9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

アメリカの民主主義が崩壊過程を迎えているが日本のメディアはこれを無視し続けている。ここではマスコミ批判は行わないが、どのような構造で何を無視しているのかを分析したい。そもそもこのエントリーは「意思決定のための情報を自分で集めている人」向けなのでそうでない人は無理に読む必要はない。SNSの反応を見る限り日本人は極めて強く静かに苛立っており誰かを責め立てる材料を盛んに探している。おそらく分析にはさほどニーズがないだろう。

共同通信が「マドゥロ氏の踊りが拘束一因か 米政権「あざけり」と受け止め」という記事を出している。The NewYork Timesの報道を引き合いにして「ベネズエラの大統領がトランプ大統領をバカにしたのがいけなかった」という印象を与えようとしているのだ。つまり「トランプ大統領を刺激しなければその場をやり過ごせるぞ」と信じたがっている。これはメディアのハルシネーションだが原因はユーザニーズにある。

Quoraで日本人と話をしていると、政治に詳しいと自認する人ほど「中核的概念の開陳には極めて慎重だ」と感じる。個人としての欲求は持っているがこれを外に剥き出しにすると「偏っている」「私利私欲を追求していた」「実はそれほど理解できていなかった」とわかってしまうために「中庸を装って自分の中核概念を補強する材料を相手の口から言わせよう」というゲームを展開する。つまり日本人は「わたくし」を薄いベールで覆っていてけっして外に出そうとはしない。

そんな「弱々しいわたくし」を守るために、日本人はかなり慎重な防衛計画を持っている。その一つが「権威のある教科書」である。戦後80年間アメリカの民主主義は日本人にとって自分の身を守る教科書だった。

実は今起きているにはその教科書の消失だ。しかしそれは認めれない。だからThe NewYork Timesの権威を利用して「ベネズエラの大統領はトランプをバカにしたからやられた」というストーリーをでっち上げてしまった。だからこれは共同通信のハルシネーションと言えるのだ。

このため高市総理の安全保障政策が構造的な迷走に入っている。これまでの安全保障政策は「アメリカが正しい判断をする」ことを前提に組み立てられてきた。高市政権はこれを変えようとしている。

高市政権が日本の選択肢を増やすことじたいは悪いことではない。しかし問題点が2つある。第一にアメリカの意思決定が不完全だと認めた瞬間に自民党の統治が崩壊する。さらに防衛=防衛産業の充実=経済政策になっている。つまり防衛が目的ではなく防衛産業の育成(=自民党の支持基盤の再構築)になってしまっているのだ。

例えば最近議員団がイスラエルを訪問し左派の支持者やジャーナリストたちから強い反発を受けた。ネタニヤフ首相はジェノサイドの首謀者として国際機関から訴追されている。だが、高市政権は自民党議員団の活動の狙いを国民に向かって説明できない。明確な説明を始めた瞬間に「これまで自民党統治を支えてきた前提は崩れました」と宣言しなければならなくなるからだ。また実際には国益を考えているわけではなく自民党と防衛装備品産業の関係強化を図っているだけということが露見してしまう。

これも言葉にすると極めて簡単で誰でも理解できる。

高市総理がうっかり口を滑らせてもトランプ大統領は支援してくれなかった。ついにレアアースが止められそうだが高市総理には対応するカードがない。この状態で日本が中国を独自に攻撃する意思決定をしてもアメリカは助けてくれないかもしれない。むしろ日本人は中国の武力攻撃に対して無制限のコストを支払うことになるだろう。ちょうどウクライナがそうなっているように。

極めて簡単だが、これを表で言える人は殆どいないだろう。高市政権のメンバーも「アメリカが絶対に助けてくれる」という前提で議論を組み立てるはずだ。そうしないと有権者の賛同は得られない。

まとめると次のようになる。

私は政治をよく知っています」と嘯く人たちはこれまで自分たちを支えてきたストーリーの崩壊が自我に与える壊滅的な影響を知っているからこそ「薄い膜」を張って自分たちを守っている。そしてその薄い膜が「説明不能になりつつある自民党政治」を延命させ、結果的に現在起きている「アメリカ民主主義という教科書が燃えている」という明確な変化を無視する動機になってしまっている。

そしてその結果がメディアのハルシネーションだった。

分からない」と言えないまま、もっともらしい連続性を保とうとした結果、事実ではないが“破綻していない文章”を生成する

ということだ。

メディアはそのための主犯ではなく有権者と政治の共犯者に過ぎないが、それでも自分たちに課せられた責任を放棄していると評価できるだろう。

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Comments

“メディアのハルシネーション 日本のメディアがあえて無視するアメリカ民主主義の崩壊” への1件のコメント

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    私も、共同通信の「マドゥロ氏の踊りが拘束一因か 米政権「あざけり」と受け止め」という記事を読んだことがあったなと思い出しました。読んだ当時は、まるで知り合いと話しているときに、冗談めかして言うような話で驚きました。本当に記事のタイトルのような結論だと思っているのか、それとも記事を読む日本人向けに合わせすぎた結果なのかは分かりませんでした。
    レアアース関連でも色々な記事が出ていますが、日本がレアアースを使用して作った製品を買うのだから、こけおどしに過ぎないという論調の記事がありましたが、これもなんか危うさを感じる記事だなと思いました。

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