当ブログでは自民党が政局に夢中になる一方で国民は漠然とした不安をつのらせていると分析している。情報が豊富にある中で意思疎通ができない状態をバベル化と言っている。取り合えずここまで目立った異論は出なかったのでもう少し議論を複雑化させてみたい。正直なところナイーブな自民党とナイーブな保守の心配ばかりをしていられるような状況でもないためこのあたりの問題はさっさと片付けて先に進まなければならないのだ。
長期金利が上昇している。
7月二Bloombergが【コラム】世界に追い付いた日本、不愉快な正常化遂げる-オーサーズという記事を出していた。要するに日本は金利がマイルドに上昇する「正常な」世界に切り替わりつつある。
日本はこれまで日銀の事実上の財政ファイナンスによって構造改革問題を先延ばしにし続けてきた。今でも「日本では政府はいくらでも借金ができる」と考える人がいる。これは金利上昇なき社会では成り立つ議論。しかし金利が上昇し始めるとこの前提が崩れる。長期インフレは借金の重みを減らす。代わりに会計がもっている貯蓄の価値は失われ政府に資産転移が起きる。
これを示すように国家予算の1/4を占める利払い付が24%増加する予想になっている。増税をしない前提では一般予算が削られることになる。
では日本の政治家たちはこの状況にどう対応しているのだろうか。
両院議員総会が終わりマスコミの関心事は9月8日に移った。石破総理に事実上のリコールを突きつける前倒し総裁選が行われるかどうかに注目が集まっている。
読売新聞が石破退陣の誤報について興味深い釈明をしている。これまで世論誘導によって政局を作って来た読売新聞だが今回は号外の存在が却って石破総理の態度を頑ななものにしてしまったようだ。
そこで読売新聞は「普通だったら辞めるがあの人は普通じゃなかったから結果的に誤報になりました、ごめんなさい」と開き直った。
嘘だと思う人もいるかも知れないので読売新聞の総括を書いておく。自分たちは常に正確に把握していたが結果的に誤報になったと書いている。
前木理一郎・読売新聞東京本社専務取締役編集担当の話「本紙は、石破首相の『辞める』との発言を常に正確に把握していました。しかし、石破首相は辞任せずに、結果として誤報となりました。新聞には正確性が何よりも求められます。読者の皆様に深くおわび申し上げます」
首相「辞める」明言、読売「退陣」報道を検証…石破氏が翻意の可能性(読売新聞)
麻生最高顧問は前倒し総裁選に賛成の意思を示したが7割の国会議員は態度を決めかねている。どのように行動すれば損にならないのかを慎重に見極めようとしているのだろう。
自民党の敗戦総括(そもそも衆議院選挙の総括は行われなかったそうだ)は要するに「国民にあといくら掴ませれば納得してもらえるのか」ということになっている。そのため石破総理は週内にも追加の経済対策を打ち出すようにと指示を出すものと見られている。
日本社会の既得権益がもっている独特の弱さは自分たちが状況に合致できなくなったという事実を決して認めることはできない。しかしながら状況に合わせられなくなったことで様々な軋轢が顕在化し徐々に崩壊してゆく。
その意味では9月8日にはなにか驚くような動きが起きるのかもしれない。一部では総理大臣が後先考えずに逆ギレ解散するのではないかなどと言われている。普通に考えれば「まさか」とは思うのだが、読売新聞を結果的に誤報にした石破総理の性格を考えるとあらゆる選択肢は排除されるべきではないのかもしれない。
ただし状況が把握できていないのは有権者も同じだ。たとえ総選挙が行われたとしても1つの政党に支持が集まるようなことはないだろう。
