トランプ大統領が再びグリーンランド所有構想を明らかにし衝撃が広がっている。軍隊を使用する可能性を排除しなかったためである。しかし話をよく聞いてみると本人はこれを「地上げ」程度にしか思っていないようなのだ。ただ、BBCはトランプ大統領は世界を帝国主義時代に戻してしまうのではないかと危惧している。
トランプ大統領はおそらくグリーンランド取得を「ラスベガスのホテルを買う」くらいの感覚で理解しているようだ。リースでは意味がなく所有しなければならないと行っている。表向きは資源開発や中国ロシアの排除などを謳っているもののこれは本筋ではないかもしれない可能性が高い。
日本では盛んになぜトランプ大統領はグリーンランドを欲しがっているのかという分析が行われているがこれは本質的に答えがない。
- 環境
- 覇権国家がなくなりつつある環境
- レイヤー
- トランプ大統領はとにかく「何かを手に入れたがる」
- 帝国は自己拡張の本能・構造がある
- 制度としては民主主義で選挙のたびに成果が必要になる
という三重モデルなのでどちらを観測するかで答えが変わってしまうからだ。
それが分かるのがベネズエラの事例である。ベネズエラの石油は採掘にコストがかかり質も良くないため精製にもお金がかかると言われている。
ビジネスマンとしてのトランプ大統領は「ビジネスモード」で動いているのが厳密に言えばビジネスマンではない。整った市場に寄生する拡張的レントシーカーと言えるだろう。そしてその動機は「獲得し続ける」ことである。なぜならばマネジメントの才能がないからだ。
もともとトランプ大統領はベネズエラを攻撃する理由は麻薬流入を防ぐためだと説明していた。つまり治安維持目的だから戦争には当たらないと言っていたのである。しかしベネズエラ「取得」後は麻薬について語らなくなった。そもそも麻薬の流入源はメキシコやコロンビアであり、問題に興味がないことが分かる。
では獲得した資産に関心があるのかと言われるとそうでもないようだ。
トランプ大統領は石油大手と会合を開いてベネズエラに1000億ドル投資しろと迫った。しかし石油大手は「採算に乗らない」として申し出をやんわりと断っている。ただ、ここでトランプ大統領が必死で石油大手を説得することもなかった。中国に石油を渡したくなかったという話もあるのだが実は中国もベネズエラの石油を持て余していた。中国がベネズエラから撤退しなかったのは「間違いを認められなかったから」にすぎない。確かに中国にとっても痛手なのだろうが「損切り」のチャンスでもある。
さらに、そもそもスージー・ワイルズ氏やヴァンス副大統領が「国内政策にもっと力を入れるべきだ」と修正を図っているため
- クレジットカードの金利は10%に押さえるべき
- 投資家の個人住宅投資を禁止するべき
などといい出している。言い出してはいるが具体策は述べていない。これも問題解決ではなく「有能さのアピール」にすぎないからだ。
トランプ氏は、「2026年1月20日より、私は米国大統領として、クレジットカードの金利に10%の上限を1年間設定することを求める」と投稿。「われわれはこれ以上クレジットカード会社がアメリカ国民からぼったくることを許さない」と付け加えた。
トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上限設定を要求 1年間(REUTERS)
トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、インフレが住宅購入という国民の夢を手の届かないものにしたと指摘、機関投資家による一戸建て住宅購入禁止措置の法制化を議会に要請する考えを示した。さらに、近く開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での演説で、住宅や「アフォーダビリティー(手頃な価格)」に関する提案を取り上げると述べた。
機関投資家の一戸建て住宅購入禁止へ、トランプ氏が表明(REUTERS)
トランプ氏は候補時代にさかんにバイデン大統領の政策を批判してきた。しかし今や大統領はトランプ氏である。そこで今度は「議会がきちんとした提案をしないからアメリカ人が苦しんでいる」といい出している。
まとめるとトランプ大統領はとにかく「何かを手に入れること」には熱心だがその後の開発にはさほど興味がないことがわかる。そもそも本業のホテル業も「新しいものを立ち上げるのは得意」だったがそれを維持するのは苦手でそもそも興味もなかった。
ところが不幸なことにこれが「覇権帝国末期」のアメリカの状況にピッタリハマってしまった。
- 勝つことが当たり前になっており、国民が次々に成果を求める
- 強い敵がいないため、実際に拡張すると勝ててしまう
- 国民は喜ぶ
- しかし手に入れたアセットは次々と管理不足から不良債権化する
- しかし間違いは認められないから外に出てゆくしかない
- 結果的に不良債権が積み上がり帝国が耐えられなくなる
現在のアメリカ合衆国は強い軍隊と基軸通貨をもっているため帝国として破綻する条件は満たしていない。これは恒星が尽きかけるときに外に広がってゆくのに似ている。アメリカの場合にはこれまで当たり前だった機関的バランスが危うくなっており、米国内のニュースもかなり荒んだものが多い。
なぜ拡張するかと言うと、覇権国家であるため外に圧力がないが、内側では「もっと成果を」を言う圧力が積み上がってゆくからである。
アメリカを赤色巨星に例えるとその周囲にある惑星である日本がどのような運命をたどるのかが見えてくる。日本は惑星と違い外に逃げることも可能だが、そもそも日本の統治機構も経年劣化しておりアメリカという重力圏に落ちてしまう可能性が高い。
イギリスも覇権国から脱落した国家だが国家を運営していたのがエリートだったため戦略的撤退が可能だった。しかしアメリカ合衆国は今や「アマチュア」が支配している国なのでこうした戦略的撤退を選択できない。その意味ではフランス・ナポレオン帝国に似ているかもしれない。登場当時のナポレオンは「王政からの解放者」とみなされていた。このため彼の称号はフランス皇帝ではなくフランス国民の皇帝だった。しかし彼がフランス国民の皇帝であるためには常に勝ち続けるしかなかった。
日本は今すぐ膨張するアメリカと手を切るべきだとは思わないが、少なくとも今後「アマチュア支配(MAGAが民主社会主義者などの別のアマチュアに変わる可能性もある)」が続くのか、エリートがある程度復権するのかを見極める必要がある。
第一期高市政権(仮)は戦略性を持たず過去の成功事例を模倣するだけの存在だった。つまり、日本が国として戦略を持ち得ないのであれば後は自己防衛するしかないと言う分析になる。ただし、第二期高市政権(仮)が安定した政権基盤を確立し戦略的な考え方ができる人々を身内として登用できればこのシナリオは変更しても良いということになる。

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