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揺らぐ文民統制 ヘグセス国防長官の戦争犯罪疑惑

7〜11分

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世界最強と言われるアメリカ合衆国の軍隊が揺れている。アメリカの軍隊はトランプ大統領に幅広い免責が認められる一方で、下に行けばゆくほど法的・倫理的リスクが高いといういびつな逆三角形構造が生まれている。つまり本来軍隊を抑えるべき政治が倫理的に暴走している状態だ。

結果的に米軍は倫理的ジレンマと法的リスクを抱え始めており不確実性が増している。

今回4つニュースをお伝えしたのだが、最も解釈に困るニュースだった。本来軍隊は文民統制されていることになっているがこれが逆転している。政治の暴走を軍が抑えきれていない。軍には抵抗する手段がないためマスコミへのリークに頼るしかないのだが、トランプ政権は報道規制を通じてこれを抑制しようとしている。もはや我々が考えている「民主主義の常識」が全く通用しない世界が広がっている。

アメリカ合衆国は太平洋とカリブ海で麻薬密輸船の攻撃を行い、何の証拠もなしに船に爆弾を落とす「ひどい行為」だが、これまでアメリカ合衆国はこうしたひどい行為を裏庭たる中南米で何度も実施してきた。国連安保理はほぼ機能しておらずアメリカは軍人を裁く条約には加盟していないのだから「アメリカがいいと言えば何でもやっていい」ように思える。

ところがこれが大騒ぎになっている。

まず軍歴のある民主党議員6名が「違法な命令には従わなくても良い」と主張するビデオを出した。このときにはそれが何を意味するのかは明らかにならなかったが、ケリー議員が代表して「軍法会議にかかるかもしれない」と脅されている。

またトランプ政権は一部のマスコミを「恥の殿堂入り」させた。国防総省からは一部のメディアが排除されたりもしている。

そんななか、ワシントン・ポストがある報道を行った。ヘグセス国防長官が麻薬密輸船とされる船の生き残りの殺害を命じそれをブラッドリー提督が実行したと伝えたのだ。ワシントン・ポストは「ヘグセス国防長官は承認しただけで命じていない」と主張している。つまり殺害そのものは認めた。しかしホワイトハウス高官の発言はお互いに矛盾が多く信頼できる内容ではない。

日本の常識ではアメリカ合衆国は政治的内戦状態にあるということになっている。つまり民主党が声高に政権を批判すると共和党が「ゼロサム的に」政権を養護する。しかし不思議なことに今回はそうなっていない。エプスタインファイル問題と同じように共和党の中から懸念の声が広がってきた。曰く「戦争犯罪になりかねないような行為」を議会の承認なしに行うのはいかがなものかということだ。共和党議員たちの感覚がどこか変わってきていることは明らかだが「これ」といったイベントがあるわけではない。いわば空気のような変化が生じている。

民主党のビデオも「命令に従わなくてもいいんですよ」ではない可能性が出てきた。CNNは民主党の議員が訴えていた問題はおそらくこの空爆であろうとしている。つまりこれは裏返せば「民主党が政権を取ったらこの問題を戦争犯罪として捜査する可能性」と宣言したことになる。ただしこれは政権交代が起こらなければ発動しないのだから、すなわち「政権交代すべき理由」として政治的に消費されてしまう可能性がある。政治に中立的な国際機関が裁かない分だけ政治問題化しやすいのである。

背景にあるのはアメリカ合衆国が抱える「逆三角」構造だ。トランプ大統領には強い免責が認められているが下にゆくに従って責任が重くなってゆく。このため文民統制が働かず「フリーライダー(責任と取らない)の文民」という悪夢のような状況が生まれている。

軍隊がワシントン・ポストのリークに頼るということはおそらくは彼らに司法救済がないことを意味している。と同時に彼らが法的なリスクに怯えなおかつ倫理的に圧迫された状態にあることを意味している。

しかし、こうした状況は外から見えにくい。つまり軍の統制に深刻な問題が生じたとしてもそれが現象になって現れるまでには時間がかかり、なおかつその現象は重大なものになりやすいということだ。

高市総理の発言をきっかけにした日中関係悪化の裏で米軍も実はかなり危険な状態に陥っており日本からはコントロールが難しくなっていることは意識しておくべきだろう。

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