二者択一を突きつけている。

合理的に考えれば、サウジアラビアなどが強く反発するはずだが、核濃縮を黙認する方向で調整が進んでいるとも伝えられる。

トランプ氏が議会に宛てた文書によると、民生用原子力に関するサウジとの協定(123協定)案は、米産業をサウジの民生用原子力開発の中核に位置づけ、核不拡散の安全措置を確保すると説明。一方、濃縮や再処理など「原子力協力の最も機微な分野における追加的安全措置や検証措置」に言及し、サウジが濃縮計画を持つ可能性に道を開く内容となっている。

米政権がサウジ核政策を転換、不拡散合意を条件から除外(REUTERS)

仮にイランが核兵器を保有すれば、サウジアラビアも追随し、事実上の核保有国であるイスラエルを含め、地域の地政学的リスクは一気に高まることになる。

このように、トランプ大統領は中間選挙と自身の将来設計に意識が集中し、国家経済の安定や戦争リスクにまで十分に目を配れなくなっているように見える。

むしろ、追い込まれるほどに「一発大きな成果」として、イラン攻撃に踏み切りたい誘惑が強まる可能性もある。

議会の一部では、大統領の戦争継続権限を制限しようとする動きも出ている。もし一度攻撃に踏み切れば、決定打を欠いたまま事態が膠着し、ホルムズ海峡封鎖など、日本にとって深刻な事態を招く恐れもある。

理性的に考えれば、国内インフレを悪化させる戦争に踏み切る合理性は乏しい。しかし現在の政治環境は、「トランプ大統領が合理的思考を維持しにくい条件」が徐々に整いつつあるようにも見える。

その点こそが、日本と世界に対する最大の不安材料である。

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