トランプ大統領の内政の行き詰まりや、ベネズエラ攻撃の成功を背景に、「イラン攻撃は時間の問題」と見られていた。結果的に、2026年2月27日深夜から動きが出始め、翌28日に本格的な攻撃が開始された。現在はホルムズ海峡が封鎖され、国連安保理の緊急会合が招集されている。
ABCニュースによるとイスラエルとアメリカ合衆国は数か月前から攻撃を検討していたという。ただし、発表はイスラエルによるもので「主体」が誰なのかは報道からは明らかになってない。
トランプ大統領は幅広くリスク調査を行うことはなくダン・ケイン統合参謀本部議長から話を聞くのみだった。また経済的な影響やインフレとの関係などについて、政策を統合的に検討した形跡も見られない。一方で1月にネタニヤフ首相が攻撃の延期をアメリカ合衆国に持ちかけたとする報道もある。
この点を踏まえ、別途掲載した論評記事では「イスラエルが仕掛け、ドナルド・トランプ大統領がそれに乗った」という構成を採っている。しかし、この見方は現時点で報道によって明確に確認されているわけではない。
アメリカ合衆国はこれに先立ち、ジャレッド・クシュナー氏とスティーブ・ウィトコフ氏を通じてイランとの和平交渉を進めていたが、その本気度はあまり感じられなかった。ロイター通信も、ロシア・ウクライナ問題と同時に対イラン和平交渉を進めるのは、プロの外交官でも困難だとする記事を掲載している。
結果的に、これらの交渉は当初から「破綻」を前提としていたのではないかとも考えられる。つまり、「外交交渉を試みたが行き詰まったため、軍事行動に転じた」という説明を成立させたかったのだろう。その過程で、蚊帳の外に置かれていた国務省も、次第に作戦の正当化に回っていった。
最初に攻撃を発表したのはイスラエルだった。アメリカ合衆国では深夜の時間帯だったが、ドナルド・トランプ大統領が同調を認める形で追認する発表が行われた。差し迫った核兵器開発の脅威があったため、「先制的に脅威を取り除いた」と説明されている。しかし、そもそもそのような差し迫った脅威が存在していたとは言い難い。むしろ、国内での抗議デモによって体制が揺らいでいる機会を狙い、体制転覆を図ったと考えるほうが自然だろう。
その後、アメリカ合衆国の基地を標的とした報復攻撃が行われ、死者も確認されている。また、ホルムズ海峡の封鎖が宣言されたとされ、原油価格への影響も避けられそうにない。
体制転覆という観点では、最高指導者であるアリー・ハメネイ師が殺害されたとの報道もある。これはロイター通信が伝え、時事通信が引用している。指導者が排除されたという意味では、ベネズエラ型の「成功」を想起させる面もある。
しかし、イランは国土が山がちであるうえ、西洋に対するイスラム社会の根強い反発意識も強い。指導者が不在になったからといって、直ちにイスラエルやアメリカに屈するとは考えにくく、紛争が長期化する可能性のほうが高いだろう。
アメリカ合衆国議会は、現在深刻なジレンマに直面している。いわゆる「ギャング・オブ・エイト」への事前報告は行われたものの、議会の軍事委員会に対する正式な説明はなかった。そもそも、意思決定や作戦の監視は、マール・ア・ラーゴを拠点として行われており、政治の中枢はワシントンD.C.から離れつつある。いわば「脱ワシントン化」が進行している状況だ。
しかし、民主党も共和党も一枚岩とはなりきれず、党内は分裂状態にある。「ドナルド・トランプ大統領の戦争権限を制限・剥奪すべきか」をめぐる議論は続いているものの、明確な方向性は示されていない。
仮に権限の制限に成功し、軍事作戦が停滞すれば、「議会の妨害によって作戦が長引いた」と批判されかねない。一方で、大統領の意思決定が統合力を欠いていることも明らかである。経済への悪影響が顕在化すれば、「なぜもっと早く止めなかったのか」という責任が議会に向けられる可能性も高い。
また、国連安全保障理事会も、すでに形骸化が進み、事実上十分に機能していない。3月の議長はメラニア・トランプ氏が務める予定とされている。
形骸化した国際機関の場で、政治的経験の乏しい大統領の縁故者が議事進行を担うことになれば、ワシントンD.C.のみならず、国連もまた有効な調整機能を失っているという現実が、改めて世界に示されることになるだろう。
ヨーロッパの首脳たちは今回の攻撃を非難している。ロシアのウクライナ侵攻を批判できなくなるのだから当然の反応だ。
一方で、アメリカ合衆国への防衛依存度が高く、3月19日の訪米を控える高市早苗首相は、踏み込んだ反応を示しにくい立場にある。茂木敏充外務大臣は、一般論として「核兵器開発は行われるべきではない」と述べたが、差し迫った脅威が存在しなかったことは、内心では理解しているはずだ。アメリカの軍事作戦についても、明言は避けている。
ヨーロッパ諸国が歓迎姿勢を示していない以上、日本としても、あからさまにアメリカへ追随するわけにはいかない事情がある。
こうした中、木原誠二官房長官は、「我が国の石油供給への影響は直ちにはない」と述べた。しかし、この発言は、東日本大震災の際に枝野幸男官房長官が、福島第一原子力発電所をめぐって同様の説明を繰り返していた状況を想起させる。
ホルムズ海峡が封鎖されれば、日本経済に影響が及ばないはずはない。仮に、「戦争とは呼べない何か」が長期化すれば、我が国の経済政策や成長戦略は、事実上、出発点から見直しを迫られる可能性が高いだろう。

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