高市執行部と維新の間で政策協定が結ばれた。公明党が抜けたことで右傾化が進んでいる。今回はFNNが紹介した全文を読みつつ気になったところを抜き出してみた。このエントリーでは極めて「維新らしいなあ」と考えられる点について触れたい。表向きの改革指向と利益誘導が入り混じっている。
当初このエントリーのタイトルは「緊縮財政なのか積極財政なのかよくわからない」というものだったが、興味深い表現を見つけたので「日本版DOGE」に変更した。アメリカでは民主党的な政策が潰されているが高市政権は石破政権が作ってきた政策を切り刻むことになる。政策がうまく実現すればかなり面白い見世物になるだろう。
もともと「維新」という言葉は大前研一氏のフレーズを橋下徹氏が採用したもの。一時は共同歩調を取っていたが後に決裂した。大前氏の着想はアメリカ合衆国のように各地域が共同歩調を取れば競争が生まれるという前提が置かれていた。ところが長い年月を経てこれが日本化され、最終的には大阪に対する利権誘導(吉村氏は「大阪だけ」を否定)と置き換えられている。
首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散及び多極分散型経済圏を形成する観点から、令和七年臨時国会中に、両党による協議体を設置し、首都及び副首都の責務及び機能を整理した上で、早急に検討を行い、令和八年通常国会で法案を成立させる。
【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)
この維新の曖昧な考え方は「財政拡張」と「緊縮財政」のバランスを取らなければならない高市新総裁に受け入れやすかったようだ。これを表した言葉はすでに小池百合子氏が作っている。それがワイズスペンディングである。保守指向の強い高市氏らはこれを責任ある積極財政と置き換えている。
なお現在の市場は高市=財政拡張と見ており日経平均は49000円を超えた。
玉木雄一郎国民民主党代表は積極的財政なのか緊縮財政なのかよくわからないと言っている。
この総合調整を行うのが政府効率化局である。アメリカ合衆国の政府効率化省(DOGE)を参照したのだろう。アメリカ合衆国でもこの組織は省庁なのか外部組織なのかがよくわからなかったが、日本版でも「カッコ仮」になっている。
●租税特別措置及び高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する。そのための事務を行う主体として政府効率化局(仮称)を設置する。
【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)
アメリカ合衆国のDOGEは当初「閣外協力者」だったイーロン・マスク氏のもとで大きな混乱を引き起こした。結果的にマスク氏と閣僚たち(特に財務省と国防総省は強く反発)の間に亀裂を引き起こしている。これに取って代わったのがプロジェクト2025を率いたラッセル・ボート氏である。トランプ大統領のミームAIでは「死神(grim reaper)」と表現されている。
もちろん日本版DOGEには期待が持てる側面もある。石破総理の「地方創生」には田中角栄型政治の残滓のような側面があった。つまり選挙と補助金政策が一体化していたのである。これを再現しようとしたのが小沢一郎氏だったが「強すぎる幹事長権限」に批判が集中し「改革」は進まなかった。
これが切り崩されて、日本版DOGEで透明化が高い運用が行われれば、企業団体献金の廃止を待たずとも、税収の効率的な運用が実現できる可能性はある。
しかしながらアメリカ合衆国では効率的な運用は行われず、イーロン・マスク氏は政府から撤退し「民主党的な政策潰し」にシフトしている。アメリカ合衆国では連邦予算が成立せず、政府閉鎖が今も続いている。
おそらく最も良いシナリオは自民党の中にいる「抵抗勢力」が「日本版DOGE」を潰してしまうというものだろう。アメリカで死神に襲われているのは敵対政党の政策であり、民主党の行政仕訳も自民党の政策を否定するためのショーだった。一方で高市早苗氏が切り刻む政策はどれも自民党が作り上げてきたものである。
ちなみに予算委員長は立憲民主党の枝野幸男氏が充てられる方向で調整が進んでいるようだ。つまり自民・維新政権はそもそも予算委員会の議事進行権を持っていない。
