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感謝祭までに領土を放棄せよ トランプ大統領がウクライナに要求

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日本ではほとんど話題にならなかったがトランプ大統領が感謝祭の休暇までに領土を諦めろとゼレンスキー大統領に迫った。民主主義というあやふやな体制に安全保障を依存した国の悲劇と言える。ゼレンスキー大統領は尊厳か支援かの二者択一を迫られている。

この問題はアメリカ合衆国がロシアの「力による現状変更を認めた」事例として大きな意味を持っている。2014年にプーチン大統領が起こした賭けが成功しつつあるのである。

日本とヨーロッパは慌てて協議を行い「先延ばし」を求めている。この時点で初めて日本でもニュースになった。

トランプ大統領がウクライナに対してなにか要求しているらしいというニュースは出ていた。ゼレンスキー大統領が公にしたことでこれが正しい情報であったということが証明されている。ゼレンスキー大統領の発言は要するに「もはやアメリカ合衆国に頼ってウクライナの尊厳を守ることはできない」と訴えている。

ゼレンスキー氏は21日、国民向けのビデオ演説でトランプ氏の提案について触れ、尊厳を失うか、重要な仲間を失うかの選択をウクライナに迫るものだとの認識を示した。

トランプ氏、ウクライナに27日までの和平案受け入れ要求 ゼレンスキー氏「歴史上有数の困難な局面」(CNN)

この問題を可哀想なゼレンスキー大統領とウクライナの問題にすることはできる。しかしながら少し視点を大きくしてみると、これまで国際社会を支えてきた物語が無効化しつつあるが、新しい物語も見つかっていない状態で起きた悲劇と捉えることもできる。

BBCはより詳しい経緯を伝えている。

ゼレンスキー大統領は10分の演説を行った。尊厳かアメリカの支援かどちらかを選ぶ局面だと訴えている。ロシアが誇大なアイデンティティを「再構築」しようとしているということは、ウクライナがアイデンティティを失うというのと同義である。

権力者が輝かしい未来を約束できなくなると代わりに輝かしい過去への回帰を訴え始める。ロシアもアメリカもそのような状態にあり中国も日本の「猛女高市」を利用して国内宣伝に利用しようとしている。抗うにせよ受け入れるにせよ我々がどこに向かいつつあるのかを指し示すのはさほど難しくない。それぞれの国がそれぞれの物語に閉じこもり始めている。

トランプ大統領も国内ではアイデンティティ政治を利用しようとしているが、外交問題は一般的にディールであると考えているようだ。アメリカのビジネスマンは感謝祭からクリスマスまでの間は大型のホリデイシーズンであり「それまでに面倒な問題」を片付けてしまいたいのだろう。

慌てた日本、ヨーロッパ、カナダの首脳たちは「追加の作業工程が必要である」と主張した。つまりアメリカ合衆国の提案を否定しなかった。

特にヨーロッパにとっては自分たちの領域が再びロシアに占拠されかねないという危険な状態に戻りつつあることを意味している。また、域内に「過去に回帰したい」という人たちがいる。

しかし日本・ヨーロッパ・カナダもアメリカ合衆国抜きでウクライナという「お荷物」を背負うつもりはなさそうだ。

今回の首脳会談の舞台になったのは南アフリカのG20だった。アメリカ合衆国は会合をボイコットしG19で首脳宣言が採択されている。