魚心あれば水心という言葉がある。中国の政府高官にビジネスを認めてもらうためには「それなりのお心付け」が必要となる、しかし、ピューリタニズムの影響を強く受けたアメリカ人はこれを極端に嫌い「それは賄賂(bribeだ!)」と憤る。
この程、カタールがトランプ大統領に大きな贈り物をした。それが大統領専用機だ。トランプ大統領は「無料でくれるというのだから断るバカはいない」としているが一般のアメリカ人はそうは思わないだろう。動揺する岩盤支持層も出てくるのではないか。すでにインフルエンサーのローラ・ルーマー氏などが反発している。
アメリカ合衆国での一般の受け止めはCNNに代表される。「倫理的・法的に問題がある」とされている。アメリカ合衆国は外国からの干渉を恐れ大統領個人に対する国家や王様からの贈り物を法的に拒否してきた歴史がある。
しかしながら今回関連記事を調べていて心に残ったのはAxiosの記事だった。大統領府は大統領専用機の出物を探していた。それをウィトコフ特使から聞きつけたカタールの首長がホワイトハウスに対して「こんなものがありますよ」と紹介したそうだ。
しかしながらホワイトハウスサイドは「いやこんな豪華なもの、一体いくらするんですか?」と心配し価格交渉しようとした。
そこでカタールは「これはさしあげる、だからOKだ」と返答したという。つまり「ウチが持つから心配するな」と言ったのだ。
一度は言ってみたいものだ。
The U.S. and Qatar were bargaining over the price for a “palace in the sky” Boeing 747-8 to be used as the new Air Force One — and Qatar “came back and said: ‘We’ll just gift it. It’s OK,’” a top administration source tells Axios.
Backstory: How Trump got a free “palace in the sky”(Axios)
トランプ大統領は中東からのあからさまな賄賂にとても気を良くしているようだ。中東歴訪はトランプ大統領一族の大きなビジネスチャンスになっている。法的・倫理的に問題があるとされているが、岩盤支持層は「意識高い系社会主義者の戯言」として無視してきた。
ところが今回は保守派のインフルエンサーで国防に強い影響力を持つ(人事も左右していると言われる)ローラ・ルーマー氏までもが「スーツを着たジハーディストからの贈り物を受け取る事はできない」と反発した。
医療保険の問題で触れたようにアメリカ合衆国の政治的不安定さの背景には中流層の没落がある。しかしながら「コツコツと努力して成功してきた人が社会に還元すべき」という考え方(ピューリタニズム)があり富裕層への批判は抑えられてきた。
ところがトランプ大統領は今回の歴訪で少なくとも自分はピューリタニストではないと示すことになりそうだ。これまで信仰に近い形でトランプ大統領を支えてきた岩盤支持層の中には大統領に裏切られたと感じる人も出てくるのかもしれない。
