高市早苗自民党総裁が焦りをつのらせている。どうやら気弱になると却って強く振る舞ってしまう傾向があるようだ。野党がまとまらないのだから特に心配はしなくていいと思うのだが、総理大臣になれないかもしれないという可能性が出てきたため逆に総理大臣らしく振る舞おうとしており、これがさらなる当惑を生む可能性がある。
当たり前だと思っていたものがうまく行かないとすべてが不安になる。こうした不安は誰にでもあるもので「気持はよく分かるなあ」と感じた。一概に高市さんを責める気になれず、なぜ誰も助けてやらないのだろうという気持ちになった。
高市早苗氏はかねてより飲み会が嫌いだと言っている。おそらく飲み会が嫌いというより回りくどいコミュニケーションを好まない合理的な人なのだろうと思う。これも理解できないではない。
しかしながらその高市早苗総裁が最初に直面したのは積もり積もった公明党の感情的な離婚宣告だった。国家神道と政教一致に弾圧された歴史を持つ創価学会はあからさまな保守回帰を「気持ちとして」応援できない。
そんな高市氏はいま「誰が突然裏切るかわからない」という疑心暗鬼に陥っているのではないかと思う。そこで唐突に7日前のベッセント財務長官へのコメントに謝意を示した。
トランプ大統領は世界を自分の敵と味方に分けている。おそらく自分をあからさまに褒めてくれた安倍晋三総理は味方でその後継者の高市早苗氏も味方なのだろう。一方で相手国の事情には全く関心がない。自民党の総裁がそのまま総理大臣になるのだろうとして「総理大臣就任は喜ばしい」とSNS投稿した。
ベッセント財務長官はおそらく日本にパイプがあり事情がわかっている。トランプ大統領の間違いは指摘せずにこっそりと「外交的修正」をしている。そこで「もうすぐ首相になる」と表現している。
この投稿をあえて取り上げた意味もよく分かる。「アメリカ合衆国は私を総理大臣と認定しているのだからトランプ来日までに私を首班指名すべきだ」ということなんだろう。
背景には何があるのか。
テレビは盛んに総総分離論を展開している。共同通信も「自民懇談会で「総・総分離」論 首相指名のめどが立つまで」書いている。おそらくこれは自民党のほんの一部の声だとは思うのだが、高市早苗総裁に当内外にパイプがないと仮定すると、我々一般庶民と同じようにテレビとメディアからしか情報が取れていないのではないかと感じる。
このため高市早苗総裁が打ち出したのが人事である。党内に小泉・林擁立論が出ることを警戒したのだろう。「小泉防衛大臣・林総務大臣」という報道が出た。しかし、外交・通商・財務は握っておきたい。さらに小泉氏に農林水産大臣を任せてスターにするのも面白くない。
ところが高市早苗氏はまだ総理大臣ではないのだから報道陣に「人事の意図」を示すことはできない。
結果的に「小泉進次郎さんが防衛大臣ってどういうことなんだ?」との戸惑いが広がった。
高市早苗総裁は弱気になっているときこそ強い態度で臨む傾向があるようだ。しかしこの態度が却って周囲に戸惑いを生みあらぬ感情的反発のもとになる。
周囲から孤立したリーダーが迷走するのはよくあることだと思うのだが、なぜ周りが高市氏に代わって情報収集や事態収束に向けて動かないのかといささか可哀想な気もする。
おそらく背景にあるのが「空気を読めず周りに対立を作り出してしまう」麻生氏の存在だろう。本来調整が得意なはずの菅義偉氏は公明党問題では一切協力しなかったようだ。斉藤鉄夫代表が「水面下での働きかけがなかった」と言っており西田幹事長も「こちらが気を利かせて「どうなっているんですか?」と歩み寄った」と言っている。結局、麻生氏の大きな勝利が混乱の原因なのだということになる。
