9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


嵐はこなかった 中東石油危機が回避される

9〜13分

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人々がベネズエラ情勢に夢中になるなか、実は「大変なこと」が起きる可能性があった。しかしこの大変なことは起きなかった。それが分かるのがOPECプラス、現行の生産水準維持を決定-ベネズエラ情勢など見極めというBloombergの記事である。会合は10分で終わったそうだ。

このニュースの重みはこれまでのニュースを積み重ねないと深刻さが見えてこない。

アラブ圏は宗教権威につながる絶対的な君主であるヨルダンのハシミテ家(ムハンマドの末裔)と新興王家であるサウジアラビアのサウド家から成り立っている。

サウド家は最高権威であるハシミテ家を放逐し聖地の守護者になった。しかし「権威としてはハシミテ家に劣っている」という劣等感も持っている。このためことさらに二聖モスクの守護者(ハーディム・アル=ハラマイン)という称号を誇示するところがある。さらにその周縁にUAEやカタールなどの勢力がいる。彼らは本音ではサウド家と同列だと考えている。しかし「王国」という概念そのものがイギリスから持ち込まれた新しい概念であるためあえて伝統的な「首長」という肩書を使い続けている。ハシミテ家は逆に「ヨーロッパに対する統一王家」からの格落ちを恐れて王という概念を使い続けている。

このようにアラビア半島はそもそも日本の戦国時代のような状況である。全国を統一する幕府も作られず、聖的にアラビア半島全体に序列を与える天皇のような権力も作られなかった。

こうした複雑な状況がありつつ、このところのサウジアラビアとUAEは協力してイランという敵に対処してきた。これも日本の歴史に例えるなら戦国時代のままで黒船が来たと喩えることができる。

しかし、アメリカとイスラエルがイランを封じ込めると黒船が撤退したような形になる。そうなると戦国時代に逆戻りしてしまうのだ。

この緊張はまずイエメンで高まった。

UAEがバックアップしていた勢力をサウジアラビアが叩いた。REUTERSは「サウジアラビアとUAEの間に亀裂が入った」と言っているがこれはかなり控えめな表現だろう。

戦国時代でいえばこれまでの紳士協定的な世界が破られ織田信長が「天下布武」を狙い始めたと表現できる。「亀裂」どころではない。状況を動かしておいて「話し合いましょう」と主張しており、和睦の体裁の降伏要求と受け取られてもおかしくない。

日本の戦国時代は「天皇を取ったものが勝ち」というゲームだったが、サウジアラビアはそもそも天皇権威になれそうだったハシミテ家を追い出しており錦の御旗がない状況だ。つまり原理的にアラビア半島の戦国時代は終わりがない。

さてここまで読んでくると

【原油ウォッチ】中東情勢めぐり価格急落リスク、サウジに不満のUAEがOPECプラスを脱退する可能性(JP Press)

という記事の恐ろしさがわかってくる。

売れる内に石油を売っておきたい上に資金が欲しいUAEは石油の増産を熱望していた。しかしサウジアラビアやロシアはできるだけ石油価格を高止まりさせておきたかった。そこでUAEがOPEC+を抜けてしまうかもしれないというニュースだった。

UAEが石油を増産するとそもそも余剰傾向にある原油価格は下落する。これは日本にとっていいことのような気がする。しかしそもそもサウジアラビアとUAEの「亀裂」が背景にあるのだから、これは実は湾岸諸国の地政学的なバランスを不安定化させかねなかった。

Geminiに整理させると今回のUAEの離脱は

  1. 中東情勢の不安定化
  2. 原油価格の暴落によるアラブ諸国の混乱とそれに伴う産油国資金の引き上げによる金融危機
  3. 環境問題への悪影響

を招きかねなかった。

中東情勢の不安定化は日本への石油の滞りにつながるが、もっと怖いのが産油国資金の引き上げによる株価の暴落だ。特に現在はVIXが非常に低い「多幸状態」にある上にテールリスクに備える掛け捨ての保険であるSKEWが高い状態にあった。つまりプロの投資家はそれなりに備えていたがが個人投資家は全くリスクを織り込んでいない状態だったわけである。

国際戦略を全く持たない高市政権は「しばらくお待ち下さい」の表示を出しただけでベネズエラ情勢すら織り込むことができなかった。おそらく湾岸諸国の問題にはまったく対処さえしていないだろう。

政府が信頼できず、政府が出す情報を右から左に流すだけのマスコミも全く信頼できない。ここで株価や為替だけが大きく動いたらどうなっていたか。原因が全くわからない人々はパニックを起こしていた可能性がある。

こうした状況をあとになって語れるのは

という結果が確定したからである。結果的に原油価格も為替もさほど動かなかった。

そしてそれは皮肉なことに国際秩序を破壊したトランプ大統領の暴挙に対するOPEC+の反応だったのだ。

つまり我々は今、政府もメディアも信頼できない情報空間で、自分たちの暮らしや資産を守るためにはどうすればいいかを真剣に考えなければならない時代に入っていると言える。

いずれにせよ危機はこなかった。つまり新年最初の月曜日の朝はいつも通りということになる。

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