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日銀総裁が「物価目標は着実に近づいている」との見通しを示す

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日本銀行の植田総裁が「物価目標は着実に近づいている」との見通しを示した。賃金上昇が定着しつつあるのがその根拠だが、日本銀行の表現には独特のクセがある。金融政策の説明ではなく正当化に使われるのである。何だ欺瞞だと思われるかもしれないが安定装置としての機能もある。

植田総裁のメッセージには「アベノミクス時代はもう終わった」のだからこれからは日本銀行の財政ファイナンスに依存するなと言う強いメッセージが含まれている。正常化の正当化のために日本銀行は異例の賃上げ調査を行い話題になっていた。

日本銀行が15日発表した企業の2026年度「賃上げスタンスの動向」によると、大半の先では高い伸びとなった今年度並みとの回答となった。異例のタイミングの公表で、市場で織り込みが進む今月利上げを後押しする材料となる。

日銀、26年度賃上げ大半が高水準の今年度並み-調査公表で利上げへ布石(Bloomberg)

仮にここで「賃上げにはまだ不安がある」とすれば「ではこの先あとどれくらいの金利引き上げができるのか」ということになり、円キャリートレード勢を安心させる可能性があった。金融市場は植田総裁の発言に一定の「打ち止め感」を感じたからこそ、長期金利の上昇と円安が同時に起きたが、仮に植田総裁の発言が弱気であればもっと円安が進んでいたかもしれない。

金融市場のダメージを最低限に押さえるためには「日本では賃上げが定着しつつある」と示さざるを得なかった。これは一種の欺瞞ではあるが「システムを安定させるために他に選択肢がなかった」のも確かである。

あとは、積極的な改革を前面に打ち出しつつ「痛みを確定させない」という高市総理の手腕に期待するしかない。これはある意味「有権者の幻想=夢」の管理だが、日本政治の不安定化を避けるためには仕方のない選択なのかもしれない。高市総理は「夢の管理人」としての手腕を発揮しつつ適切な時期に衆議院を解散しなければならない。

一部には高市総理の支持率が高い内に解散総選挙を行う必要があるのではないかという意見があったようだが年明け解散は見送られたと共同通信は伝えている。一度開かれると会期末は6月ということになるそうだ。

日本銀行が賃上げは定着したと言っているのに、有権者は「なぜか自分たちの生活は楽になっていない」と感じるかもしれない。このうっすらとした違和感に気づかれないように国民にメッセージを発信し続ける「夢の管理」こそが今後の高市政権の課題となる。日銀は「生活実感がわかっていない」という世間の避難を浴びながらも粛々と制度安定化のために機能し続けているといえるだろう。

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